ITシステムツールはそれぞれ用途や機能が異なり、ツールが増えれば管理が複雑になります。そこで、業務効率化や生産性向上を図るために必要となるのがシステム統合管理です。本記事では統合管理ツールやERP(統合基幹業務システム)の基本機能やメリットについて詳しく解説します。
システムを統合管理する必要性
システムの統合管理とは、複数の部署でそれぞれ保管していたデータおよびシステムを集約し、統一されたセキュリティポリシーや運用ルールによって管理する手法です。なお、運用方法を統一せず、単にデータを1か所にまとめて保管する場合には一括管理と呼ばれます。
統合管理されていないシステムにはいくつかのリスクがあり、また統合管理することで得られるメリットがあります。
統合管理されていないITシステムの問題
業務で扱うシステムは、OSやソフトウェア、セキュリティツールなどさまざまな種類があります。それらを部署や従業員ごとに個別で管理していると、システムの規模やITツールの数が増大するにつれてデータ共有・連携に要する手順が複雑化し、システムやデータの属人化を招きます。
顧客情報といった必要な情報や業務ノウハウがすぐに取り出せなければ、データを探しだすために無駄な時間と手間をかけることになり、業務効率を低下させます。
また、データを一括管理している場合でも、システム運用が一元化されていなければ、サーバーに負荷がかかりやすくなるなどのリスクがあり、IT機器やシステムが本来の機能を発揮できません。
システムを統合管理する効果
統合管理されたシステムでは、部署を横断してデータを共有できるため従業員が必要なデータを発見する時間を大きく短縮でき、資料作成や会議にかける時間の削減といった業務効率化が見込めます。
さらに集約されたデータを活用することで、根拠に基づいた意思決定や適切な配置転換が行えるようになり、これによりイノベーションの実現や従業員満足度の向上による生産性の改善、ひいては市場競争力の強化にもつながるでしょう。
また、システムの統合により管理コストを削減できます。部署ごとに保管することで発生するデータの重複を解消し、一人ひとりが運用に手間を費やしていたシステムを一元的に管理することで人的リソースを最小限に抑えられます。
コストを削減するだけでなく、属人化したデータが故障などのトラブルで消失するリスクを低減し、ヒューマンエラーの発生を未然に防ぐ環境を構築できます。
統合運用管理ツール
統合運用管理ツールは、業務に用いるさまざまなITシステムを一元管理するツールです。業務進捗や財務の運用に用いる他の管理ツールとの連携をはじめ、各システム運用の効率化やセキュリティを強化する機能を備えています。
統合運用管理ツールの基本機能
統合運用管理ツールの基本機能としては、以下の6つが挙げられます。
ジョブ管理
ルーティンワークなど日々の定型的なスケジュール管理や、進捗状況の確認、作業ログなど処理状況を監視する機能です。「ジョブ」はシステムが処理するプログラムや処理自体を指し、これが正常に運用されているかをチェックする主要な機能と言えます。
可用性管理
可用性は信頼性や保守性、障害発生時のシステム稼働力などの観点から、機能を分析したITサービスのクオリティを計る指標です。システムがユーザーの要求に十分な機能性を保っているかを監視し、必要に応じてサポートへの要求を検討します。
性能管理
データ処理速度などのITシステムのパフォーマンスが一定水準をクリアするように管理する機能です。システムの規模や用途によって必要とする性能が異なるため、運用状況に応じた性能改善の基準となります。
構成管理
ITシステムの構成要素であるハードウェアやサーバー、ソフトウェア、ライセンス、ネットワークなどを管理します。要素ごとにライフサイクルを管理し、システム運用のリスクを低減します。
セキュリティ管理
ID・パスワードによる認証やアクセス・ネットワーク制限、ファイアウォール構築などを行い、セキュリティの堅牢性を保持する機能です。
IT資産管理
ITシステムのハードウェアや、使用するソフトウェアの情報を収集し、IT資産を一元管理する機能です。ライセンスやプログラム更新などの管理を効率化し、コストを削減します。
統合運用管理ツールのメリット
統合運用管理ツールを導入することで、以下のようなメリットを得られます。
ITシステム運用管理の一元化
一元化により自社システムの利用状況を確認できるため、システムの管理担当者はネットワークのどこかでトラブルが発生した際に、発生原因や影響を迅速に特定し、的確な対応が可能です。
ITシステム運用管理の自動化
基本的なシステム維持に要するジョブ管理や、手間のかかる構成管理を自動化できるため、人的コストの削減とともに作業ミスを低減します。
また、システムの一時停止を伴うバックアップ作業をスケジュール化すれば勤務時間外に自動で行えるようになり、時間外労働の削減に役立ちます。
24時間365日の監視体制
システムにより、24時間365日の監視体制を実現できます。障害発生時に自動で通知され、手作業による復旧を要するような優先度の高いトラブルを管理担当者が即時発見できます。
さらにサーバーの稼働率やメモリなどのリソース利用量を可視化することで、繁忙期は一時的に性能の増強を行うといった判断材料が得られます。
ERP(統合基幹業務システム)
ERPはEnterprise Resource Planningの略で、経営資源計画を意味します。経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報を総合的に管理し、経営改善に活かす取り組みを支援するシステムで、統合基幹業務システムとも呼ばれます。
人事や労務、給与関係などの人材管理、在庫・資産管理、販売・会計システム、顧客情報などを一元管理できれば、スムーズな経営判断が可能になります。これまで、ERPは大企業が導入するのが一般的でしたが、最近では中小企業が導入できるパッケージソフトウェアが数多く登場し、クラウドサービスとして利用できるものもあります。
ERPの基本機能
ERPで利用される基本機能は組織の規模や業種によって変わります。例えば、製造業では生産管理を重視しますが、自社で生産を行わないサービス業などでは必ずしも必須の管理項目には当たりません。
そのため、ERPの導入を検討する際には自社の目的に合った機能を搭載するパッケージを選ぶことが重要です。
生産管理
原価管理や検収・検品、納期などの各プロセスを管理します。製造業で重視され、さらに販売や在庫の管理機能と連携ができるかといった点にも注意が必要です。
販売管理
見積、受注と発注、納品、販売実績など販売手法に関わる管理機能です。ビジネスにおいて重要な機能であり、会社により手法が大きく異なるため、慎重に選ぶ必要があります。
例えば、同じ商品を扱う場合でも、店舗販売とECサイトのどちらを重視するかが違えば必ずしも両者で同一のERPが適切とは限りません。
財務会計管理
売掛・買掛管理、債権・債務管理、手形管理など、外部のステークホルダーに経営状況を示すために必要な機能です。基本的に法律のルールに則っているため、製品ごとの差異は少ないでしょう。年度ごとに法改正が施行されるため、最新の法令に対応できるものを選ぶ必要があります。
調達・在庫管理
製品の品目や保管場所、品質などの情報を管理します。製造業や卸売業で重要な機能であり、契約や物流、会計にも密接に結びつきます。
資産管理
企業が所有するシステムやソフトウェア、設備などの資産を管理します。とくに設備や資機材の減価償却は会計において複雑な処理を要します。また、固定資産だけでなくリース資産にも対応したERP製品があります。
ERPを導入するメリット
ERPを導入するメリットは以下の通りです。
企業情報の一元管理
企業情報の管理を一元化できるため、経営状態の可視化と分析、戦略の策定などが容易になります。統合運用管理ツールと同様に、ERPでシステム統合すれば管理担当者の運用・保守作業における的確なトラブル対応を可能にし、負担の軽減にもつながります。
意思決定のスピード向上
先述の通り、統合された情報を分析することで常に自社状況を把握できるようになるため、迅速な意思決定を要する場面でも根拠に基づいた適切な判断を行うことができます。
組織のガバナンス強化
一元化により基幹システムやデータへのアクセス権限の管理を集約することで、各従業員への監視体制を見直すことにつながります。詳細に権限設定を行うことでインサイダー取引といった法令違反や、市場競争力を損なう情報漏えいのリスクを未然に防止でき、内部統制が強化されます。
まとめ
社内システムの総合管理には、統合運用管理ツールやERPが役立ちます。
統合運用管理ツールはITシステムを一元管理するためのソリューションであるのに対し、ERPは経営改善を目的として経営資源を一元管理します。
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