働き方改革の一環として、ITツール・システムを導入した企業も多いことでしょう。しかし、導入したツールがどのよう運用されているか、効果測定を行っているでしょうか。本記事では、ITツールの効果を測るためのKPIについて、概要から設定のコツまで解説します。あわせて、「効果の見える化支援サービス」も紹介しています。
目標達成の鍵「KPI」とは?
「KPI」(Key Performance Indicator)とは、組織の目標達成度を測定し、適切に評価するために用いられる指標です。日本語では、「重要業績評価指標」や「重要達成度指標」などと呼ばれます。
KPIでは、事業が最終的に目標達成できたかどうかを図るため、各プロセスにおいて細分化された目標を設定します。たとえば、訪問件数や受注件数、リピート率、納期などの、具体的な数値を利用します。
ITシステムを導入した際に問われる、「IT投資効果」もKPIにあたります。KPIを達成することで必然的に組織の目標達成、利益向上に結びつきます。言い換えれば、組織の目標を達成するために必要な数値をKPIに設定するということです。
KPIと混同されることの多い指標にKGIがあります。「KGI」(Key Goal Indicator)とは、組織の最終目標のことです。「月間の成約数を2倍にする」「1年後に売上30億円を達成する」など、期間中の企業活動で達成を目指すゴールとして設定します。
すなわちKPIは、KGIの中間目標であり、KGI達成に向けて実践すべき具体的な行動を指し示すためのものです。このため、KPIとKGIはセットで設定し、双方にズレがないようにしなくてはなりません。
KPIを設定するメリット
KPIを設定することで、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。ここでは、KPI設定のメリットから代表的なものを3つ紹介します。
目標達成までの行動を見える化
KPIは、最終的な目標達成に向けて、取り組むべき課題を明確化したものです。目標達成に向けて現在の業務がどの段階にあたるか、次に達成すべき課題はなにか、といったことがいつでも確認できます。また、PDCAサイクルを回すうえでも、どの段階に問題があったのかを容易に把握が可能なため、次回のKPI設定に活かせます。
組織全体の生産性を向上させる
「どうしてこの作業が必要なのか」という点を従業員が理解していなければ、積極的に業務にあたることはできません。KPIを設定することで、目標と、そのためにすべきことが組織全体で共有しやすくなります。一体感が生まれることで従業員のモチベーションが向上し、パフォーマンスを最大限発揮できるようになるでしょう。
目標達成に向けてなんらかのトラブルが発生した際も、目的意識を共有していれば、対処法を組織全体で考えられます。こうした改善に向けてのアイデアが従業員からも出るように、現場の意見が通る環境を構築しておくことも大切です。
評価基準の統一化
組織によっては、評価基準が明確に定められておらず、どのような行動が評価されるのかが従業員にとっては分かりにくいケースがあります。評価への不満が蓄積すると、従業員のモチベーション低下が懸念されますし、人事担当者にとっても、評価基準が曖昧では査定に時間がかかり、非効率的です。
KPIは、目標達成に向けた行動の可視化だけでなく、評価の可視化にも貢献します。KPIの進捗度合いは、目標の達成率、企業への貢献度とも言い換えられます。そのため、評価基準をKPIに統一することで、客観性をもった従業員の評価ができるようになります。
KPI設定のコツ「SMART」
KPIを設定することで、目標達成までのプロセスが明確化し、生産性向上にもつながることはお伝えしてきました。しかし、これは“適切な”KPIを設定した場合です。誤ったKPIを設定してしまえば、上記のメリットは得られないばかりか、マイナス効果が発生するおそれもあります。そこで、適切なKPIを設定するためのコツ「SMART」をご紹介しましょう。SMARTとは、「Specific」「Measurable」「Achievable/Agree on」「Related」「Time-bounded」の頭文字を合わせたものです。以下でそれぞれについて説明します。
S:Specific(明確さ)
KPIが複雑すぎたり、逆に曖昧すぎたりすると、どのように行動すればよいか従業員が判断できません。KPIは、会社全体あるいは部署ごとなど、広く共有するものです。だれが見てもわかりやすく、具体的に取るべき行動が見えるような目標を設定しましょう。
KPIには、目標数値や期日などの具体的な値を定めますが、それだけでは「各従業員が取るべき行動」までは理解しにくいことがあります。より詳細に決められる内容であれば、「だれがどのような行動をするのか」まで踏み込んで決定するのもよいでしょう。
M:Measurable(測定可能)
KPIは設定して終わりではなく、進捗度合いを都度チェックしながら運用していきます。このとき、計測できない値を目標にしていると、進捗が外部から見て判断できません。逆に、定量的な数値をKPIにしていれば、進捗に応じてKPIの再設定も簡単に行えます。
また、最終的に目標が達成できずとも、比較したり傾向を読み解いたりして、次回以降の取り組みにつなげることが可能です。そのため、数値として表さない目標を立てる際も、必ず計測できる数値に落とし込んでからKPIに設定しましょう。
A:Achievable/Agree on(達成可能/関係者の合意)
達成が明らかに困難なKPIは、設定しても意味がありません。場合によっては従業員のモチベーションを下げる結果になりかねないので、達成の可能性がある目標を定めましょう。また、KPIを設定したとしても、目標に沿った行動を起こさなければ実現には至りません。実際に行動するのは、現場で働いている従業員です。定めた目標に納得感をもって業務にあたってもらえるよう、設定時点あるいは提示時点で、従業員の合意を得ることが重要です。
R:Related(関連性)
前述の通り、KPIはKGIと関連した指標です。KGIを細分化する形で、その達成に向けたKPIを設定しましょう。
さらに、部署ごとにKPIを設定する際は、部署間のKPI設定に一貫性をもたせることも重要です。また、個人単位での数値目標をKPIに設定する際は、その目標が企業全体の目標とどのように関連するのか、従業員に周知しましょう。一貫性のないKPIや全体目標とのつながりが曖昧なKPIでは、従業員のモチベーションを維持することが困難です。
T:Time-bounded(適時性)
いつまでに目標を達成すべきか、という期限の設定は、具体的な行動を促すのにもっとも効果的です。期限がない目標は、ついつい後回しになってしまい、結果的に達成されないことにもなりかねません。KPI設定においても、必ず期限を設定することを忘れないでください。
働き方改革の効果検証における課題とは?
働き方改革が浸透するとともに、多くの企業が生産性向上を目的に、ITツールの導入を進めました。しかし、施策や目的意識ばかりが先行して、導入したツール・システムのIT投資効果がどの程度あったか、という効果検証がないがしろにされているケースも見られます。
「導入したITツールが実際に使われているのか」「生産性向上などの目的に向けた効果はあったのか」「どうすれば効果が測定できるのか」など、疑問・課題を抱えている経営陣の方々も多いことでしょう。以下では、こういった課題を効率的に解決するサービスについて紹介します。
「効果の見える化支援サービス」の導入メリット
「効果の見える化支援サービス」は、ITツール導入効果を図るためのKPI設定や、各ツールの効果を“見える化”します。日本ビジネスシステムズ株式会社(JBS)が提供していて、「効果の見える化支援サービス」におけるKPI 設定プロセスは以下の通りです。
- 経営計画や経営方針、実施済み・実施予定の施策を踏まえて、企業に合ったKPI を設定します。このとき、KPIは「経営(財務)」「働き方(結果)」「IT/施策(活動)」の3つの観点で整理します。
- KPI の計測方法を、定量・定性といった具体的な数値で定義します。取得した IT ツールのログデータと、組織別・拠点別・ペルソナ別などの人事データを組み合わせることで、ツールの利用状況および効果を“見える化”します。
- “見える化”した情報をもとに、「ツールを活用している集団」「ツールをあまり活用していない集団」にグループ分けしたうえで、それぞれの成功/失敗原因を調査します。調査結果から施策を検討し、企業全体でのツールの定着化を図ります。
- 継続的なPDCAサイクルを回すことで、確実にIT投資を活用するための活動を推進します。組織の生産性向上や働き方改革の実現を総合的に評価し、施策の修正や継続といった経営判断に寄与します。
IT投資の効果がわからないと感じている方は、ツール導入の結果を“見える化”するとよいでしょう。「効果の見える化支援サービス」は、そのためのサービスです。また、ツールの効果が可視化されることで、導入効果の把握だけでなく、より効率的な運用方法の発見も期待できます。
まとめ
ITツールを適切に運用し、働き方改革を実現するには、ゴールに至るまでのプロセスを“見える化”することが重要です。KPIを用いて組織全体の認識を統一することで、結果だけでなく従業員のモチベーションに好影響をもたらすことも期待できます。自社にとって最適なKPIを設定するために「効果の見える化支援サービス」の利用を検討してみてはいかがでしょうか。