近年はAIなどを用いて作業自動化を図るツールが増えており、業務効率が大きく向上しています。その中で、企業や一般家庭に普及し始めているのがRPAツールです。今回は、RPAツールの代表になりつつあるPower Automate for desktopについて解説します。
Power Automate for desktopとは
Power Automate for desktopは、 Microsoft社が提供するRPAツールです。RPAはロボティックプロセスオートメーションの略で、人が行う作業の一連の流れをツールに覚えさせて、自動で実行するシステムです。
これまでMicrosoftではタスクを自動化する「Microsoft Flow」を提供していましたが、RPAツールの機能をさらに強化し、「Power Automate」の提供を開始しました。
現在、このツールにはクラウドサービスとデスクトップサービスがあり、デスクトップ対応ツールとして販売されているのがPower Automate for desktopです。このサービスではPC上で行う動作を「アクション」と呼び、用意されたアクションを順番に行うことで自動化を実現します。
400種類以上のアクションが用意されており、ユーザーはその中から必要なものを選んで組み合わせます。そのため、コードの知識がなくても簡単に自動化フローを作成できます。コードの知識があれば、より細かい自動化フローの作成が可能です。
Windows 10以降であれば無償で利用可能
2021年3月17日に販売されたWindows 10のインサイダープレビュー版に、Power Automate for desktopが同梱されることになりました。
さらに、現在はWindows 11以降の製品にプリインストールされることが決定しています。今後は一般ユーザーにも普及していくため、OneDriveのように気軽に使えるRPAソフトになるでしょう。
Power AutomateはExcelやメール、Teamsなどの業務ツールを自動化して作業効率を上げるツールですが、他にも多くの利用方法があります。今後多くのユーザーが利用するようになれば、多くのテンプレートや作成方法の情報が広まることが想定されます。そうなれば作成が難しい自動化フローもネット上で共有される可能性があるため、より普及が進むでしょう。
Power Automate for desktopにできること
Power Automate for desktopでは、ローカルアプリケーションの自動化やWebブラウザの自動操作、情報収集などができます。PCにインストールしている製品の自動化ができるため、作業効率の向上が期待できます。
自動化フローの作成には、アクション部品を組み合わせて作成する方法と、デスクトップレコーダーを使用する方法があります。アクション部品を組み合わせる方法では、「メッセージの表示」「ファイルのコピー」「Webサイトからのダウンロード」といったさまざまなアクションを組み合わせることで自動化フローを作成します。
デスクトップレコーダーは自身が行った動作を記録して、それを実行する方法です。例えば「数字をコピー」「Excelファイルを開いてセルに貼り付け」「Excelの更新」といった動作を行うと、それがそのまま記録されます。
記録されたアクションは、後で改変することも可能です。間違いがあった場合や思ったとおりに動作しなかった場合は、修正して使えるようにできます。実際に利用される場面としては、定期的な業務の自動化が挙げられます。リマインドメールの一斉送信やログの一元管理といった「定型的な入力作業」の多くは、自動化できるでしょう。
Power Automateとの違い
前述のとおりPower Automateはクラウドバージョンが元となっています。一方Power Automate for desktopはデスクトップ上にインストールして使用するのが主な違いです。2つのサービスに分け、Power Automateを「クラウド領域」、Power Automate for desktopを「デスクトップ領域」としています。
クラウド領域では、Web上でAPIを利用してアプリケーションを自動化します。利用しやすいようにGUIを搭載してコネクタを用意しているため、さまざまなアプリケーションに対して簡単に自動化フローの作成が可能です。
デスクトップ領域では、ローカルのシステムやアプリケーション、Webブラウザの操作の自動化が中心になります。PC上にインストールしているExcelやWordといったアプリケーションの自動化は、デスクトップ領域で行うことが可能です。
クラウド領域とデスクトップ領域では、自動化フローの作成方法が異なります。デスクトップ領域ではプログラミングの要素が多くなりますが、その分さまざまな自動化フローを作成できます。またクラウド領域とデスクトップ領域は、連携することも可能です。複雑なプログラミングは不要で、簡単に連携できます。
有償版と無償版(Windows 10)の違い
Power Automate for desktopには無償版と有償版があり、有償版には以下の機能が備わっています。
- クラウド領域と連携した自動化
- クラウド版のPower Automateへの接続
- 作成した自動化フローのメンバー間共有
- プレミアム、カスタムコネクタとの連携
- 無人での実行
Power Automate for desktopの無償版のデメリットは、作成したフローを手動でしか実行できないことです。またPower Automate for desktopをインストールしてあるPCがない場合は、自動化フローを実行できません。
有償版ではクラウド領域との連携によって、このような問題を解消しています。クラウド領域では、日時やアプリケーションの動作をトリガーとすることができます。特定の日付やアプリケーションの動作を起点として、自動化フローを実行可能です。
また、有償版の場合は作成した自動化フローの取り扱いが異なります。作成した自動化フローはクラウドのPower Automateサイトに保存されるため、一元管理が可能です。他ユーザーとの共有もできるため、業務中に社内のメンバー同士で自動化フローを共有して、チーム全体の作業効率の向上を図れます。
Windows 10 Home版とWindows 10 Pro版の違い
Power Automate for desktopは、Windows 10のエディションによっても機能が異なります。 Windows 10 Home版には、Windows 10 Pro/Enterprise版で利用できる以下の機能がありません。
- クラウド領域と連携したフロー実行
- フロー共有
Windows 10 Home版では、Power Automateの有償版を利用していても機能が制限されるので注意が必要です。また、有償版を使うには「アテンド型PRAのユーザーごとのプラン」というライセンスが付与されているアカウントを使用する必要があります。このライセンスは組織・会社・学校のアカウントにのみ付与されるので、個人アカウントの場合は、有償版を利用できません。
さらに、Windows 10 Home版では「アテンド型RPAのユーザーごとのプラン」を付与されたアカウントを利用している際も機能が制限されます。すべての機能を利用するための条件は、以下のとおりです。
- Windows 10 ProまたはEnterpriseを使用している
- Microsoftのアカウントが、組織・会社・学校のいずれかである
- アテンド型RPAのユーザーごとのプランが付与されている
まとめ
Power Automate for desktopは、ローカルで使用できるRPAツールです。PCにインストールしてあるマイクロソフト製品や、Webブラウザの自動化フローを作成できます。
これを活用すれば「Excelへのデータ貼り付け」「Web上からデータをコピー」など、多くの定型業務を自動化できるため、業務効率化を図れます。