業務効率化を進め、生産性を向上させたいと考えている企業経営者や担当者の方は少なくないでしょう。ただ、実際に行動へ移すとなると、何から手をつけてよいのかわからない、といった声も耳にします。そこで本記事では、業務効率化の前に確認すべきことや、業務効率向上を実現させるアイデアなどについて解説します。
業務効率を向上する前に確認すること
ツールの導入や作業の簡略化・自動化など、業務効率を向上させるアイデアは多々あります。ただ、いきなり改善の施策を実行に移すのではなく、事前に確認すべきことがいくつかあります。業務効率化への取り組みを始める前に、以下の事項を確認してみましょう。
社内の業務体制を把握する
まずは組織図や部門体制など、現状の把握から始めましょう。組織全体や部門の体制によって、業務効率が低下してしまうケースは少なくありません。同じ部門に必要性の高くない管理職が2つあったり、指揮系統が複数あったりするような状態では、業務効率の低下を招いてしまうおそれがあります。
また、それぞれの部門が、どのような業務を担当しているのかも把握しましょう。現状把握をきちんと行わなければ、何から手をつけてよいのかわかりません。現場へのヒアリングも実施しつつ、正確に現状を把握しましょう。
定量的に担当者の負担などを可視化する
それぞれの担当者が、どのような業務を担っているのかを把握したうえで、それらの可視化を行いましょう。同じ組織に属する者同士でも、意外と他部門の担当者が何をしているかまでは知らないものです。誤った認識をもっている可能性もあるため、どの担当者が何をしているのかを正確に把握しましょう。
そのうえで、各担当者に業務上どの程度の負担が生じているかも可視化します。主観や周りから聞いた話などではなく、定量的に可視化するのがポイントです。1週間の業務時間や生産数など、数値から負担を割り出して可視化しましょう。
また、リソースに偏りがないかどうかも併せてチェックしましょう。特定の業務や部門にリソースが偏りすぎていると、組織全体の業務効率低下や無駄なコストの発生につながります。
ボトルネックを発見する
「ボトルネック」とは、作業や業務を効率よく進めるうえで、進行を妨げている部分を指す言葉です。業務効率化を進めるには、業務におけるボトルネックを正確に抽出し、適切な改善案を打ち出さなくてはなりません。
一連の作業で無駄が発生していたり、属人化していたりする工程を確認しましょう。人員は足りているか、機械設備に問題はないかなども併せてチェックします。また、標準化できる作業があれば細かくまとめておくと、あとから改善案を打ち出しやすくなります。
改善施策やテンプレート化を検討する
この段階では、ここまでのプロセスで抽出した課題を、どのように改善すべきかを検討します。コストや導入までの時間、運用のしやすさなども考慮しつつ、最適解を導き出しましょう。
たとえば、品質チェックの作業が属人化しているのなら、ガイドラインやマニュアルの作成による手順の標準化が考えられます。トラブル対応の流れや手法も記載しておけば、業務に携わるすべての人員が、イレギュラーな事態にも対処できるようになるでしょう。
また、「営業担当がプレゼン資料の作成に毎回多くの時間を費やしてしまい、アプローチできる見込み客が少ない」といった課題があるとしましょう。このようなケースでは、資料のテンプレート化が考えられます。また、SFA(営業支援ツール)の導入を検討してみるのもよいでしょう。
改善施策を実行する
続いては、打ち出した改善案を実行するプロセスです。スムーズに施策を進めるため、事前にスケジュールを組んでおくとよいでしょう。スケジュールを組む際は、責任者や担当者も一緒に決めておくと、よりスムーズに進められます。
場合によっては、改善案を外注したほうがよい結果をもたらすことも考えられます。改善案を実行に移したことで、特定部門のリソースが少なくなったり、一時的に業務効率が低下したりすることも考えられるため、外注も視野に入れて検討するとよいでしょう。
効果を検証する
業務効率改善の施策を実行したら、そこでおしまいではありません。改善策を実行したことで、当初の課題を解決できたか、望んだ成果が得られたかなどを検証しましょう。
このプロセスを怠ってしまうと、改善案の実行により成果を得られているのかどうかが判断できません。無駄な施策を継続してしまうおそれもあるため、検証のプロセスを忘れないよう注意が必要です。
検証の結果、望んだ成果を得られていなければ、その原因を分析し、再度改善策を打ち出して実行します。そうしてPDCAサイクルを回しつつ、当初の目標へ着実に近づけていきましょう。
業務効率向上のアイデア
ここからは、業務効率向上につながる具体的なアイデアをいくつかご紹介します。すべてを試みるのもよいですが、業務の流れや取り組み方が大きく変わる可能性もあるため、1つずつ試していくとよいでしょう。
SaaSツールを導入して効率化
「SaaSツール」とは、オンラインで導入・運用できるツールです。現在では、業務効率化に役立つさまざまなSaaSツールがリリースされています。代表的なものとしては、タスク管理やプロジェクト管理、スケジュール管理、顧客管理ツールなどです。
また、コミュニケーションツールも業務効率化を実現できるツールのひとつです。特にチャットや通話、ファイル共有などの機能を有する「Microsoft Teams」は、多くの企業で導入されています。SaaSツールならオンラインで利用を始められるため、運用までの時間を大幅に短縮できるのも魅力です。
Excelでマクロを組む
Excelのマクロは、作業を自動化できる機能です。Excelで実行した操作を記録させることで、次回以降、記録させた処理を自動で実行してくれます。
データの集計や分析をはじめ、データ入力などさまざまな業務の自動化が可能です。作業の自動化と聞くと難しそうな印象を抱くかもしれませんが、設定自体は全く難しくありません。
設定はExcel上で行えるうえ、プログラミングに関する知識や技術も不要です。インターネット上でリサーチすれば、マクロ設定に関して言及したWebサイトがいくつも見つかります。そのようなWebサイトを参考にし、マクロ機能を有効活用してみましょう。
カスタマーサポートを外注する
一般消費者や顧客からの電話対応、クレーム対応などは時間をとられやすい業務の代表格です。このようなカスタマーサポート業務を外注すれば、従業員が主力業務に注力でき、コスト削減にもつながります。
カスタマーサポートの請負をしている企業はいくつもあるので、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。顧客対応のプロに応対を任せられるため、対応品質の向上も望めます。外注先を選ぶ際は、委託できる業務の内容・コスト・クオリティ・セキュリティ体制などをチェックしましょう。
データをクラウド化してテレワークに対応する
データをクラウドで管理できる環境を整えれば、テレワークに対応できます。従業員は自宅から自由にデータへアクセスでき、業務効率化も進みます。アクセス権限を適切に付与すれば、第三者にデータを改ざんされたり、盗まれたりといったリスクも抑えられます。
また、テレワークに対応していることは、人材採用の場において自社の強みとしてもアピールできます。「幅広く優れた人材を対応したい」「働き方改革を進めたい」といった企業にもおすすめです。
資料をテンプレート化する
プレゼン資料やコンサル資料などを担当者が毎回作成するのは、時間がかかりすぎます。1人の担当者にかかる負担も増加し、業務効率の低下も招きかねません。
こうした資料は可能な限りテンプレート化することで、資料作成の手間と時間を大幅に軽減できるでしょう。資料の作成にかかる時間を短縮できれば、その分リソースに余裕が生まれ、担当者もほかの業務に注力できるようになります。
メール文章などをテンプレート化する
法人向けの営業メールやリピーターに送るメールでは、毎回同じメッセージを使用するケースが少なくありません。その都度入力するのは手間がかかるため、可能な部分はテンプレート化しておきましょう。
メールソフトやメールサービスの中には、簡単にテンプレート化ができる機能を備えたものもあります。文章や単語を登録し、必要に応じて簡単に呼び出せるため便利です。このような機能を使いこなし、業務効率化を実現させましょう。
まとめ
アイデア1つで業務効率化は可能です。まずは組織や部門の体制、業務内容などを把握し、1つずつ課題を抽出していきましょう。そのうえで具体案を策定して実行に移し、PDCAサイクルを回しつつ業務改善を進めます。今回ご紹介した効率化のアイデアはあくまで一例ですが、どれも効果が期待できます。ぜひ今後に役立ててみてください。