近年普及しているリモートワークを行う際には、エンドポイントの適切な管理が必要です。エンドポイント分析では、ユーザーが直接使用するデバイスの管理を可能にする機能が活用できます。この記事では、リモートワークの利用に伴うエンドポイント分析について、その概要や次世代エンドポイントなどを解説していきます。
エンドポイント分析の概要
エンドユーザーがパソコンなどのデバイスを使用する際に生じる、長時間のブートやシャットダウンといった問題は、エンドユーザーエクスペリエンスの管理が十分でない場合に生じやすいとされています。エンドポイント分析は、ユーザーエクスペリエンスの分析情報を管理し、ITサポートのコスト削減を可能にします。
エンドポイント分析とは?
エンドポイント分析とは、Microsoft生産性スコアの一部で、組織のパソコンを使用する環境やユーザーエクスペリエンスの品質に問題がないか計測する分析方法のことです。エンドポイント分析により、使用しているアプリケーションの構成やハードウェアの組み合わせなどから生じるデバイスへの干渉といった問題を迅速に把握できます。
エンドユーザーエクスペリエンスの分析データを収集し提供することで、デバイスのスムーズな動作を妨げている問題を効率よく特定することが可能です。ヘルプデスクのサポートを受ける前に、問題を解決することに役立ちます。
エンドポイント分析とMicrosoft生産スコアの関係
Microsoft生産スコアとは、Microsoft365を使用している状況を計測し、スコア化した数値を確認できる機能のことです。Microsoft365アプリの生産性をスコア化すると、組織全体がどれだけツールを使用しているか計測でき、分析した情報が提供されます。生産スコアを活用して、テクノロジーの使用状況を明確化できると、Microsoft365製品の効率的な使用が可能になります。
Microsoft生産スコアにより、モビリティ、コミュニケーション、会議、コンテンツコラボレーションといった「ユーザーエクスペリエンス」と、Microsoft365の効率的な使用やパフォーマンスの高いIT環境を指す「テクノロジエクスペリエンス」という2つの領域を計測できます。これらのデータを分析することで、環境の向上に活用できます。
ユーザーエクスペリエンスへの影響が生じているデバイスを特定するために、デバイスごとのスコアが確認できるのがエンドポイント分析です。そのため、エンドポイント分析はテクノロジエクスペリエンスに分類でき、数値スコアでパフォーマンスを把握します。スタートアップスコアや起動スコアなど環境内の各スコアを算出し、あらかじめ作成しておいた基準計画と比較することで、IT環境に改善の余地があるかどうかを確認できます。
次世代エンドポイントとは
エンドポイントは、「末端」という意味を持つ言葉です。IT用語としては、ファイルサーバーやデータベースサーバー、オフィスでユーザーが直接使用するパソコンやプリンタ、オフィス外から企業のデータやソリューションにアクセスするタブレットや個人のパソコンなどを意味します。
次世代エンドポイントとは、最新技術を活用し、あらゆるリスクに備えたデバイスを指します。セキュリティレベルの高いハイブリッドワークを可能にするVBS(Virtual Base Security)機能などを搭載したWindows11PCや、クラウド上のWindowsをネットワーク経由で利用するクラウド型PCのWindows365などが挙げられます。
エンドポイント分析が注目されている背景
エンドポイント分析は、オフィス外でも仕事を行うハイブリッドワークが推進されたことから注目を集めるようになりました。クラウドを利用するうえで外部ネットワークに接続する機会が増え、エンドポイントの管理が急務になったために、エンドポイント分析を活用する企業が増加しています。
ハイブリッドワークの推進
ハイブリッドワークとは、オフィスでの勤務とリモートでの勤務を組み合わせた柔軟な働き方のことです。新型コロナウイルスの感染拡大後に多くの企業がリモートでの勤務体制を導入した経緯もあり、近年では働き方の多様化が進んでいます。
リモートワークとオフィスワークにはそれぞれメリットやデメリットがありますが、ハイブリッドワークを導入した場合にはどちらの勤務も自由に選べるようになります。状況に応じて働き方を選べるハイブリッドワークは、今後最新のシステム導入を検討している多数の企業からも支持されている働き方です。企業、従業員ともにメリットの多い働き方なら、いつでも最適な環境で仕事ができます。
ハイブリッドワークに伴うエンドポイントの変化
新型コロナウイルスの感染拡大は、クラウドサービスの利用率が上昇する大きなきっかけになりました。マイクロソフト社の調査では、「クラウドの利用率が増加する」と90%の企業が回答、80%の企業が「最先端技術に投資する」と回答しています。
リモートワークの増加に伴い、エンドポイントの利用はこれからも広がると予測されています。従業員がリモートでも安心でき、快適に働ける環境を構築するには、エンドポイント分析による適切な管理が重要です。
エンドポイント分析で調査できる項目
エンドポイント分析で調査できる項目には、主に「スタートアップ パフォーマンス」、「プロアクティブな修復」、「アプリケーションの信頼性レポート」があります。これらの分析により、問題に関連する箇所を迅速に見つけられます。
スタートアップ パフォーマンス
スタートアップ パフォーマンスは、パソコンの電源を入れてから起動するまでのパフォーマンスを最適化できる機能です。電源が入ってからサインインまでの時間で点数が決まる「ブートスコア」と、サインイン情報を入力してからデスクトップが開くまでの時間を基に点数が決まる「サインインスコア」のそれぞれに0から100の点数がつけられ、2つの加重平均でスタートアップ パフォーマンススコアが決まります。
モデルパフォーマンスではメーカーやモデルレベルで、起動時間とサインイン時間がわかります。これによって、どのモバイルデバイスのパフォーマンスに問題が生じているかを明確にできます。
プロアクティブな修復
プロアクティブな修復とは、ユーザーがデバイスの問題に気がつく前に、一般的なサポートの問題を検出し修正できる機能です。問題を監視して検出する検出スクリプト、検出された問題を修復する修正スクリプト、メタデータから構成されています。
最大で200ものパッケージを活用でき、これによってさまざまな問題が改善できることから、サポートへの問い合わせを減らせるメリットがあります。なお、修復にはエンドポイント分析のライセンスと、Windows 10/11 Enterprise E3、またはE5 (Microsoft365 F3、E3、 E5)が搭載されたデバイスが必要です。
アプリケーションの信頼性
アプリケーション信頼性スコアを活用すると、デバイスのデスクトップアプリケーションにおける問題を把握して、セキュリティレベルを高められます。アプリケーション使用状況スキャンでは、管理対象のデバイスにおける使用中のアプリケーションを検出することが可能です。
アプリの信頼性スコアは、0から100までの数値で表されます。過去14日間のデータをまとめ、クラッシュの頻度やデバイスの使用期間などを考慮して、「アプリのパフォーマンス」タブに各アプリケーションの信頼性を分析した情報を表示しています。問題のあるアプリケーションはエラーメトリクスと一緒に集約され、確認することも可能です。
まとめ
エンドポイント分析は、デバイスの問題修復、問題部分の発見に役立つ機能です。ハイブリッドワークの導入が進む現在、さらに欠かせない機能となってくるでしょう。
業務効率化の実現のためエンドポイントのモダン化を目指すなら、Microsoft Hybrid Workforce Allianceのソリューションをぜひご活用ください。