生産性の向上に成功した企業は、どのような取り組みをしているのでしょうか。また、生産性を高めるといっても、何を基準に生産性を測るべきなのでしょうか。本記事では、生産性の向上を実現した企業の事例や、生産性を分析する際の指標について解説します。
事例から見る生産性向上の取り組み
社内業務の生産性を向上させるにあたり、実際にどのような取り組みが有効なのでしょうか。以下では、生産性の向上に成功した企業の事例を解説します。
事例1.マニュアルで作業を共有・標準化し生産性向上
業務をマニュアル化して知恵や経験を蓄積し、社内で共有・標準化することにより生産性が向上します。マニュアル化による生産性向上に成功した企業のひとつが、家具や雑貨、衣料品、食品など幅広い商品の製造と販売を手がける専門小売企業のA社です。
同社は2,000ページにわたる店舗マニュアルを作成して、全店舗の運営方法を標準化し、店舗業務のあらゆるムリ・ムダ・ムラを排除することに成功しました。マニュアルに基づいて業務を行うことで無駄な作業がなくなり、定時退社率93.9%を達成するとともに、売上・利業利益も2006年からの9年間で2倍に成長を遂げたそうです。
このマニュアルには商品の陳列方法や接客、ハンガーの並べ方まで、業務に関するノウハウが図や写真とともに事細かく解説されています。これによって、それまで個人の経験や勘に頼っていた業務が仕組み化され、会社のノウハウとして共有できるようになりました。
事例2.稼働状況を見える化し課題の早期解決
製造業では、監督者が現場の状況を完全に把握するのが難しい場合もありますが、スマホやタブレットなどを活用すれば、生産設備の稼働状況を見える化できます。それにより、生産ペースが落ちている時間や設備停止の理由などを把握できるため、課題を早期に発見・解決でき、結果として生産性の向上につながるのです。
パイプ曲げ加工や板金加工などの製造業を営むB社では、スマホを活用した稼働状況の見える化により、従来の約20%もの生産性向上を実現しています。同社が導入したのは、エンジニアと連携して自社開発したスマホアプリです。これは、速度の変化を計測するスマホの「加速度センサー機能」を活用したもので、機械の動作部分にアプリをインストールしたスマホを取り付けておけば、アプリが上下・前後・左右の動きをトラッキングし、生産目標との乖離をリアルタイムで把握できます。
また、機械が長時間にわたって停止している場合は、自動的に作業が終了したと判断されます。何らかの理由によって機械が停止している場合も、作業者がスマホ画面をタッチし、材料交換や故障、清掃、メンテナンス、従業員への声かけなど、用意された項目の中から理由を選択することで、停止の時間や原因を記録・分析することも可能です。
事例3.コミュニケーションツールを導入しリモート環境向上
テレワークにおける主な課題としては、コミュニケーションに関するケースがほとんどですが、Microsoft 365を導入すれば、コミュニケーションに最適なテレワーク環境を構築できます。
Microsoft 365によってテレワークの生産性を向上させた企業のひとつが、幅広い企業向けに決済業務に関するソリューションを提供しているC社です。365アプリケーションのなかでも、ビデオ会議やビジネスチャットなどの機能が使えるMicrosoft Teamsを導入したことで、テレワーク中でもちょっとした業務連絡や社内会議、取引先との会議が可能になり、コミュニケーションが円滑化したといいます。また、共有サービスのMicrosoft SharePointを使えば、会議に必要な資料を画面上で共有できるため、対面での会議と同水準での情報共有ができているそうです。
事例4.RPAで業務を自動化し時間短縮・ヒューマンエラーを解消
手順の決まっている単純作業や大量のデータ処理といった定型業務を効率化するには、RPAの導入が効果的です。RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、これまで人間が行ってきた業務を、AIや機械学習などの技術を活用してコンピューターが代行できるようにする仕組みをいいます。
このRPAを導入して業務の自動化・効率化に成功したのが、大手電機メーカーを中心とする企業グループにて、人事・総務業務のシェアードサービスを担うD社です。同社は、顧客の増加に伴って取り扱うデータ量が急増し、処理リソースの不足に直面していました。そこで、社内業務の効率化を目指して2016年からRPAの導入計画を進め、入出金業務をはじめとするルーティン業務にRPAを導入します。
その結果、約9,000時間分もの工数が削減され、10人がかりで4時間かけて行っていた作業が、3人体制の3時間で完了するようになったそうです。さらに、コピペやタイピングのミスといったヒューマンエラーの減少にもつながりました。
事例5.システムをクラウド化し働きやすい環境を実現
システムをクラウド化してゼロトラストセキュリティを実現することによっても、働きやすい環境の整備と、それに伴う生産性向上が期待できます。ゼロトラストとは、文字通り「何も信頼しない」という前提に基づいたセキュリティ対策のことです。ネットワークを社内外で区別せず、すべての通信経路を暗号化したり、多要素認証などによってユーザー認証を強化したりします。
生産性200%を目指して早くからDXに取り組む食品大手のF社は、2014年からコミュニケーション基盤にMicrosoft 365を導入してクラウド化を進め、業務システムの80%以上を削減するという、システムの大幅なスリム化を達成しました。さらに2019年には、通常の365のパッケージに高度なセキュリティ機能を組み合わせた、Microsoft 365 E5 Securityの活用によってゼロトラストセキュリティを実践し、当時問題視されていたビジネスメール詐欺の被害防止にも成功しています。
これらの取り組みの結果、2020年度には1人あたりの年間総労働時間が、2013年度比で243時間減と大幅に短縮されました。また、ゼロトラストセキュリティによってサイバー攻撃のリスクを最小限に抑えたIT環境が整備され、生産性が高く安全を確保したうえでのテレワークが可能になったといいます。
事例からわかる生産性向上を成功させるためのポイント
ここまでご紹介してきた事例から見えてくる、生産性向上を成功させるためのポイントについて解説します。
作業を見える化する
生産性を高めるためには、作業を見える化する必要があります。業務プロセスが確立されていない場合、個人が独自のやり方で仕事にあたることになるため、人によって成果にばらつきが出たり、退職や異動で担当者がいなくなった場合、業務が回らなくなったりする可能性があります。こうしたリスクを回避するために、業務内容をマニュアル化し、社内でノウハウを共有・蓄積できるような体制を整備しておきましょう。作業手順が統一されれば、いつ・誰でも効率的に作業を行えるようになり、属人化を防げるため、企業の生産性を高められます。また、業務プロセスが可視化されていれば、PDCAを回して既存の手順のさらなる改善を図ることも可能になるでしょう。
ITやRPAを導入する
生産性向上には、ITツールやRPAの導入が有効です。特に業務プロセスやビジネスモデルの変革を伴うDXを進めるうえでは、ITの力は不可欠でしょう。これまで人間が行っていた作業をツールに代行してもらえれば、作業のスピードが高速化するうえ、ミスによる手戻りの発生を抑えられます。それによって労働時間が短縮されれば、空いた時間を売上や利益の向上に直結するような重要度の高い業務に割くことが可能となります。
職場環境を整える
職場環境は従業員の気分やモチベーション、ひいては企業の業績に影響を与えるものです。したがって、働き方改革に取り組んで働きやすい環境をつくることにより、従業員のモチベーションを高められれば、生産性の向上につながります。特にテレワークの導入は、通勤の必要がなくなることで満員電車のストレスから解放されるほか、通勤時間を有効活用することで仕事と育児・介護の両立がしやすくなるため、離職率の低下や生産性の向上が見込まれます。企業側にとっても、従業員に支給する交通費を削減できるというメリットがあります。
生産性向上のためのKPI設定
生産性向上に取り組むうえで気になるのが、どうやって生産性を測るのかという点ではないでしょうか。生産性は、おおまかには「生産量÷投資(人的・物的)」という計算式で割り出せます。また、投資する要素によって、生産性を測る指標にはいくつかの種類があります。主な指標として挙げられるのが、以下の3つです。
- 付加価値労働生産性:1人の従業員がどれだけ付加価値の高い仕事をしたかを表す(付加価値額÷労働量)
- 物的労働生産性:1人の従業員がどの程度の効率で商品やサービスを生産したかを表す(生産量÷労働量)
- 労働分配率:付加価値額のうち人件費の割合(人件費÷付加価値額×100)
付加価値労働生産性は、利益の最大化を追求する際に有効な指標です。一方の物的労働生産性は、商品・サービスを対象とした指標であるため、品質管理や設備投資を判断する際に役立つとされています。
まとめ
企業の生産性を高めるには、作業の見える化やITツールの導入、職場環境の改善といった取り組みが効果的です。これから本格的に改革に動き出すのであれば、テレワークにおける円滑なコミュニケーションやセキュリティの強化を叶えてくれるMicrosoft 365を、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。