製品やサービスの創出を通じて付加価値を生み出す企業にとって、生産性向上は最も重要な経営課題のひとつです。生産性を高めるためには、その定義を明確に理解し、実際のマネジメントやオペレーションに落とし込まなくてはなりません、そこで本記事では、生産性の定義や業務効率化との違い、具体的な施策などについて解説します。
生産性向上とは?
「生産性」とは、経営資源の投入量に対する産出量の割合を示す指標です。企業は人材や資金、原材料、生産機器、情報機器、知的財産など、さまざまな経営資源を活用して製品やサービスを創出します。この経営資源の投入量に対し、生み出した生産物の数量や重量、付加価値額などを定量的に表した指標が生産性です。
生産性は事業活動による成果をリソース投入量で割った数値となるため、数式で表すと「生産性=産出量÷投入量」となります。そして、この投入量の値に労働者数や労働時間を代入することで算出されるのが「労働生産性」です。労働生産性は従業員一人あたりが生み出す成果の指標であり、「労働生産性=産出量÷労働投入量(労働者数や労働時間)」という数式で表せます。
組織全体における生産性を高めるためには、従業員一人あたりの労働生産性の向上が不可欠です。しかし、国内の労働生産性は非常に低く、「公益財団法人 日本生産性本部」の調査によると、日本の一人当たりにおける労働生産性はOECD加盟38ヶ国中で28位となっています。企業が継続的に発展していくためには、いかにして最小のリソースで最大の成果を創出する生産体制を構築するかが重要といえるでしょう。
業務効率化との違い
生産性向上と業務効率化は同義の概念として扱われがちですが、その定義は明確に異なります。先述したように、生産性は経営資源の投入量に対する成果を定量化した指標です。業務効率化は、業務プロセスの見直しによる作業時間の短縮、書類の電子化による経費削減、クラウド活用による能率化など、既存業務の改善や変革を指します。
そして、業務効率化に取り組む本質的な目的のひとつが生産性の向上です。たとえば、業務のデジタル化によって従業員一人あたりの労働時間を短縮し、なおかつ同等以上の成果を創出できれば労働投入量の削減となり、労働生産性の向上を意味します。生産性向上と業務効率化の定義は異なるものの、それぞれが深く関わり合う概念といえます。
なぜ生産性の向上が重要なのか
近年、さまざまな業界でDXの実現が喫緊の経営課題となっています。DXの本質的な目的はデジタル技術の活用による経営改革です。それはデジタル技術を用いて生産体制や労働環境に抜本的な変革をもたらし、生産性を向上することと言い換えられるでしょう。そして、DXの実現が急務となっている背景にあるのが「労働人口の減少」と「グローバル化による競争の激化」です。
労働人口の減少
国内の総人口は2008年の1億2,808万人を頂点として下降の一途を辿っています。高齢化率も年々上昇し続けており、2021年9月に総務省が発表したデータによると、総人口に占める高齢者の割合は29.1%と世界で最も高い水準となっているのが実情です。
同時に生産年齢人口も1992年の69.8%をピークに減少し続けており、国立社会保障・人口問題研究所は2029年に生産年齢人口が7,000万人を下回ると推測しています。このような社会的背景から多くの業界で人材不足が深刻化しており、足りない労働力を補うためにDXの実現による生産性向上が求められているのです。
グローバル化による競争の激化
インターネットの普及によって国境の境目が希薄化しており、グローバル市場における競争性は激化の一途を辿っています。冒頭で述べたように、日本の一人当たりにおける労働生産性はOECD加盟38ヶ国中で28位と決して高いとはいえません。グローバル化が加速する現代市場のなかで競争優位性を確立するためには、生産体制の抜本的な改革による生産性向上が不可欠といえるでしょう。
生産性向上のために実施したい4つの取り組み
組織全体における生産性向上を実現する取り組みとして、4つの施策が挙げられます。それが「業務改善」「労働環境の改善」「ITツールの活用」「補助金・助成金の活用」の4つです。
業務改善
先述したように、業務効率化に取り組む本質的な目的のひとつは生産性の向上です。生産性を向上するためには、オペレーションにおけるムダやムラを可能な限り排除し、生産体制の効率化を図る必要があります。そのためには、オペレーションの現状を客観的な視点から認識し、課題や問題点を把握しなくてはなりません。
そこで重要となるのが業務プロセスの可視化です。たとえば、フローチャートやマインドマップなどを用いてオペレーションを可視化できれば、課題や問題点が明確になり、どのような業務改善が必要なのかを具体的な言語や数値に落とし込めます。すると役割分担や優先順位を適切に設定できるため、部門やプロジェクトチーム単位での業務効率化が期待できます。
労働環境の改善
生産性を向上するためには、いかにして従業員のパフォーマンスを最大化するかが重要な課題です。人的資源は企業にとって重要な経営資源のひとつであり、人材マネジメントの最適化は組織力を強化する上で欠かせない施策といえるでしょう。したがって、従業員のモチベーションやエンゲージメント、ロイヤルティなどの向上を促す労働環境を整備しなくてはなりません。
そのためには、テレワーク制度やフレックスタイム制を取り入れるなど、ワークライフバランスの充実に寄与する労働環境の構築が求められます。しかし、こうしたニューノーマル時代の労働環境では、従業員の勤務態度や労働意欲といった情意考課が不明瞭になります。公正な人事評価が困難になるため、人事評価制度の見直しや再整備といった施策も必要となるでしょう。
ITツールの活用
組織の生産性を総合的に高めるためには、ITツールの活用が欠かせません。とくに重要となるのが「Microsoft Azure」や「Microsoft 365」など、クラウドコンピューティングの導入です。たとえば、コラボレーションツールやグループウェアなどを活用し、パブリッククラウドをベースとしたデジタルワークプレイスを整備できれば、効率的かつ生産的なテレワーク環境を整備できます。
また、ワークフローシステムを導入すれば、申請・承認・決裁業務を自動化し、それに伴ってペーパーレス化によるコスト削減にもつながります。その他にも、RPAによる定形業務の自動化、CRMで顧客情報の統合管理、PIMを用いた商品情報の一元管理など、ITツールの積極的な活用によって組織全体の生産性向上が期待できます。
補助金・助成金の活用
国の行政機関はDXやクラウド活用などを推進すべく、さまざまな補助金や助成金を支給しています。たとえば、代表的な補助金として挙げられるのが、経済産業省による「IT導入補助金」です。IT導入補助金は、生産性向上を目的としてITツールを導入する際に経費の一部が補助される制度です。さまざまな業種の中小企業・小規模事業者が申請可能で、2021年のIT導入補助金では最大450万円の費用補助を受けられました。
その他にも、労働環境の変革によって人材の確保・育成に取り組む企業を助成する「人材確保等支援助成金」、最低賃金の引き上げや設備投資の一部を助成する「業務改善助成金」といった制度もあります。こうした補助金や助成金を活用することで、経営体制や労働環境に変革をもたらす一助となります。とくに大企業のような多くの資金調達手段をもたない中小企業は、積極的に利用すべき制度といえるでしょう。
まとめ
生産性は経営資源の投入量に対する産出量の割合であり、「生産性=産出量÷投入量」の数式で表せます。生産性を高めるためには、いかにして最小のリソースで最大の付加価値を創出するかが重要です。Microsoft AzureやMicrosoft 365などのデジタル技術を積極的に活用し、生産性向上に取り組んでみてください。