昨今の「ワークスタイル変革」や「営業の生産性向上」など、グループウェアなどコラボレーションツールの導入検討が盛んになっています。しかし、実際に導入や運用を進める段階になると、様々な考慮点や想定外の事象が発生し「きちんと検討してから導入したのになぜっ!?」と課題に直面する企業も少なくありません。
よく見受けられるケースとして、グループウェアの導入をゴールにしてしまい、その後の運用を十分に考慮していなかった点が挙げられます。
どのようなシステムにも共通して言えることですが、各製品をしっかりとした基準で選定するのは基本中の基本であり、導入が成功するかどうかは運用にかかっています。
Office 365をはじめとしたグループウェアも例外ではなく、しっかりとした運用を行うことで全社的に利用が活発化し“本当に業務効率化を生むグループウェア”が完成するでしょう。では実際にどのような点に注意しつつ運用すればいいのか?
今回は失敗しないグループウェア運用のための6つのポイントをまとめてみました。
ユーザーにとってストレスのない運用を目指す
グループウェアは全社員が利用するコミュニケーションツールだからこそ、ささいなストレスが業務に影響を及ぼしかねません。例えば「インターフェースが使いづらい」や「ポータルがないから不便」といったストレスに関しては、導入段階で潰せるものです。無料トライアルを活用し予めインターフェースや使い勝手を確認しておけば、上記のようなストレスは皆無で運用できます。
しかし問題なのは「従来システムの方が良かった」というストレスです。実はこういったストレスを抱えている社員は少なからず存在し、次第にグループウェアを活用しなくなります。もしこれが現場のキーマン的存在だった場合、周囲がその社員に合わせていくことになるのでグループウェアがいつまで経っても現場に浸透しません。この状況を回避するためには、グループウェアを利用することで得られるメリットを明確に示すことが大切です。「この機能を使えば今までの業務がこんなに早くできる!」などなど、各機能でどんな業務効率化が生まれるのかをしっかりと伝えましょう。
そのためにはまず各部署の業務プロセスを知り、どのポイントを効率化できるかをしっかりと把握することです。慎重な導入検討を行った上ならば、グループウェアで業務効率化できないということはありません。必ず何かしらのメリットがあるのでこれをしっかりと伝えることで社員のグループウェア離れを防ぎましょう。
有る程度の権限を現場に委ね、部署ごとの色を出す
グループウェアをいち早く浸透させるためには、ある程度の権限を現場に任せる必要があります。例えばアクセス権限の設定やインターフェースのカスタマイズなど、変更の権限を与えておくことで部署ごとや社員のごとにそれぞれの色を出すことが可能です。
こういった“半分自分達で運用している”という気持ちは連帯感を生み、グループウェアの利用を活発化させてくれるのです。もちろん全ての権限を与えるのは問題ですが、上層部から押し付けられたシステムでは不満を生む可能性が大いにあります。また、現場にある程度権限がないと負担が大きくなるのが管理者です。特に中小企業では本来業務とグループウェア管理を1人の社員が兼任しているというケースも少なくありません。
現場から機能の変更要請があれば対応しなければならず、ひっきりなしに要請が続けば本来業務に支障をきたしてしまいます。このように管理社の負担を軽減するためにも、現場にある程度の権限を与えることは必要なのです。
では、どの程度権限を与えればいいか?ですが、これは非常に難しい問題でもあります。アクセス権限の変更までできてしまうようではセキュリティ的に難ありとなってしまうので、最高でもアプリケーションや機能の変更などに留めておきましょう。また、製品的に社員が独自にダッシュボードをカスタマイズできるものであれば、積極的にそれぞれが使いやすいよう変更させるのがいいかと思います。
代表が率先して活用し、時には強制力も必要
皆さんの企業で新しくグループウェアが導入されたとして、もしも代表を含めて上層部が活用していなかったらどうでしょう。「え、これ意味あるの?」と戸惑ってしまう社員も少なくないと思います。実際に代表がまったく利用しなかったことで現場のグループウェア離れが進み、運用に失敗してしまったケースがあるほどです。ですので、代表や上層部がグループウェアを積極的に活用して現場社員に見せることは非常に重要なのです。また、代表がグループウェアを活用していると現場には「見えない強制力」が働きます。
「社長が使っているんだから自分たちも使わなくちゃ」という気持ちから、利用するユーザーが増加するのです。完全に現場任せではいつまでも浸透しないグループウェアを生んでしまうので、時には強制力を持って利用を活発化させましょう。ただし、ただ強制するだけでは社員ストレスを生むばかりです。グループウェアを導入する本来の目的は「できるだけ多く社員に使わせる」ではなく「グループウェアで多くの業務効率化を生む」ことです。従って、強制感を出しつつ運用のポイントをしっかりと押さえて現場の利便性を向上させていきましょう。
使いやすい機能から徐々に拡大していく
ファイル共有、スケジュール、ToDoリスト、メール、Web会議などなど、基本的な機能だけでもグループウェアには十数種類の機能が存在します。もしも社員全体のITスキルが高くないという場合は、全ての機能をいきなり使いこなすのは難しいでしょう。そこで使いやすい機能からまずは浸透させるという方法が有効的です。グループウェアが持つ機能の中で、シンプルで使いやすいものと言えばスケジュールとToDoリストあたりでしょう。まずはこれらの機能から使い始めると社員も戸惑わずに使用することができるかもしれません。
使い慣れたら徐々に他の機能もリリースしていくと、段階的にグループウェアを浸透させていくことができます。ちなみに焦らずゆっくりと機能を拡大していくことが成功の秘訣です。
運用にあたりルールを策定する
せっかく導入したグループウェアも、社員の活用方法がバラバラでは本来のメリットを引き出すことができません。全社員が同じように使用してこそのグループウェアなのです。
そこで、グループウェア運用にあたりルールを策定しておきましょう。といってもあまりに厳し過ぎるルールは逆に社員のストレスを生んでしまうので「会議室の予約は必ず“設備予約機能”と使用する」など、簡単なものでも構いません。ルールを策定することで全社員が同じようにグループウェアを活用し、業務効率化が促進します。
「いいこと」と分かっていてもなかなか実行に移せないのが人間なので、ルールを作って多少強制感を生む方がいい場合もあります。ただし前述しましたが、ただ強制するのでは社員のストレスを生むだけです。しっかりと社員の利便性を考慮した上でルールを策定していきましょう。
業務以外にもグループウェアを活用してみる
グループウェアは組織内の情報共有やスケジュール管理など、どちらかと言うとビジネス色の強いシステムです。このため業務以外の情報を交わす場としてはあまり活用されていません。しかし、中には業務以外の活用方法でグループウェアを浸透させた事例もあります。例えば社内イベントの告知を行ったり、社員同士のプライベートな情報交換として活用することで“気軽に使えるグループウェア”構築しているのです。この運用方法を取る場合は代表が「プライベートな情報も気軽に発信していいよ」というメッセージをしっかりと伝えていくことが大切です。
また、Office 365のYammerのようにグループウェアによっては予め「社内SNS」が備わっている製品があります。社内SNSは組織内のフラットなコミュニケーションを実現し、役職や部署の垣根を超えたコミュニケーションを実現するためのシステムです。FacebookやTwitterなど多くの社員が使い慣れたSNSのように使用することができるので、ビジネスとプライベートの利用をしっかりと分けることができます。社内SNSに関しても代表が積極的に活用することで全社的に浸透させていくことができます。
まとめ
いかがでしょうか?最後に、今回のポイントを以下にまとめておきます。
- グループウェアを利用することで得られる業務効率化などを明確にし、社員にとってストレスのないシステム運用を目指す
- グループウェアの権限をある程度現場に委ねることで“自分たちで運用している感”を出し、管理者の負担を軽減する
- 代表が積極的に活用することで「見えない強制力」を生み全社的に浸透させていく(ただし、ただの強制はNG)
- 社員のITスキルが低い場合は全ての機能を一気に使用するのではなく、使いやすい機能から徐々にリリースしていく
- 全社員が同じようにグループウェアを活用するため、簡単なルールを策定して利用を活発化させていく
- 業務以外の情報交換にもグループウェアを活用してみる(社内SNSが備わっていればそちらを利用する)
導入前のグループウェア選定も大切ですが、やはり成功するかしないかは運用にかかっていると言っても過言ではありません。もちろん、だからと言ってどんなグループウェアを導入してもいいというわけではないので、選定もしっかりとしたポイントを押さえて行いましょう。
また、グループウェアは基幹業務系システムと比較して運用を軽視しがちなシステムです。「導入さえすれば自然と現場に浸透していくだろう」と考えがちですが、実際はしっかりと運用計画を立てていかなければ失敗してしまいます。
今回紹介した運用ポイントに準拠するだけでも成功率がかなり違うので、今後グループウェアを導入する企業は是非参考にして頂きたいと思います。