現代ビジネスにおいては、業務にパソコンなどのIT機器の使用が欠かせません。パソコンで会社の重要なデータを取り扱うため、サイバー攻撃などさまざまなリスクに備える必要があります。この記事では、パソコンのセキュリティについて、その必要性や対策方法を解説します。
セキュリティ対策の必要性
個人情報や機密情報の流出、マルウェアの感染、不正アクセスなど、パソコンの使用にはさまざまなリスクがつきものです。情報漏洩などのトラブルを防止するためにも、適切なセキュリティ対策を行わなければなりません。
個人情報の漏洩
企業が管理しているデータには、顧客や社員などの個人情報が含まれます。2022年に改正個人情報保護法が施行され、個人情報の漏洩が発生した場合の罰則が強化されるなど、個人情報保護への意識は高まっています。
個人情報が流出してしまうと、漏れた情報を悪意ある第三者が利用し、個人がさまざまな被害に遭うかもしれません。そのため、企業が管理している個人情報が流出した際には、膨大な金額の損害賠償を請求されたり、訴訟を起こされたりするケースもあります。
企業が個人情報保護法に基づいて情報を管理していなかったときは、1億円までの罰金が科されるため、管理体制にも注意しなければなりません。適切なセキュリティ対策を行わず、個人情報を流出させた企業として悪評が広がってしまうと、企業イメージのダウンにもつながります。
機密情報の流出
企業の秘密事項や重要事項を指す機密情報も、漏洩するとさまざまな問題が発生します。機密情報には、契約書や経費関係の書類といった社外秘の文書や、顧客に関する情報、経営戦略や非公開の経営・取引情報、未発表の研究データなどがあります。
これら機密情報が社外に漏れると、自社独自の研究データや製造技術などが競合他社に渡って、市場での優位性がなくなるかもしれません。また、漏洩した情報が協力会社との共同研究などによるものだった場合、協力会社からの信頼を失ってしまいます。
情報漏洩は従業員のミスや不正アクセスなどさまざまな原因から生じますが、企業の財産ともいうべき機密情報が社外に漏れることは大きな損失につながり、今後の経営状況に悪影響をもたらす重要な問題です。
マルウェアの感染
マルウェアとは、ウイルスやワーム、トロイの木馬など、パソコンに入り込んで問題のある動作を行うソフトウェアの総称です。マルウェアに感染すると、パソコンの起動時間が長くなったり、動作速度が遅くなったりします。勝手にウイルスメールを大量送信させられ、感染被害が拡大する事件も度々発生しているため、感染リスクへの対応は万全にしておかなければなりません。
マルウェアによっては、操作していない動きが突然始まったり、保存したデータが削除・改ざんされたりなど、感染により業務に大きな支障が生じるケースもあります。またマルウェアには、パソコン内部に第三者が侵入できるように働くものもあるため、パソコンの乗っ取りにも注意が必要です。
不正アクセス
不正アクセスとは、アクセス権限を持たない第三者が、インターネットを介して自社のサーバーやシステム、パソコンに不正に侵入する行為です。不正アクセスにより、さまざまな情報が盗まれたり改ざんされたりといった被害が生じます。
顧客リストなどの重要な情報が盗まれた場合、先述した個人情報や機密情報の漏洩と同じトラブルが発生します。また、公式サイトや運営しているECサイトなどがある場合には、サイト上の情報が改ざんされるリスクもあるため注意しなければなりません。
セキュリティ対策の具体例
主なセキュリティ対策としては、ソフトウェアの更新、適切なログインパスワードの設定、ウイルス対策用ソフトウェアの使用、従業員へのセキュリティ教育などがあります。システム上の強化はもちろん、パソコンの使い方などにも注意を向け、トラブルの発生を抑制しましょう。
ソフトウェアの最新状態への更新
OSやWebブラウザなどのソフトウェアは、常に最新の状態に更新しておくことが大切です。ソフトウェアに脆弱性(セキュリティホール)がある場合、サイバー攻撃の被害に遭いやすくなります。
ソフトウェアの更新には、新しく脆弱性が見つかった場合の修正プログラムも含まれているため、脆弱性への対策に有効です。メーカーからアップデートファイルが提供された場合は、脆弱性を改善できる修正版を中心に、早めに適用しましょう。
適切なログインパスワードの設定
企業のパソコンやサーバーへのアクセスに必要なログインパスワードは、連続する数字や同じ数字などの簡単な設定では、すぐに特定されるおそれがあります。パスワードを設定する際は、推測されないために英数字を混ぜて8文字以上、できれば15文字以上のものを設定するのがおすすめです。
また、同じIDやパスワードを複数のサービスで使いまわしていると、万一情報が漏れた場合に被害が大きくなるため、サービスごとに異なるパスワードを設定することもポイントです。IDとパスワードは、フィッシング詐欺やメモ書きなどから外部に漏れる場合もあるので、入力するサイトや書き留めておく場所などに気をつけなければなりません。
ウイルス対策用ソフトウェアの使用
パソコンがウイルスに感染してしまうと、そこから情報漏洩やシステムの不具合などさまざまな被害が生じます。ウイルスへの感染を防ぐための基本的な対策として、ウイルス対策ソフトは必ず導入しなければなりません。
ウイルス対策ソフトはさまざまな種類が発売されているため、使用するパソコンに対応しているか、必要な機能を備えているか、信頼性は充分か、といったことを調べたうえで検討・選定する必要があります。たとえばMicrosoft 365では、BitLockerやMicrosoft Defender、Windows Helloなどのセキュリティ機能を無料で提供しています。Microsoft 365のように強固なセキュリティ機能を有したサービスを利用すると、より安全にパソコンを使えます。
なお、ウイルスは次々と新しい種類が現れるため、ウイルス対策ソフトも常に最新の状態を維持することが大切です。
従業員のセキュリティ教育
セキュリティ対策においては、システム上の対策だけでなく、従業員のセキュリティリテラシーを高めることも重要です。サイバー攻撃などのトラブルの中には、実際にパソコンを使っている従業員の対応次第で防げるものもあるため、研修などを通して正しい知識や対応が身につくよう促しましょう。
「知らない相手から届いたメールや添付ファイルは開かない」「怪しいリンクをクリックしない」などの基本的なウイルス対策や、マルウェアの侵入が懸念される動作などを覚えられると、危険なマルウェアへの感染リスクが抑えられます。
また、場合によっては意図的に外部へ情報を漏らしたり、不正を行ったりする従業員もいるかもしれません。不正な行動を禁止して適正に管理するうえでも、従業員のセキュリティリテラシー向上は不可欠です。日々更新されるセキュリティ関連の情報を従業員に周知させるためにも、定期的なセキュリティ教育を実施しましょう。
ウイルス感染した場合の対策
もしパソコンがウイルスに感染した、あるいはウイルスの感染が疑われる場合には、被害拡大を防ぐため、すぐにネットワークから切り離しましょう。ネットワークにつなげたままパソコンを使用していると、ネットワークを介して周囲の端末にまでウイルスが広がっていきます。
その後、パソコンのウイルスを駆除するため、セキュリティソフトでパソコン内のウイルスをスキャンします。ウイルスに感染していた場合は、そのウイルス名を確認し、セキュリティソフトで駆除しましょう。
コンピューターウイルスの被害事例
コンピューターウイルスの被害は、世界のあちこちで発生しています。セキュリティ対策を行っていないと、いつ被害に遭うかわからないため、早めに対策を行う必要があります。参考として、以下ではウイルスによる被害事例をご紹介します。
【事例1】資料請求の情報が漏洩
実際にセキュリティソフトを導入していても、ウイルスの被害に遭ってしまった事例があります。ある企業では、社内パソコンにはセキュリティソフトを導入していたものの、従業員の私用パソコンまでには目が行き届いていませんでした。
従業員が業務用のデータをUSBメモリに入れて持ち帰り、自宅で仕事をした際、セキュリティソフトを導入していない私用パソコンを使ったことで、USBを介して企業用パソコンにウイルスが侵入。結果、顧客情報が漏洩する被害が生じています。
【事例2】企業のホームページの不正な改ざん
ウイルスには、プログラムやデータベースに不正な動作を行うタイプもあります。ウイルスによって、企業のホームページデザインが崩されたり、ホームページにウイルスを仕込まれたりするなどさまざまです。ウイルスが仕込まれたホームページを閲覧した人のパソコンにウイルスが侵入し、ネットバンキングの不正送金事件が発生するなど、甚大な被害が生じたケースもあるそうです。
まとめ
パソコンにはさまざまなリスクがあります。情報漏洩などで大きな被害が生じる前に、企業は適切なセキュリティ対策の導入が必要です。Microsoft 365なら、高度なセキュリティ機能を無料で使えます。HDDやドライブの暗号化、ウイルス対策、生体認証などの機能により、安全な環境で仕事を進められます。