近年、ファイルやシステムのバックアップ環境をクラウド上に構築する企業が増加傾向にあります。企業にとって事業継続性の確保は非常に重要な経営課題であり、そのためにはバックアップ環境の構築が不可欠です。本記事では、クラウド環境にファイルをバックアップするメリットや、おすすめのソリューションについて解説します。
ファイルのバックアップをクラウドで行う「クラウドバックアップ」とは?
クラウドバックアップとは、クラウド環境に構築されたサーバーやストレージにファイルを複製・保管することを指します。企業にとって「情報」は、「ヒト」「モノ」「カネ」に次ぐ第4の経営資源であり、事業の継続性を確保するためにはITシステムの冗長化やバックアップ環境の整備が不可欠です。これまでバックアップ環境の構築は、オンプレミス環境で物理的なハードウェアを用いて実行するのが一般的でした。
しかし、近年はクラウドサービスが加速度的に普及しており、ファイルやシステムのバックアップ環境をクラウド上に構築する企業が増加傾向にあります。総務省の調査では、クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は68.7%であり、なかでもクラウド化している領域として最も多かった回答が「ファイル保管・データ共有」の分野です。
バックアップ環境のクラウド化が推進されている理由として挙げられるのが、ハードウェアの導入費用を大幅に削減できる点です。クラウド上にバックアップ環境を構築する場合、物理的なサーバーやネットワーク機器などが不要なため、オンプレミス環境と比較して導入費用を大幅に削減できます。現代ではクラウドファーストが当たり前となりつつあり、今後さらにバックアップ環境のクラウド化が進展すると予測されます。
クラウドバックアップを利用するメリット
クラウド上にバックアップ環境を構築するメリットは、ハードウェアの導入費用を削減できるだけではありません。その他にも以下のようなメリットを組織にもたらします。
- バックアップを自動化できる
- 運用コストを削減できる
- BCP対策につながる
- ランサムウェア対策ができる
- 容量を簡単に増やせる
- バックアップを自動化できる
企業の基幹系システムやファイルサーバーには、会計データや人事データ、製品開発情報や顧客情報などの重要データが保管されています。万が一、ネットワーク障害やサーバーダウンによってデータが破損・消失した場合、業務に支障をきたすのはもちろん、最悪の場合は事業停止にまで追い込まれる可能性も否定できません。
オンプレミス型のITインフラにバックアップ環境を構築する場合、エンジニアやプログラマーなどの人材がデータを継続的に複製・保管する必要があります。クラウドコンピューティングにはバックアップ用バッチファイルを自動生成するサービスもあるため、情報システム管理部門の業務負担を大幅に軽減できます。
運用コストを削減できる
バックアップ環境のクラウド化はハードウェアの導入費用を削減できるだけでなく、運用コストの削減にもつながります。オンプレミス環境で運用するITシステムを安定的に稼働させるには、物理的なITインフラの保守・運用管理が必要です。ITインフラの保守・運用管理にはエンジニアやプログラマーを雇用するコストはもちろん、故障対応や人材育成などのさまざまなコストを要します。
その点、クラウドコンピューティングはオンプレミス環境に物理的なITインフラを構築する必要がないため、サーバーやネットワーク機器などの保守・運用管理が不要になります。レガシーシステムの延命に高額な維持費用を投じる必要がなくなり、ITインフラの運用コストを大幅に削減でき、戦略的なIT投資に資金を投入できるでしょう。
BCP対策につながる
日本は地震大国と呼ばれる国であり、万が一の災害に備えてITシステムの可用性を確保しなくてはなりません。オンプレミス環境でバックアップや冗長化を図る場合、災害によって自社システムが破損すれば事業活動そのものに多大な影響を及ぼします。クラウド上にバックアップ環境を構築できれば、自社のデータセンターが災害にあったとしても比較的早期の再建が可能です。
また、バックアップ先となるデータセンターを指定できるクラウドサービスも少なくありません。たとえば、Microsoft Azureのデータセンターは東日本と西日本に設置されており、ファイルのバックアップやソリューションをデプロイする地域の指定が可能です。自社と反対方向のデータセンターを選択することでBCP対策につながり、事業継続性の確保に寄与します。
ランサムウェア対策ができる
テクノロジーの進歩に伴ってさまざまな産業が発展を遂げる一方で、マルウェアや不正アクセスといったサイバー攻撃の脅威も年々高度化かつ巧妙化しています。とくに近年問題になっているのが、マルウェアのなかでも悪質な被害をもたらすランサムウェアです。ランサムウェアはファイルやデータを利用不可能な状態にし、復旧と引き換えに身代金を要求するマルウェアを指します。
その点、共有機能のないバックアップ専用のクラウドサービスであれば、バックアップファイルの保護が可能です。また、Microsoft AzureのようにISO規格のセキュリティ認証を獲得しているサービスを活用することで、国際水準のセキュリティレベルを担保できます。
容量を簡単に増やせる
クラウドコンピューティングの大きなメリットのひとつが、容量の拡張がしやすい点です。企業の基幹系システムやファイルサーバーには、日々の事業活動によって創出されたさまざまなファイルやデータが蓄積されていきます。当然、ITシステムの運用期間が長くなるほどデータの総量が増加するため、場合によってはサーバーやストレージの容量を増やさなくてはなりません。
オンプレミス型のITインフラにバックアップ環境がある場合、容量を増やすには物理的なハードウェアの増設が必要です。その際にハードウェアの導入費用を要するのはもちろん、保守・運用管理におけるランニングコストも増大します。クラウドコンピューティングであれば、物理的なハードウェアを導入することなく、サービスプランを変更するだけで簡単に容量の追加が可能です。
クラウドバックアップツールを選ぶ際のポイント
ここからは、クラウド上にバックアップ環境を構築するソリューションを選定するポイントについて見ていきましょう。押さえておきたいポイントとして挙げられるのが以下の3つです。
料金プランは適切か
クラウド型のストレージやファイルサーバー、バックアップツールなどは、一般的に容量によって料金設定の異なるプランが用意されています。自社の企業規模やシステム環境によって適切なコストモデルは異なるため、必要な容量や機能、予算などを踏まえて最適なソリューションを選定しなくてはなりません。
バージョン管理機能があるか
バージョン管理機能が搭載されているかどうかも重要なポイントといえます。旧バージョンが必要になったとき、あるいは編集前のデータが必要になった場合などにデータを復旧できるためです。たとえば、時系列に沿うような形でデータのバージョン管理ができれば、編集履歴の管理が比較的容易になります。
コラボレーション機能があるか
クラウド上のバックアップ基盤としてだけでなく、コラボレーションツールとして活用できるソリューションの選定がおすすめです。たとえば、OneDriveなどのクラウドストレージは複数ユーザーでの同時編集やファイル共有機能を備えており、バックアップのみならずファイル共有基盤として活用できます。
クラウドストレージでもバックアップはできる
バックアップ環境は大きく分けるとファイルやデータのバックアップと、システムやアプリケーションのバックアップの2種類があります。Microsoft AzureのようなIaaS・PaaS型のクラウドサービスであれば両方に対応可能ですが、ファイルやデータのみのバックアップであれば、フリーソフトとして提供されるクラウドストレージを利用する方法も有効です。
たとえば、Windows 10のユーザーであればOneDriveを5GBまで無料で利用できるため、簡易的なバックアップ環境として活用できます。ただし、容量の観点からOneDriveの無料プランは企業向けとはいえません。企業のバックアップ基盤として活用する場合は、1ユーザーあたり1TB(プラン・条件により変動)の容量を利用できるOneDrive for Businessがおすすめです。
まとめ
クラウドバックアップとは、クラウド環境にファイルやシステムを複製・保管することです。クラウド上にバックアップ環境を構築することで、導入・運用コストの削減やBCP対策、セキュリティの強化といったメリットがあります。バックアップ環境のクラウド化を推進する企業は、ぜひOneDriveの活用をご検討ください。