コロナ禍をきっかけに急速に浸透したテレワークですが、ポジティブな効用とともにさまざまな弊害も報告されています。たとえばテレワークでは、オフィス勤務とは異なり、口頭で気軽にやり取りできないため、コミュニケーション不足への対策が必要です。そこで本記事では、テレワーク移行時の問題点とその対応策をご紹介します。
テレワークに移行する際に起きる弊害
新型コロナウイルスの感染予防対策の一環として、多くの企業が導入したテレワークですが、その運用においてはいくつかの弊害が報告されています。以下では、テレワーク移行時に生じる主な課題について解説します。
コミュニケーション量の低下
テレワークへの移行で起きる代表的な問題として知られているのが、コミュニケーション量の低下です。たとえば、サイボウズ株式会社が実施した「在宅勤務者3,000人に聞く『テレワークのコミュニケーション』調査」のデータによれば、在宅勤務時の同僚とのコミュニケーション時間は、業務に関する内容では「1日30分未満」が6割、業務に直接関わらないものでは「0分」が4割を占めたそうです。
テレワーク環境においては、オフィス勤務時とは異なり、ほかの社員と気軽に会話する機会がありません。これによって、業務上必要な情報共有や部下の仕事の進捗管理がしづらくなったり、社員間のコラボレーションによるイノベーションが生まれにくくなったりする問題が指摘されています。
また、こうしたディスコミュニケーションが社員の精神衛生に悪影響を及ぼすこともあります。特に1人暮らしで生活している人などは、在宅勤務が長引くと孤独感が高まり、体調を崩してしまう事例もあるようです。テレワークへ移行したことによって、気分転換やストレス解消のために、雑談が非常に重要な役割を果たしていたことを痛感した人も多いことでしょう。
人によっては業務効率が下がる
テレワークで通勤時間が減り、業務効率が上がったという人もいれば、むしろ下がったという人もいます。テレワークで業務効率が下がる理由はさまざまです。たとえば「上司や同僚などが周囲にいないと、気が緩んでしまう」という人もいるでしょう。また、「自宅や会社のネットワーク環境が悪くて、自社のシステムにうまくアクセスできない」「アクセスできても動作が重い」といった、ICT環境の不整備が問題の場合もあります。
テレワークは一般的に、家庭持ちの社員に優しい働き方といわれていますが、逆に家族の存在が仕事の集中力を削いでしまうこともあります。自宅内に書斎などのワーキングスペースがない場合はなおさらで、わざわざ外出してコワーキングスペースなどで仕事する人もいます。
また、生活空間で仕事をすることにより、仕事時間と私生活の切り替えがうまくできない人もいるようです。それゆえテレワークで業務効率を上げるには、仕事環境の整備はもちろん、運動やコミュニケーションなど気分転換の機会を意図的に確保することも重要です。
セキュリティ対策を強化する必要がある
テレワークへの移行において、システム担当者を大きく悩ませる問題のひとつがセキュリティ対策です。テレワークを実施する際には当然ながら、自宅をはじめとする社外から社員が会社のネットワークやデータにアクセスする必要があります。しかし、多種多様かつ多くの場所・デバイスからの外部アクセスに対してネットワークを開くことは、セキュリティリスクを引き上げることと同義です。
とりわけ企業によっては、社員にテレワーク用の端末を配布せず、社員の私物端末の利用(BYOD)を許可している場合もあるでしょう。しかし、もともと社員のプライベート端末のセキュリティ管理を会社が行っていたわけもなく、もしその端末がすでにマルウェアに感染などしていた場合、企業のネットワーク全体が大きな危険に晒されてしまいます。
それゆえテレワークを実施する際は、VPNなどのセキュアな接続方法を確保するとともに、企業のシステムにつながる各端末の安全性についても配慮しなくてはなりません。また、社外での業務データの扱い方や、サイバー被害を避ける方法などについて従業員に注意喚起し、人的ミスによる情報漏洩リスクに備える必要もあります。
テレワークに移行した際にコミュニケーションを活性化するには
上記のようにテレワーク環境においては、社員がバラバラの環境で仕事をすることによる弊害がいくつか存在します。続いては、こうした弊害の中から特にコミュニケーションの問題をピックアップし、テレワーク環境でのコミュニケーションを活性化する方法をご紹介します。
ランチMTGを導入する
テレワーク下でのコミュニケーションを活性化する方法としては、「ランチミーティング(ランチMTG)」の導入がまず挙げられます。
テレワークにおいては、職場の同僚と何気ない会話を楽しむ機会が激減してしまいます。オンラインミーティングをする機会があっても、業務上必要な会話に終始してしまい、人間関係が無味乾燥になってしまうことも多いようです。
そこでおすすめなのが、ランチMTGの実施です。Microsoft Teamsなどのオンライン会議システムを利用して、お昼休みにランチをともにし、社員同士で親交を深める機会を用意するのです。
ここで重要なのは、業務連絡など仕事時間に本来すべき話題は意識的に避けることです。ランチMTGの目的は、あくまで社員同士で親睦を深めることなので、話題提供をするにしても社員個々人の人となりを知れるようなトピックにしましょう。ノリとしては業務上のミーティングよりも、むしろリモート飲み会のイメージです。
こうした雑談を通してコミュニケーションが活性化すれば、社員同士がお互いのことをよりよく理解し、テレワーク特有の孤独感や疲れをリフレッシュできます。ただし、ランチタイムは本来的に社員の自由時間でもあるので、「参加させられている」という意識を持たれないように、開催の頻度は多くても週に数回程度にとどめるなど、社員が前向きな気分で参加できるよう配慮してください。
オンラインオフィスツールを導入する
oViceなどの「オンラインオフィスツール」を導入することも、コミュニケーションを活性化する方法のひとつです。オンラインオフィスツールとは、Web上にオフィス空間を再現する仮想化ツールで、社員もそのバーチャルオフィス上で自身のアバターを自由に操作できます。
ほかの社員と話したいときは、自分のアバターを目的の社員のアバターに近づけて声をかけると、アバターの向きや距離に応じた声量が相手に届きます。それゆえ仕事中もほかの同僚間の会話がなんとなく聞こえるなど、オフィス勤務時と近い感覚で働けます。
また、バーチャル上とはいえ、「相手がそこにいる」という感覚が強まるので、1人きりで仕事をしている感覚を薄めることが可能で、メールなどと比べて気軽に話しかけやすくなります。
チャットツール(プラットフォーム)を導入する
TeamsやChatworkなどのチャットツールを活用することもおすすめです。メールだと、かしこまった定型文から始めなければならないという意識が働いて、連絡が億劫になりがちですが、チャットツールならばちょっとしたことでもチーム間で情報共有や相談をしやすくなります。ただし、コミュニケーションを気にしすぎるあまり、本来の業務が阻害されては本末転倒なので、即レスを強制しないなど運用上のルールを共有しておきましょう。
また、チャットツールにはタスク管理などの機能もついているので、業務効率化や管理職のマネジメント業務の円滑化にもつながります。「口頭で話したほうが理解を深めやすいことはオンライン会議システムでWebミーティングをする」など、柔軟にコミュニケーションツールを使い分けることも大切です。
まとめ
本記事ではテレワーク移行に伴う弊害として、主にコミュニケーションの問題について取り上げました。テレワークにおいては、何気なく相手に声をかけることが難しいので、コミュニケーションを活性化するための積極的な取り組みが必要です。本記事を参考に、テレワーク下においてもコミュニケーションが活発な職場を目指してください。