日本では、DX推進の必要性を認識しながらも、検討や導入にいたっていない企業が多く見られます。現場で効率良くDXを活かす方法を知るには、活用事例から学ぶのが効果的です。本記事では、実際にDXを導入している企業の事例を紹介し、成功に向けたポイントとあわせて詳しく解説します。
DXとは
DXとは、デジタル技術を活用して、人々の生活をより良く変革させることを指します。企業においては、革新的なビジネスモデルを構築し、企業間の競争上で優位に進められるよう変革することを意味します。
Microsoftが定義するDXとは、テクノロジーを活用して、社員・データ・プロセスを統合し、企業の変革を通してお客様に向けた価値を生み出すこととされています。Microsoftでは、お客様を中心とした取り組みに重点を置き、テクノロジーを基盤として企業の経営改革およびビジネス変革を支援するモデルを展開しています。
DXの事例
企業および自治体などでは、何を目的としてDXを導入し、どのように活用しているのでしょうか。ここからは、現場での具体的な導入事例を紹介します。
組織の働き方を可視化|渋谷区
DX化への取り組みを積極的に行っている渋谷区では、区の基本構想実現に向けた改革のひとつとして、Microsoft 365 E5を導入しました。職員の業務負担が課題となっていたため、働き方の可視化を目的として導入したのです。
DXの推進によって、機械に任せられる業務と職員が行うべき業務を明確に分け、行政の生産性を上げたことで、職員が区民と向き合う時間を構築できるようになりました。さらに、Microsoft 365が把握しているデータと、外部の業務システムから取得したデータを組み合わせ、「渋谷区オフィス ダッシュボード」を構築しました。これにより、組織内での行動データがより詳しく可視化できるようになりました。渋谷区では、時間と場所にとらわれない働き方を進めており、データの可視化により業務量や負荷の見直しにもつながっています。
SAPの運用改善とコスト削減を実現|伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社
鉄鋼製品を扱う商社である伊藤忠丸紅鉄鋼では、DXの一環として業務のペーパーレス化・自動化・システムのローコード開発を同時に進めています。ペーパーレス化に重点を置いているのは、部署の中で特に力を入れている経理部門が、紙中心の業務となっているためです。コロナ禍や電子帳簿保存法への対応なども追い風となり、データベースの移行を進める上でDXが導入されました。
取り組みの中心として活用されたのは、Microsoft 365で利用できるPower Platformです。ローコード開発が、ペーパーレス化に必要不可欠なため、開発基盤に導入されました。伊藤忠丸紅鉄鋼は、Power Platformの品質や使い勝手・コストなどが優れていると判断し、導入の決め手になったとのことです。
2021年度には、最高デジタル責任者(CDO)を設置し、DX推進体制を強化しました。今後も、「より人が楽になる」をデジタル化のテーマとして、さらなるDX推進を目指しています。
強固なセキュリティ基盤によるDX推進|株式会社ソフトクリエイト
株式会社ソフトクリエイトは、主に中堅中小企業を対象とした情報システム機能のサポートを行うITOサービスプロバイダとして、働き方改革を支援しています。同社では、新型コロナウイルスの感染拡大により、リモートワークが急速に普及したなかで、強固なセキュリティの構築が急務となっていました。
Microsoft 365 E5の導入により実現したのが、「ゼロトラストセキュリティ」です。ゼロトラストセキュリティとは、デバイスや場所に関係なく、すべてのアクセスを信頼できないものと捉え、一元管理して監視するシステムです。内部からの情報漏洩やクラウドサービスの利用拡大などにより、注目が集まっています。ゼロトラストセキュリティの導入で、境界に関係なくセキュリティが担保されるようになります。
DXの必要性
ここまでDXの成功事例を紹介してきましたが、企業によってはDXの導入は必要ないと考えているかもしれません。ただ、企業の規模や業種に関係なく、DXの必要性が叫ばれているのは、次のような理由があるためです。
レガシーシステムから脱却するため
日本の企業で活用されている既存システムは、複雑かつ老朽化が進み、ブラックボックス化しているものも少なくありません。これらのシステムは「レガシーシステム」と呼ばれ、ベンダーによるサポートが終了し、運用やセキュリティの面で大きな支障をきたす恐れがあります。
2018年に経済産業省が発表したDXレポートの中で、「2025年の崖」という用語が使われています。これは、IT人材の減少やシステムのサポート終了などにより、2025年以降の経済損失が、最大で年12兆円にのぼるという試算を示したものです。レガシーシステムの維持・運用に重点を置いてしまうと、新たなテクノロジーを活用できずに、企業間の競争に立ち向かえなくなる恐れがあります。
消費行動の変化やニーズに対応するため
ここ数年で、ビジネス環境の変化が随所で見られるようになってきました。市場のグローバル化や少子高齢化による労働力不足、消費者の動向や価値観の変化などが顕著ななかで、企業はその流れに対応していかなくてはなりません。
さらに、多様化する消費者ニーズに対応するため、ビッグデータを活用する企業も増えています。しかし、既存のビジネスモデルでは対応できないことから、DX推進の一因となっています。
働きやすい環境を構築するため
既存業務のデジタル化によって、従業員の工数や業務負担が減り、生産性向上や業務効率化が見込めるため、労働環境の改善が期待できます。また、ITツールの導入により場所を問わず働けることで、ワークライフバランスの改善が実現され、従業員の退職を減らす効果も見込めます。つまりDXの推進は、働き方改革の実現につながり、従業員にとって働きやすい環境をもたらします。
事例から学ぶDXを成功させるためのポイント
先ほど紹介したDXの成功事例には、押さえておくべきポイントが数多く含まれています。具体的にどのようなポイントに注目すると良いのかを確認していきましょう。
DX人材を確保する
DXが推進するにつれ、それに関連するスキルを持った人材不足が課題となるケースが増えています。総務省が発表した「令和3年版情報通信白書」の中でも、DX推進における課題のトップとして人材不足が挙げられています。
DX人材には、デジタルに強いだけでなく、デジタル領域の事業変革を率先して行うための知見やスキルが求められています。2020年5月にIPAが発表した「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査」の中で具体的に挙げられている職種は、プロダクトマネージャーやビジネスデザイナー、データサイエンティスト、エンジニア・プログラマーなどです。こういった人材の確保が、DX推進の大きな足掛かりとなります。
顧客志向を大切にする
モノ消費からコト消費への変化に象徴されるように、顧客が求めるものは時勢によって変化しており、この傾向は今後も続くと予想されます。最新のシステムを活用し、顧客志向を的確に把握することが必要です。デジタル化のみで満足しないよう、徹底的な顧客目線を心がけ、ニーズを読み取るようにしましょう。
トップも参画する
DXは、一部の部署や部門のみで行う取り組みではなく、全社を挙げた導入が必要です。これには、経営方針の決定や資金の投資、組織改革などが伴うため、経営陣やトップが参画しなくてはなりません。また、DX成功に向けて専任チームを結成し、固い決意を持って推進していくリーダーの選出も求められます。
まとめ
DXの導入により、業務効率化や働き方改革につながった事例は多く、今後もこの傾向は強まっていくと考えられます。DX人材の確保や顧客志向を心がけながら、全社一丸となって導入を進めていきましょう。
DX化を進める手段としては、Microsoft 365がおすすめです。場所を問わず情報にアクセスでき、共同作業が可能なほか、セキュリティ対策も万全です。DX推進を目指す企業は、ぜひ導入を検討してみてください。