リモートワーク環境下では、従業員がどのように業務へ取り組んでいるか把握できないため、監視の必要性を感じている経営者や管理者も少なくないでしょう。ただ、リモートワークの監視にはさまざまな懸念点もあるため注意が必要です。本記事では、リモートワークを監視する必要性の有無や懸念点、管理に役立つツールについて解説します。
リモートワークで監視してしまう理由
リモートワークの様子を監視してしまう理由として、従業員がきちんと業務に取り組んでいるかどうかをチェックしたい心理が挙げられます。リモートワーク環境下では、従業員が働いている様子を見られません。そのため、サボらずきちんと仕事をしているか、監視したくなるのだと考えられます。
また、不正や情報漏えいを防止するため、監視を行うケースも考えられます。不正や情報漏えいにつながる行為は、組織を窮地に追い込むリスクがあるため、監視したくなる気持ちは理解できなくもありません。
どのように業務へ取り組んでいるのか、長時間労働をしていないか、などをチェックする目的で監視するケースもあるでしょう。リモートワーク環境下では管理者の目が行き届かないため、従業員によってはだらしない服装で業務に取り組んだり、長時間労働をしたりといった可能性があるためです。
リモートワークの監視例
リモートワークの監視例として、キーログやアクセスの管理、キャプチャログなどが挙げられます。専用ツールの利用により、従業員がどのようなキー操作をしたのか、どこへアクセスしたのかを把握できるほか、操作しているパソコンの画面をキャプチャして保存できます。
また、カメラで監視する手法もあります。Webカメラを用いて定期的に撮影し、従業員がきちんとパソコンの前で作業しているかどうかをチェックする手法です。
そのほか、ソフトウェアやアプリケーションの稼働を監視できるツールもあります。ツールを利用すると、ソフトウェアが起動されているか、稼働状況はどうか、といったことのチェックが可能です。
リモートワークの監視による懸念点
リモートワークの監視により、業務への取り組み方や労働実態などをチェックできます。ただ、リモートワークの監視には、従業員がストレスを抱える、プライバシーの侵害につながるおそれがある、といった懸念点があるため注意が必要です。
心理的な負担
リモートワークの監視が、従業員の心理的な負担となる可能性があります。監視されている状況は、あまり気持ちのよいものではありません。たとえ仕事であっても、監視されているとなるとストレスが溜まり、モチベーションが低下するおそれがあります。
モチベーションの低下に伴い、パフォーマンスが下がるかもしれません。本来の力を発揮できず、生産性が大幅に低下する懸念もあります。
また、経営陣や上司に対して不信感を抱く可能性も否めません。監視されている状況を、「信頼されていない」と受け取るかもしれないためです。不信感が高まり続けると、仕事に対する意欲をなくし、離職につながる可能性もあります。
プライバシーの侵害
度を超えた監視は、プライバシーの侵害になるおそれがあります。たとえば、Webカメラで従業員の様子を常時監視するようなケースでは、過度に従業員のプライベートな領域へ踏み込むことになりかねません。
プライバシーの侵害には刑事罰がありませんが、従業員が訴えた場合、民事上の責任を問われる可能性があります。裁判でプライバシーの侵害が認められ、慰謝料を支払わなくてはならなくなる、といったことも考えられます。
過度な監視が行われている実態を、従業員がSNSなどで発信する懸念もあります。組織に不信感を抱き、SNSで情報を発信した結果、多くの人々に実態が知れわたり、企業としての信頼を失ってしまうかもしれません。こうなると、今後の採用活動にも暗い影を落とすことになるでしょう。
働き方の柔軟性低下
リモートワークのメリットは、柔軟性の高い働き方ができることです。だからこそ、家族の介護で自宅を離れられない方や、何らかの事情で出勤が難しい方などを採用できます。
しかし、過度な監視が行われる環境では、そうしたリモートワークのよさが機能しません。柔軟性の高い働き方を求めて働き始めた方も、実際にはそれが難しいと分かれば離職してしまう可能性もあります。
リモートワークの監視に代わる適切な管理
基本的にリモートワークの監視は推奨できませんが、適切な管理は必要です。管理をまったくしないとなると、労働実態を把握できず、さまざまな問題が発生するかもしれません。
監視は、従業員にストレスを与えるばかりか、柔軟な働き方も阻害します。だからといって何も対策をしないと、不正行為の発生や生産性の低下など、さまざまなリスクを招くおそれがあります。
監視を行わなくても、リモートワーク環境下における労働実態の把握や、生産性の維持・向上は可能です。監視ツールではなく、さまざまな管理ツールを活用すれば、従業員に心理的な負担を与えることなく適切な管理が実現します。
リモートワークの管理に使えるツール
リモートワークの管理には、勤怠管理ツールや情報共有ツール、セキュリティ対策ツールなどが有効です。各ツールに実装されている代表的な機能や、実現できることを理解しておきましょう。
勤怠管理ツール
勤怠管理ツールは、従業員の勤怠情報を一元管理できるツールです。労働時間を正確に把握できるだけでなく、有休や残業の申請・承認、シフト作成、出退勤情報の自動集計といった機能を備えたツールが一般的です。
ツールにより、スマートフォンにタップするだけで打刻できるものや、給与計算システムと連携できる製品もあります。このようなツールであれば、従業員の利便性が高まるだけでなく、管理者や経理担当の業務負担も軽減できます。
情報共有ツール
情報共有ツールの導入により、スムーズな情報共有が実現し、従業員の管理がしやすくなるメリットがあります。リモートワーク環境下では、必然的にコミュニケーションが不足してしまい、情報共有がうまくいかないケースも少なくありません。
情報共有がうまくいかないと、従業員個々の労働実態が把握しにくくなってしまいます。このような事態を回避するのに、情報共有ツールが役立ちます。
チャット形式でコミュニケーションをとれる機能や、タスク管理・進捗管理などの機能を備えたツールがおすすめです。チャットで速やかに情報を共有できるほか、個々のタスクや業務の進捗状況をひと目で把握できます。
セキュリティ対策ツール
リモートワークは管理者の目が行き届きにくく、セキュリティリスクが発生しやすい懸念があります。万が一、従業員の不正やミスなどで情報漏えいが発生すると、企業としての信頼を失いかねないため、セキュリティリスク軽減のためにも対策ツールの導入が必要です。
たとえば、リモートアクセスツールのなかには、端末にデータを残さない方式を採用したものもあります。このようなツールであれば、仮に端末の紛失や盗難が起きても、情報漏えいの心配がありません。また、マルウェア対策機能を備えたツールなら、マルウェア感染による情報の改ざんや漏えいを回避できます。
ログ監視機能を備えたツールも、不正アクセスや情報漏えいを防止でき、セキュリティ対策にも効果的ですが、使い方次第では監視色が強くなるため注意が必要です。ログ監視がいきすぎると、従業員の行動が丸裸になるため、不信感を強めるおそれがあります。
まとめ
リモートワークは過度に監視するのではなく、適切な管理によって不正防止や労働実態の把握を行いましょう。なお、Microsoft 365ならチャットやWeb会議が可能なTeamsも利用でき、リモートワークにおける業務効率化と適切な管理に役立つためおすすめです。