従来、日本企業においてはDXに伴うシステムの開発や管理を外注するケースが多くありましたが、ビジネスにおけるIT活用やDXの必要性が強く認識されるにつれ、最近ではDXの内製化に取り組む企業が増えつつあります。そこで本記事では、DXの内製化とは何か、なぜ現代において必要とされているのか、そのメリットや課題点などについて解説します。
DXの内製化とは?
DXの内製化とは、自社が主導してDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、DXにおいて必要となるシステムやサービスも自社のリソースを使って開発・運用することです。従来、日本企業ではシステムの開発や運用について、専門のIT企業やコンサルタントに外注する事例が多くありましたが、DXの内製化においては、そうした外部の力に依存せず、社内のDX人材を活用・育成してDXを実現していきます。
DXの内製化が企業に必要な4つの理由
従来の外注に頼った状況から脱却し、DXの内製化を進める必要性はどこにあるのでしょうか。続いては、現代の企業にとってDXの内製化が必要な理由を4つに分けて解説します。
市場の動きや対応のスピードを速めるため
昔と比べ、現代の市場の動きは急速になっており、ビジネスプロセスにはそれに対応できるスピードが求められています。そのためには、システムを常に刷新・改善し、変化に対して柔軟に対応できる体制を整えなければなりません。しかし、これまでの外注に頼った方法では、どうしても外注先との調整が必要になってくるため、対応までの時間に遅れが生じてしまいます。そこでこうした課題を解決するために、システムを自社で内製化する必要性が高まっています。
最新技術を取り入れ柔軟に対応できるようにするため
DXにおいては、単に最新のITツールを導入するだけでなく、既存のビジネスモデルや考え方、企業文化など、組織そのものの変革が求められます。こうした組織変革は、外注企業に頼って実現できるものではありません。たとえば、テレワークの導入ひとつとっても、自社の業務にどのような形でテレワークを取り入れればよいかは企業ごと、部門ごとに異なるため、部外者が最適解を見つけるのは困難です。したがって、DXの内製化を通して最新の技術を自社に最適な形で取り入れられるように、柔軟な対応力を確保することが重要です。
DXリテラシーを向上させるため
組織全体のDXリテラシーを向上させる必要性が高まっているのもDXの内製化が注目を集めている理由です。上記のように、DXにおいては組織全体での対応が必要です。たとえば、特定の部門や担当者だけがDXの必要性を認識していても、経営陣にDXへの理解がなければ予算は確保できませんし、現場の抵抗を受ければ実際の業務にまでDXの効果が浸透しません。その点、DXの内製化を通して一人ひとりの意識変革が実現できれば、組織全体のDXリテラシーが向上し、DXの効果向上や継続的な取り組みがしやすくなります。
自社システムのブラックボックス化を回避できるため
自社システムのブラックボックス化を避けるためにもDXの内製化が必要です。自社に技術者がいない場合、自社で利用しているシステムの中身を誰も把握していないことになります。多くの企業がシステムの管理を外注に任せているのはその穴を埋めるためですが、外注に頼っていると、万が一システム障害が発生した際に対応まで時間がかかります。システムのブラックボックス化を避け、トラブルへの対応スピードを向上させるためにもDXの内製化が重要になります。
DXの内製化における課題
様々な効果が見込めるDXの内製化ですが、実際に実現するのは容易ではありません。以下では、DXの内製化を阻む課題について解説します。
人材に関する様々な問題点
DXの内製化においては、その担い手であるデジタル人材の確保から取り組む必要があります。特にこれまで外注に頼ってきた企業にとって、この問題は一番大きなものかもしれません。自社にデジタル人材がいない場合は、外部から中途社員として採用するか、もしくは既存の社員を育成することになります。とはいえ、中途社員を採用する場合は、採用に費用がかかったり即戦力でない人材を採用してしまったりするケースもあるのが難点です。また、根本的な問題として、昨今の雇用・労働市場の需要に対して、デジタル人材の供給が追いついていないという難しさもあります。その際に有効なのが社員を育成する方法ですが、これにも一定の時間が必要となることは否めません。
人材や設備への初期投資が必要
人材や確保や育成に必要なコストに加えて、システムの開発や管理に必要な設備やツールなどに対する初期投資が必要なのもネックのひとつです。とはいえ、社会的にデジタル活用の流れは今後さらに加速していくと考えられるため、長期的に見た場合は外注に依頼し続けるよりも内製化した方がコストを抑えられる可能性は高いです。人材や設備への積極的な投資を可能にするには、やはり経営者層におけるDXへの意識の高さがカギになってくるでしょう。
社内システムの開発品質が落ちやすい
システムを内製化する場合、開発品質が落ちやすくなるのも懸念される点です。外注は基本的にシステム開発を専門に取り組む企業に委託しているため、一定の品質が見込めます。他方で内製化の場合、特に初期段階においては外注と比べてシステムの開発品質が見劣りしてしまう可能性は否めないでしょう。また、自社内で利用することで品質基準などが曖昧になってしまい、品質維持が難しくなってしまう場合もあります。
DXの内製化に向けて課題を解決するには?
続いては、DXの内製化に向けて上記のような課題を解決し、DXを成功させるためにはどうすればよいのかを解説します。
人材育成の問題を解決するための取り組み
人材育成の問題解決には、IT部門の強化とデジタル人材の育成が必要です。まずは、外部研修などもうまく取り入れながら、育成環境を整えることから始めましょう。また、組織全体でDXを推進していくには、IT部門だけで施策を完結させないことが重要です。そのためには、たとえば事業部門からIT部門へ人材を異動させるなど、多くの人材がテクノロジーへの理解を身につけて変革を担えるようにする取り組みが必要になります。また、社員がモチベーションを維持して学習に取り組めるように、スキルや資格などに対してインセンティブを支給するのも有効な手法です。短期的には中途採用なども活用しつつ、長期的な観点で育成環境を整えていきましょう。
品質管理の問題を解決するための取り組み
一定の開発品質を確保するには、適切な品質管理が重要です。適正な品質管理を確保するには、社内の開発環境を整備しつつ自社ソフトやシステムを客観的に評価できる仕組みを作ることが大切です。社内の開発環境が整備されると、将来的にノウハウが蓄積されやすくなり、マニュアルづくりなどもしやすくなるでしょう。また、失敗を避けるには評価指標の作成や品質管理のノウハウを持つ人材の確保なども重要です。
まとめ
急激に変化していく市場状況へ柔軟かつ迅速に対応するためには、DXの内製化が必要です。DXの内製化にはコストや人材確保、品質管理などの課題もありますが、早めの取り組みを進め、適切に対策を講じることでリスクの回避へつなげられます。本記事を参考に、ぜひDXの内製化に取り組んでみてはいかがでしょうか。