デジタル化が加速する現代市場において、企業が競争優位性を確立するためにはITシステムの戦略的な活用が重要です。そして、ITシステムの安定的な稼働を担保するためには「システムの運用管理」が欠かせません。そこで本記事では、システム運用管理の概要や重要なポイント、具体的な業務内容などについて解説します。
システム運用管理とは
システムの運用管理とは、業務システムの恒常的な安定稼働を担保すべく、ハードウェアやソフトウェアの運用体制を管理する仕組みを指します。例としては、オンプレミス環境で運用している基幹系システムの定期的な点検や稼働状況の監視、ネットワーク機器の設定やソフトウェアライセンスの管理、セキュリティ管理におけるガイドラインの作成、サーバーの冗長化やバックアップ体制の整備などが主な業務領域です。
20世紀後半から21世紀初頭にかけて起きたIT革命によってデジタル化が加速し、現代の企業経営ではITシステムの活用なくして事業活動の継続は不可能といっても過言ではありません。たとえば、オンプレミス環境で運用しているITインフラに大規模な障害が発生した場合、事業活動に悪影響を及ぼすのはもちろん、最悪のケースでは事業停止に追い込まれる可能性もあるでしょう。このような不確実性を最小化するためにも、システムの継続的な点検やメンテナンスが求められるのです。
システム運用管理の種類
システム運用管理の項目は大きく分けると「ネットワーク管理」「システム管理」「業務運用管理」という3つの領域に分類されます。
ネットワーク管理
ネットワーク管理とは、ITインフラや社内LANなどのネットワーク領域を点検・監視する管理業務を指します。IDやパスワード、アクセス権限設定や職務分掌規定などの情報を管理し、ログの監視や障害の検出、ファイアウォールの設置や社内LANのセキュリティ強化などが主な業務領域です。
システム管理
システム管理とは、サーバーやネットワーク機器といった物理的なハードウェアの管理業務を指します。ITシステムの稼働状況を監視する基本運用をはじめとして、ハードウェアの部品管理やIT資産の記録、定期的なメンテナンスや冗長化の実行などが主な業務領域です。
業務運用管理
業務運用管理とは、システム運用管理における業務プロセスそのものの管理を指します。ITシステムの冗長化、定期的な点検を実行するスケジュールの調整、ソフトウェアのライセンス更新、システム運用管理における人材配置の最適化などが主な業務領域です。
システム運用と保守の違い
システムの「運用管理」と「保守」は同義と捉えられるケースもありますが、それぞれの意味は異なります。システムの運用管理が定期的な点検や稼働状況の監視などを指すのに対し、保守はITシステムに障害が発生した際の修理・復旧を指す概念です。
つまり、システム運用管理は「ITシステムの安定稼働を維持する業務」であり、システム保守は「ITシステムに起こったトラブルに対処する業務」といえるでしょう。
システム運用管理の仕事内容
ここからは、システム運用管理部門に属するシステムエンジニアの業務内容について見ていきましょう。主な業務内容として挙げられるのは「インフラやネットワークの監視」と「ジョブ管理」、そして「バックアップ対応」の3つです。
①インフラやネットワークの監視
ITインフラは基本的にサーバーやストレージなどのハードウェアと、OSやデータベース管理システムといったソフトウェア、そしてデバイス間の通信および相互作用に必要なネットワーク機器によって構成されています。こうしたITインフラの物理的な障害検知や動作確認、定期的なメンテナンスの実行などがシステム運用管理の主な業務です。
このような業務を通して、システムの恒久的かつ安定的な運用体制を確立することが管理担当者の責務といえます。
②ジョブ管理
「ジョブ管理」とは、プログラムの実行やバッチ処理などの制御や監視を行う管理業務です。ITシステムには機能や性能といったシステム要件と、システム化したい業務領域を指す業務要件があり、定義された要件に則った安定的な稼働が求められます。
バッチ処理の開始や終了が設定通りに実行されたか、あるいはバックアッププログラムが正常に稼働しているかなどを監視し、要件を満たせるよう管理することがジョブ管理の役割です。
③バックアップ対応
先述したように、ITインフラに何らかの障害が発生した場合、事業活動に多大な影響を及ぼすリスクがあります。このような事態を回避するためには、バックアップ環境の構築やITシステムの冗長化といったリスクマネジメントが必要です。
サーバーに保管されているファイルの定期的な転送やバージョン管理などを実行し、いかにしてリスクを分散して事業継続性を確保するかがシステム運用管理の重要課題といえます。
システム運用管理の課題
厚生労働省の調査によると、国内の総人口は2008年の1億2,808万人をピークに下降の一途を辿っており、生産年齢人口も1992年の69.8%を頂点として減少し続けています。このような社会的背景からさまざまな分野で人材不足が深刻化しており、みずほ情報総研株式会社の調査では、2030年にIT分野全体の需要に対して約45万人もの人材不足が生じると予測されています。
IT人材の不足から「ひとり情シス」や「保守・運用管理の属人化」といった課題が顕在化しており、いかにして優れたシステムエンジニアやプログラマを確保するかが重要な経営課題となっています。また、サーバーやネットワーク機器の運用管理には相応のランニングコストを要するため、大企業のように多様な資金調達手段をもたない中小企業では資金繰りが困難となる点も無視できない課題といえます。
システム運用管理を見直すときのポイント
ここからは、システムの運用管理を見直す際に押さえておきたいポイントについて見ていきましょう。
アウトソーシングを活用する
アウトソーシングを活用することで、IT人材の採用や教育に投じるリソースをコア業務に集中できます。
相応の外注費用を要するものの、企画や設計などの業績向上に直結する業務へ自社の人的資源を投入できる点が大きなメリットです。また、すべての運用管理業務をアウトソーシングするのではなく、専門性の高い業務や高度な知識を要する領域のみを委託することで外注コストを最小限に抑えられます。
統合運用管理ツールを導入する
アウトソーシングとともにおすすめしたいのが「統合運用管理ツール」の導入です。統合運用管理ツールとは、ネットワーク管理やシステム管理、業務運用管理といった業務領域を支援するソリューションを指します。
統合運用管理ツールを活用することで、IT人材の不足やひとり情シス、保守・運用管理の属人化などの経営課題を解決する一助となるでしょう。
まとめ
システム運用管理とは、業務システムの運用体制を管理し、ITインフラの恒常的な稼働を担保する施策を指します。
人材不足が深刻化するなかで、システム運用管理を効率化するためには優れたソリューションの活用が不可欠です。システム運用管理の効率化を目指す企業は、Microsoft 365の導入をご検討ください。