さまざまな課題を解決するため、多くの企業で「チャットボット」と呼ばれるサービスが活用されています。また、現在はさらにRPAを組み合わせた「チャットボットコンシェルジュ」が注目を浴びてきています。この記事ではその概要や活用事例などについて、くわしくご紹介します。
企業が直面するさまざまな課題
企業が業績を維持、成長させていくためには多くの課題があります。ここでは
- 従業員の勤怠管理
- 業務効率化
- 顧客対応
という3つの観点から、それぞれ詳しく見ていきましょう。
従業員の勤怠管理
企業では、社員やパートタイマー、アルバイトなど、さまざまな雇用形態の従業員が業務にあたっています。そこで個々の従業員の労働時間の実績管理を適正に行う「勤怠管理」は非常に重要です。
勤怠管理をしっかり行うメリットとして、まず給与計算が正確に行えるようになることが挙げられます。また、長時間労働など過重労働を防止することで、従業員の仕事に対するパフォーマンスが向上します。従業員エンゲージメントが上がり、会社との信頼関係が強化できれば、離職率を下げられ、コンプライアンス違反のリスクも減少するでしょう。
一方、実際に勤怠管理を行うには、多くの悩ましい課題があることも事実です。たとえば従業員全員分の勤務表を作成したり、日々の更新や管理といった煩雑な作業が発生したりするため、相当の人件費がかかります。
さらに、昨今浸透してきているテレワークによって新たな課題も生まれています。従来の勤怠管理の方法では、遠隔から従業員の勤務時間や勤務態度を管理することは困難です。そのため、クラウド型の勤怠管理システムを導入するなど、新しい対策方法を検討する必要があるでしょう。
業務効率化の課題
厚生労働白書によると、少子高齢化や世界経済の影響を受け、日本の労働力人口は2000年(平成12年)以降、年々減少し続けています。
労働力人口の減少にともない企業の人材確保が困難になってくると、企業はこれまでと同じ業務量をこなしていくことが難しくなるでしょう。そのため、本当に必要な業務かどうか取捨選択したり、ルーティンワークを自動化したり、分業化を進めたりする必要が出てきます。業務効率化は、今後の経営を左右する大きな課題なのです。
しかし実際にどのような手法で業務を効率化すればよいか分からないこともあるでしょう。自社の課題を明確化できていないうちに進めてしまうと、手段が目的化してしまうおそれもあります。
業務効率化を成功させるためには、まず現状把握をしっかりと行い、業務フローの中で改善すべきポイントを特定することからスタートしなければなりません。
顧客対応での課題
ビジネスの対象となる顧客への対応も、企業にとって非常に重要な課題です。特に自社商品・サービスへの問い合わせやクレームにどのように対応するかによって、顧客からの信頼関係が大きく変わり、将来的な業績への影響も出てきます。
顧客対応で考えられる課題として、問い合わせの量が多くて窓口やコールセンターがパンクしてしまい、対応に遅れが生じることが挙げられます。たとえ窓口スタッフの受け答えは良くても、長い時間待たされるだけで顧客の満足度は低下しやすいため、注意が必要です。
また、受付窓口間での連携が必要になった場合、顧客から確認した内容を適切かつスピーディーに次の窓口へ情報共有しなければなりません。そうしないと、顧客は同じことを2度聞かれて面倒だと感じてしまうでしょう。そういった二次対応をいかに正確かつスムーズにできるかどうかも、顧客離れを阻止し、自社のファンを増やすためにはとても重要なポイントです。
これら課題の解消に役立つチャットボットとは?
前述したような3つの課題を解消するために、近年「チャットボット(chatbot)」と呼ばれるツールを導入する企業が増えてきています。チャットボットとは、「チャット(chat)」と、ロボットを指す「ボット(bot)」を組み合わせたIT用語です。顧客からの問い合わせに対してロボットが自動的に答えることで課題解決を目指すプログラムのことです。
チャットボットの先駆けは、1960年代に開発された「ELIZA(イライザ)」という会話システムと言われています。人工知能が進化し、今ではApple社のSiriやGoogle社のGoogleアシスタントなどのAIスピーカーが一般家庭においても使われていますが、これらはチャットボットを応用し、音声による対応を可能にしたものです。
現在企業で多く使われているチャットボットには、AIを搭載したものと、搭載していないものがあります。用途も幅広く、顧客対応など社外向けのほか、社内ヘルプデスクでも利用されています。
「チャットボットコンシェルジュ」で実現する業務効率化
では、ここからはチャットボットを活用し、さらに進化させた「チャットボットコンシェルジュ」についてご紹介しましょう。チャットボットコンシェルジュは、株式会社電通国際情報サービス( ISID)が開発した業務支援システムで、チャットボットを「デジタル窓口」とし、社内システムをRPAで動かすことで自動化や効率化を図る新しいソリューションです。
たとえば、テレワークの始業・終業時にメールやチャットで上司へ報告するのと同時に、勤怠登録も必要があるなど、二重の作業が発生しているケースは少なくないでしょう。そのようなシーンでチャットボットコンシェルジュを導入すれば、定型フローのやりとりを行うだけで済みます。あとはRPAが勤怠管理システムを自動で登録してくれて、二度手間が解消されるのです。
また、プッシュ通知で月内の勤務時間が超過していることを知らせたり、休暇取得を勧奨したりする機能もあります。
従業員は、残業時間が36協定で定められた時間をうっかり超過しないよう促されるでしょう。上司の側も、従来のようにすべての部下の勤務時間を勤怠管理システムから逐一把握する必要がなくなります。双方がルーティン作業から解放され、時間の有効活用に役立ちます。
チャットボットコンシェルジュを実際に導入する場合は、まず、どの業務にスポットをあてて効率化したいのかを決め、業務フローを整理し、その後チャットボットなどを実装します。最初はトライアルとして利用し、見つかった課題を解決した上で本格的に導入します。
操作方法から活用するためのコンサルティングまで、きめ細やかなサポートを受けられるため、効率的な運用が可能です。
チャットボットコンシェルジュで解決できる企業の課題1
ではここからは、チャットボットコンシェルジュを活用して解決できる課題例を2つご紹介しましょう。
まず1つ目は、OutlookのメールとTeamsなどのコミュニケーションツールなどを併用していて、複数のソリューションを確認しなければならないような場合です。異なるツールを同時に運用していると、人の目だけではどうしても確認漏れが発生しやすくなるという課題があります。
そこでチャットボットコンシェルジュを活用すれば、Outlookでのメール受信があった際、連携してTeamsでのプロジェクトチャンネルにメンション通知が行われるようになります。新着情報の見逃しを防止できるほか、タイムリーに顧客対応が可能になって顧客満足度が向上するメリットも期待できるでしょう。
チャットボットコンシェルジュで解決できる課題2
社外のBox環境にファイルが格納された際、どのように社内のSharePointにファイル連携させるかも課題となります。毎回手動でファイルをコピーして同期したり、目視で確認したりするのは面倒な作業ですし、人の手を介するとミスも発生しやすくなってしまうからです。
チャットボットコンシェルジュを導入すれば、ファイルがRPAで自動連携できるようになります。また、Box上でファイルが追加・更新されるとTeamsでメンション通知がされるため、速やかな確認やレスポンスも可能になり、顧客満足度向上に寄与するでしょう。
まとめ
チャットボットコンシェルジュは、チャットボットとRPAを組み合わせ、異なるシステムとのスムーズな連携を支援するソリューションです。新着情報の確認漏れを通知により防止したり、ファイル連携など煩雑な作業を自動化したりできます。勤怠管理や種々の業務の効率化にも大いに役立つでしょう。