新型コロナウイルスの流行もあり、全国的にリモートワークが推進されています。リモートワークを取り入れることで感染リスクを下げられるうえに、業務効率の向上や従業員のストレス低減といった効果も期待できます。ただ、やみくもに導入してもいけません。本記事では、リモートワークを導入する前に確認すべき課題などを紹介します。
リモートワーク普及の背景とは
新型コロナウイルスの流行以前から、クラウドサービスの展開など、技術的なハードルが下がったことによりリモートワークを導入する企業は増えていました。しかし、大きな変化が生じたのは、やはり新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が出されるようになった2020年以降です。
特にオンラインで仕事を完結させやすいWeb業界では普及が進み、その流れ受けて、その他の業界でもZoomやTeamsなどの利用機会が増えるようになりました。
総務省で公開されている調査結果でも、2020年の3月9~15日に調査したリモートワークの実態と、7都道府県に緊急事態宣言が出された4月10~12日に調査したものとでは、実態に大きな変化があることが示されています。1回目の調査では、リモートワークの実施率が13.2%であったのに対し、2回目の調査では27.9%と2倍以上も上昇していたのです。短い期間であるにもかかわらず、これだけ大きな変化が生じています。
緊急事態宣言が明けたことでリモートワークをやめる企業も出ていますが、新型コロナウイルスの流行は全国の企業にリモートワークを意識させ、その導入率を上げた大きな要因といえるでしょう。
リモートワーク移行企業が直面する課題
政府からもリモートワークが強く推奨されたことで実施する企業は増えましたが、同時に様々な課題にも直面しています。事業の性質上、リモートワークに移行できないという企業もありますが、以下ではリモートワークに移行した企業が留意すべき問題を解説していきます。
セキュリティ面の問題
大きな課題の1つは、セキュリティに関することです。これまでオフィス内のパソコンだけを使って作業をしていたのに対し、リモートワークではノートパソコンを使ったり、タブレットやスマートフォンを使ったりする機会も増えます。企業がきちんと端末を支給してくれるケースばかりではなく、従業員個人の端末を利用することも珍しくありません。そうすると、従業員に負担がかかるという難点もありますが、セキュリティ上のリスクを抱えることにもなってしまいます。
例えば、従業員のセキュリティ意識や知識が十分でない場合、外出先のフリーWi-Fiを使って社内システムにアクセスしてしまうおそれがあります。その場合、第三者による不正なアクセスを受ける可能性があり、自社のみならず取引先に損害を与えてしまうかもしれません。
リモートワーク環境下において特に意識すべきはエンドポイントセキュリティです。これは要するに、社内外のネットワークに接続されたパソコンやスマートフォンといった終端機器を対象にしたセキュリティ対策のことです。
セキュリティ対策が施されていない社外のネットワークも使うようになったため、従前の、社内外の境目にファイアウォールなどを設ける入口対策だけでは不十分となりました。そこでリモートワークでは、端末に保存するデータを暗号化するなど、端末そのものへのセキュリティ対策も欠かせません。
生産性向上の課題
「リモートワークで生産性が向上する」といったこともよく耳にしますが、常に生産性が向上するわけではありません。自社に合った形で適切な制度を設けたり、業務内容に即したクラウドサービスを利用したりなど、十分な体制が整ってからの導入が前提となります。この部分を理解しないままリモートワークを先に進めてしまうと、逆に生産性を落とす可能性もあります。
大前提として、自社の業務内容とリモートワークを照らし合わせ、自宅などで作業を行うことが適しているのかどうかをよく検討しなければなりません。そして、個人的にリモートワークが合わないと感じる従業員がいることも理解し、状況に応じてリモートワークとオフィス出勤を選択できるようにするなどの配慮も必要です。十分に準備期間を設け、慎重に進めるようにしましょう。
導入直後に生産性が下がったように思えても、運用していく中で業務効率が上がっていくことも考えられるので、判断を早まらないことも大切です。労働環境が大きく変わったことにより抵抗感を覚えることもあるかもしれませんが、慣れていくことで一度落ちた生産性がこれまで以上に向上する可能性もあります。
コミュニケーションやタスク管理の課題
仕事内容が各従業員で独立していることもあれば、チームで進めていくこともあります。その場合、リモートワーク環境下でもコミュニケーションを円滑に取らなければなりません。同様に、プロジェクトやタスク単位でも情報は共有できていることが大切です。
そこで、ただ職場を変えるだけでなく、グループウェアの導入などにより、コミュニケーションやタスク管理についての問題が生じないように体制を整えなくてはなりません。こうした準備ができていなければタスクが可視化されず、誰がどのような作業を進めているのかを把握できません。マネジメント管理の難易度が増してしまい、適切な指示やアドバイスが与えらなかったり、業務効率が悪化したりといった弊害が発生してしまいます。
また、コミュニケーションの低下は社員のストレス増加にもつながります。リモート会議などにおいて、積極的に雑談する機会を設けるといった対策が必要です。
リモートワークの課題を解消する方法
リモートワークには課題があるものの、それを解決する方法があります。リモートワークによって成果を上げている企業も多数あるので、課題を解決し、恩恵を享受できるよう努めましょう。
Teamsなどプラットフォームを利用する
クラウドサービス等の利用は、リモートワークにおいて必須といっても過言ではありません。チャットやタスク管理、スケジュール管理ができるプラットフォームの導入を検討しましょう。自社がリモートワークを導入することでどのような問題が生じるのか、その問題を解決するためにはどのような機能が必要なのかを考え、自社にあったツールを選択してください。
グループウェアやプロジェクト管理ツール、オンラインストレージ、ワークフローシステム、勤怠管理システムなど、リモートワークの課題を解決するツールは種類が豊富です。単一の機能が提供されているシンプルなツールもあれば、これらをまとめて実現するプラットフォームを提供しているケースもあります。
出社形態をハイブリッド型にする
リモートワークは、必ずしも万能な働き方というわけではありません。出社とリモートを選択的にするなど、出社形態をハイブリッド型にすることも視野に入れましょう。
例えば、基本的にリモートワークが望ましいが定期的に綿密な情報共有が必要で、それがWeb会議だと不十分という事情があるのなら、週に一度出社をするといった方法などを検討しましょう。自社にあった働き方のバランスを考え、問題を解決するような出社形態を考え出すことが重要です。
コミュニケーションの時間を意図的に設ける
コミュニケーションに不安がある場合、交流の機会を意図的に設けてみるのもよいでしょう。リモートワークによって人との接点が急に減り、このことがきっかけで精神的な負荷を感じる人もいます。
そのため、特に初めのうちは、ランチミーティングなどを設定するなど、交流の場を設けてリモートワークの実施状況を把握することが大切です。Web会議などは、業務上の会議のみならず、雑談の場としても役立ちます。
まとめ
リモートワークのメリットを最大限活かすには、セキュリティ対策を実施し、コミュニケーションや情報共有が円滑になる体制を整える必要があります。生産性を落としてしまわないよう、出社形態を工夫するとともに、自社に適したツールを選定することが大切です。