業務効率改善は多くの企業担当者が目指しているものですが、どのようにするか、何から始めるか、といった点でつまずいている場合が多いようです。ここでは、効率化を進めるうえで押さえておきたいポイント、活用できるおすすめのツールを紹介します。そもそも、なぜ業務効率改善が重要視されているのか、という点も解説しています。
業務効率改善が急速に重要視される理由
企業がさらに成長を続けていくため、業務効率化を図ることは重要です。時間やコストの無駄を省けば労働環境が改善され、人的資源の確保にもつながるでしょう。加えて、生産性向上のために時間もリソースも有効活用できる、というメリットもあります。
さらに、近年は業務に対する取り組み方や、企業を取り巻く環境の変化などから、業務効率改善が早急に必要とされています。その理由を具体的に見ていきましょう。
データドリブン経営の普及
収集したデータの分析結果に基づく経営手法、データドリブン(Data Driven)経営が注目を集めています。経営判断を下す際、従来は長年培った経験や勘に基づく方法が多く用いられてきました。しかし、主観を含むため、経営陣の感覚と大きく異なる顧客のニーズには対応しきれないこともあります。
データドリブン経営では、行動履歴など顧客に関する膨大なデータを分析し、その結果から客観的に判断を下して戦略を立てます。主観を排除することで大勢の特性を把握しやすくなり、多種多様かつ変化も早い顧客のニーズを捉えて、売上アップにつなげるのが目的です。
データドリブン経営によって、より効果的な戦略を立てやすく、業務効率化のアイデアを得られるようになります。ただし、この手法を取り入れるためには、効率的に大量のデータを収集・分析し、意思決定に活かす体制を整えなければなりません。膨大なデータを扱う環境整備や人材育成などに着手する必要があるでしょう。
テレワークの普及
働き方改革の推進や新型コロナウイルスの影響もあり、在宅ワークをはじめとするテレワークの導入率が増加しています。これにより、業務効率化にも注目が集まるようになりました。
時間や場所を選ばないテレワークは、従業員にとっての働きやすさや、交通費などのコストカットを実現できるといったメリットがあります。非常時においても事業の継続が望めるのも強みです。
しかし、テレワークを導入し、さらに定着させていくには、ルールやシステムなどの整備や構築が欠かせません。業務内容や進め方を改めて見直し、体制を整え、効率化を進めることが求められます。
SaaSツールの普及
かつてはソフトウェアをパソコンにインストールするのが主流でしたが、インストール不要のツールが普及し始めました。それが、インターネット上にてソフトウェアを利用できるSaaSツールです。SaaSは「Software as a Service」を略したもので、「サービスとしてのソフトウェア」と訳すことができます。日本では「サース」「サーズ」と読みます。
導入が比較的容易で、システム開発・運用などにかかる負担を軽減できるのがSaaSツールの特徴です。加えて、場所も端末も選ばず利用できるため、リモートワークや非対面での業務活動にも活かせます。
SaaSツールの利用率やサービスが増加し、データの収集・分析・管理、業務効率化などに活用できる製品も多く提供されるようになりました。業務効率化に着手しやすいツールが充実してきたことも、業務効率改善への注目度が上がった理由と言えるでしょう。
企業オフィスで業務改善するポイント
業務効率を改善するためには、現状を把握して問題点を明らかにし、対策を講じていく作業が必要です。ただし、課題を一気に解決しようとするとかえって負担が増えたり、仕事のクオリティが下がったりする恐れがあります。
成果を上げられるよう、ポイントを絞って、段階的に効率化を進めていくのがおすすめです。押さえておきたいポイントを解説していきます。
属人性の排除
効率良く仕事を回していくためには、特定の担当者でなければこなせない業務がある、という状況は避けるべきです。担当者不在の場合に業務が滞ってしまうほか、離職した際には引き継ぎがうまくいかず、新たな体制を整えるのに時間がかかる恐れもあります。
代わりの利かない存在である、ということを誇りに感じる人もおり、それは決して悪いことではありません。しかし、常に一定水準以上の質を保ちながら効率的に業務を進めていくには、どの従業員がやっても同じ成果を出せる体制を整えることが大切です。
マニュアルを整備する、その情報を共有するなどして、属人性の排除を目指しましょう。特定の人材だけで特定の業務に携わる閉鎖的な環境に陥るのを防ぎ、新たな仕事にチャレンジしやすくなることで人材育成にもつながります。
顧客管理の効率化
顧客データは、名前や連絡先だけに留まらず、取引や購入の履歴、ニーズの傾向など詳細な内容を盛り込むと有効に使えます。しかし、情報量が多くなるため、新規登録や更新、検索に時間がかかってしまう恐れがあります。
スムーズに顧客管理や情報検索を行うべく、CRMツールなど専用ツールを活用するといった工夫をしましょう。更新した場合は瞬時に反映・共有し、時間や場所を選ばず情報にアクセスでき、他のツールとの連携がスムーズなシステムがおすすめです。
インサイドセールスの効率化
内勤型営業を意味するインサイドセールスは、取引先を訪問せずに行う営業のことです。新型コロナウイルスの影響を受けて、取り入れる企業も増えています。移動にかかる時間・コストを節約できるほか、限られた人数で多くの顧客を担当しやすいというメリットがあります。
インサイドセールスは主に顧客・見込み客へのアプローチを担当し、対面で営業するフィールドセールスとの分業によって効率的に売上アップを図れます。インサイドセールスを有効活用することも、業務効率化のために重要と言えるでしょう。
そのためには、顧客情報の管理に加え、担当者間の情報共有は必須です。専用ツールを利用するほか、アウトソーシングやサポートサービスを利用して情報を管理し、戦略を立てていくことをおすすめします。より効果的なアプローチのタイミングや、アプローチ方法を考えやすいシステムを選びましょう。
CRMによるマーケティング戦略の再現性向上
売上がアップしたとしても、一時的なもので終わらせてしまわないよう、持続的に利益を上げられる仕組みを整えることも大切です。どんな手法が功を奏したのか正しく把握すると、再現性の高い戦略を立てられます。
過去のデータや、戦略がもたらす効果をチェックできる、CRMツールなどを活用しましょう。ちなみに、CRM(Customer Relationship Management)は「顧客関係管理」「顧客関係性マネジメント」などを意味します。購買履歴や行動データなど顧客の情報を管理・分析し、その結果に基づいて効率的な営業に役立てる手法です。
専用ツールを使うことで、効果的だったアプローチ方法や、改善点が割り出しやすくなります。営業活動を充実させたい場合は、営業サポートに特化したシステム、SFA(Sales Force Automation)も含むツールを選びましょう。
おすすめの業務効率化ツールは何か
業務効率化に活用できる、おすすめのツールを紹介します。解決したい課題、力を入れたいポイントなどに応じて、自社に合ったものを選びましょう。
【SFA/CRM】Salesforceクラウド
Salesforce(セールスフォース)クラウドはSaaSツールの先駆け的存在で、中小企業から大手企業に至るまで、15万社以上で利用されています。
営業支援、顧客管理を一括で行えるため、SFAやCRMによる業務効率化におすすめのツールです。モバイルアプリが利用できるのも特徴で、いつでもどこでも最新の情報にアクセスできます。
使い方に合わせてカスタマイズしやすく、他のサービスとの連携も可能です。営業や承認プロセスの簡略化など、効率的かつ合理的に業務を進められるだけでなく、目標達成度や課題の把握もサポートします。
Salesforceを利用して社内での情報共有を進め、営業行動と進捗状況を可視化し、利益アップにつなげた活用例が数多くあります。
【タスク管理/コミュニケーション活性化】Teams
Microsoft社が提供するTeams (チームズ)は、タスク管理やコミュニケーション活性化により、業務効率化を図りたい場合に最適です。チャットや通話、Web会議を簡単に行えるうえ、時間やデバイスを問わずにアクセスでき、情報共有もスムーズに行えます。
Office 365と連携させると、わざわざアプリを起動させることなく、WordやExcel、PowerPointなどの必要なファイルを開け、編集も行えます。普段からOffice 365を利用している場合には特におすすめです。
活用例としては、Web会議を活用してコミュニケーションが円滑になった企業が挙げられます。テレビ会議用システムのリースにかかっていたコスト削減も実現できました。ほかにも、Teamsを利用して相談や提案、ディスカッションを行い、さらにその内容を記録した文書もTeamsで共有している企業もあります。
Office 365を利用していなくても使えるツールで、利用開始の手続きも手間がかかりません。業務効率化に向けた新たな取り組みのなかでは、比較的気楽に試しやすいのも魅力です。
まとめ
業務効率改善をする際には、漠然と改善するのではなく、現在抱えている最も大きな課題、今後目指したい方向性などを明確にしましょう。効率化をサポートする専用ツールを利用すると、さらに有効な取り組みができます。なかには無料トライアルできるツールもあるため、試しに使ってみて自社に合ったものを選ぶのもおすすめです。