企業業績が思うように上がらない時は、その原因を突き止めて何らかの改革を行う必要があります。この記事では、企業改革のひとつである業務プロセス最適化について、その概要や必要性といった基本知識に触れながら、具体的な導入方法を解説していきます。企業の生産性を高める方法を探している人などは、ぜひ参考にしてください。
業務プロセス最適化とは
そもそも業務プロセスとは、サービスの提供や商品の販売など、企業の目的を達成するために必要な業務の流れのことです。「業務フロー」と混同されやすい言葉ですが、業務フローが業務の流れ全体を指すのに対して、業務プロセスは各業務の連なりを指し、業務の過程・手順などを重要視します。
したがって、業務プロセス最適化とは、業務全体を視野に入れた上でひとつひとつの業務を設計し直し、企業価値を高めていくことです。企業活動は経理や人事、営業、販売などさまざまなプロセスから成り立っていますが、「紙資料の作成・承認などに時間がかかる」「データの形式が統一されていない」などで非効率な作業が発生しているケースも少なくありません。業務プロセス最適化では、無駄な業務を削減し、業務をスムーズに進められるように新たなツール・方法などを導入していきます。
業務プロセス最適化が求められる理由
業務プロセス最適化は多くの企業で取り入れられており、なかには専門のコンサルタントを雇い、大掛かりな改革を行うケースも見られます。ここでは、企業に業務プロセス最適化が求められる理由を紹介します。
非効率的な業務をなくすため
市場やトレンド、物価など企業は日々変化するさまざまな状況に対応しながら、利益を出す最適な方法を考えなければなりません。企業の目指すものが変われば、目的達成のためのプロセスも変わってくることでしょう。そのため、少し前までは順調に利益を生み出せていたプロセスでも、外部状況の変化とともに無駄な業務が発生しているケースも少なくありません。業務プロセスをこまめに見直すことで、コスト削減や生産性の向上、ワークライフバランス最適化などの効果が期待できます。
業務の属人化を防ぐため
企業でよくある悩みのひとつとして、「特定の従業員しかできない業務があり、スムーズに仕事が進まない」「従業員によって知識・能力にムラがある」などが挙げられます。業務が属人化してしまうと業務の質にばらつきが出たり、特定の従業員にかかる負担が大きくなったりと、トラブルの発生に繋がりやすいでしょう。業務プロセス最適化によって新たなツールを導入したり、フレームワークを活用したりすることで、業務効率の改善や生産性の向上といった効果が期待できます。
業務プロセス最適化を進める方法
業務プロセス最適化を進めるには、まず解決したい課題や目標を設定し、計画を立てる必要があります。ここでは、業務プロセス最適化を進める方法をステップごとに紹介していきます。
①課題の洗い出しと原因の特定
最初に、担当者から現場で行っている業務内容をヒアリングし、どのような業務プロセスがあるのかを細かく洗い出し、整理していきます。重要なのは現場の声にも耳を傾け、不便に感じていることや非効率な作業などを把握することです。業務内容を整理できたら、それらを第三者が見てもわかるように、文章や図表などを用いて可視化しましょう。
また、他部署やほかの事業などと連携する業務がある場合は、それらも一緒にまとめ、業務全体の流れがわかるようにすることも大切です。業務プロセスの可視化ができたら、それらの情報をもとに課題を絞り込み、原因の特定を行いましょう。
②目標の設定
それぞれの業務プロセスにおける課題と優先順位が明確になったら、KPIやKGIなど具体的な行動目標を設定しましょう。KPIとは「重要業績評価指標」と呼ばれる、目標を達成するための具体的な数値のことです。販売件数や営業訪問件数など、個人・チームで達成すべき数値を明確にすることで、達成度合いや進捗を把握しやすくなります。
KGIとは「重要目標達成指標」などと呼ばれる、特定の期間における最終目標を数値化したものです。KPIと併せて使われることが多く、KPIは中間地点での目標値を、KGIは目指したい最終的な目標値を指します。「前年比売上120%を目指す」「今年度の販売件数を2倍に引き上げる」など達成目標を明確にすることで、従業員のモチベーション向上などにつながります。
③改善のための方法の決定と計画
具体的な目標を決めたら、それを達成するための方法や計画などを決定します。業務内容にもよりますが、業務プロセス最適化にはITツールやフレームワークなどを活用するケースが多いです。
業務改善のフレームワークで代表的なのは、BPMNやECRS、バリューチェーン分析、KPT、決定木分析などです。フレームワークの活用は、問題の糸口を明確にしたり、効率的に改善策にたどり着けたりするメリットがあるため、思考時間を最小限に抑えながら新しいアイデアを考案するヒントが得られるでしょう。
④実施と継続
業務プロセス最適化の方法や計画が決定したら、PDCAサイクルを回し、改善を加えながら継続することが大切です。PDCAサイクルとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)をひとつのサイクルと捉え、繰り返し実施することです。業務プロセス最適化は一度行えばよいわけではなく、変化する状況に合わせてこまめに見直す必要があります。また、課題の原因や対策が間違っているケースも考えられるため、改善の兆しが見られない時は、最初のステップから改めてやり直すことも重要です。
業務プロセス最適化で押さえておきたい4つの考え方
ここからは、業務プロセス最適化への有効なアプローチとして、押さえておきたい4つの考え方を紹介します。TQMやシックスシグマなど、プロセス改善の基本的な解決策をまとめました。
TQM(総合的品質管理)
「TQM(総合的品質管理」とは「Total Quality Management」の頭文字を取った略称です。組織内の不良品やサービス不良などを削減し、企業のあらゆる面での質を高めていくことが、企業価値の向上につながるという考え方です。TQMが意味する「品質」とは、商品のクオリティだけでなく、提供するサービスや実務など、業務全体の総合的な質を指します。
シックスシグマ
「シックスシグマ」とは、統計学を用いた分析で品質管理を行う手法のことです。シックスシグマでは、企業で起こりうるミスやエラー、欠陥品などをなるべく減らし、品質のばらつきを抑えることを目標に品質改革を行います。また、顧客の満足度に着目し、それらを統計的に分析することで、論理的に解決へのステップを検討できるメリットがあります。
リーン
「リーン」とは、プロセス管理の徹底によって業務効率を向上し、生産性アップを目指す考え方のことです。リーンでは「顧客の視点から価値を提供する」「最終ゴールに価値をもたらさない無駄な作業を排除する」「継続的改善を行う」という3つの視点を重要視するため、品質を確保しつつも作業時間や在庫量などの無駄を大幅に削減できます。
プロセスマイニング
「プロセスマイニング」とは、業務活動のログを分析し、業務プロセスを可視化することで、現状を把握して業務改善に活用する方法です。プロセスマイニングでは、専用のツールを使うことで対象となる業務の処理パターンを可視化します。これまで気づかなかった業務の課題点が明確になるため、具体的な業務改善の方針や計画を決めやすくなるでしょう。
まとめ
業務プロセス最適化では、それぞれの業務に常態化している無駄な作業を洗い出し、ほかの部署やチームなどとのスムーズな連携を目指します。業務プロセス最適化を目指すために、業務自動化やクラウド化などを検討している人は、「Microsoft365」を導入してみてはいかがでしょうか。