近年、ECサイトや企業の問い合わせページなどで、チャットボット(chatbot)を目にすることが増えました。チャットボットの導入で、業務効率化や従業員の負担軽減など、さまざまなメリットを得られます。本記事では、チャットボットの種類について解説します。種類によって特徴が異なるため、目的によって上手に使い分けましょう。
チャットボット(chatbot)とは?チャットボットの定義
チャットは「会話」、ボットは「ロボット」を意味します。それを組み合わせた言葉「チャットボット(chatbot)」とは、テキストや音声を用いて、自動的に会話するためのプログラムのことです。この条件を満たした仕組みは、すべてチャットボットに分類されます。
企業のWebサイトへアクセスしたとき、「〇〇について説明が必要ですか?」や「自由にご質問ください」のメッセージが表示され、画面下部などにチャットスペースが表示されたことがある方が多いでしょう。まさしくこれがチャットボットであり、入力した内容に応じて返答します。
実はチャットボットの歴史は長く、1966年にマサチューセッツ工科大学で開発された「ELIZA(イライザ)」が今日のチャットボットの基礎になったと言われています。初期は会話の要約をしたり、相槌を打ったりするのが主な仕様でしたが、技術が発展するにつれ精度そのものが向上し、またAIを取り入れ会話を学習していくものも現れました。
チャットボットを顧客応対などに導入すると、人的リソースを割いて行っていた業務が自動化できます。従業員の負担軽減や職場環境の改善が望め、リソースを、主力業務や別の作業に割り振れるため、生産性向上の効果も期待できるでしょう。
チャットボットの種類
チャットボットには、いくつかの種類が存在します。選択肢型と辞書型、さらに両方を融合させたタイプもあります。それぞれに違いについて、ここで理解を深めておきましょう。
選択肢型
選択肢型は、あらかじめ用意した選択肢を、ユーザーが選ぶスタイルです。シナリオに沿ってユーザーを誘導できる特徴があり、シナリオ型と呼ばれることもあります。
例えば、「〇〇について知りたいですか?」といった質問を投げかけ、「はい」と「いいえ」の選択肢を設置します。はいを選んだ方には、具体的にどのようなことを知りたいのか次の選択肢を与え、いいえを選んだ方には別の質問を投げかけるという仕組みです。
ユーザーは、あらかじめ用意された質問の選択肢を選ぶだけで会話が進められるため、ストレスを感じにくくなります。また求める答えにスピーディーにたどり着けるため、満足度も高められるでしょう。
シナリオ通りに誘導できるメリットがある反面、そのときどきに応じた柔軟な対応ができないことがデメリットです。そのため、ユーザーの疑問を解決できない場合は、コールセンターへの問い合わせを通じて人による回答が必要となるケースも起こり得ます。
辞書型
辞書型は、予めキーワードと回答を登録しておき、ユーザーが入力した文字に含まれるキーワードなどに反応して回答する形式のものです。例えば、「A1」というキーワードが入力されたときは「B1」、「A2」のキーワードがある場合は「B2」というように、キーワードと返答のテンプレートを組み合わせて登録し、チャットボットを構築します。
キーワードに沿ってスピーディーに返答できるため、ユーザーにとってもストレスを感じにくく、コールセンターへ問い合わせするように自然に応対できるメリットがあります。
一方で、自然なやり取りを実現するには、膨大な数のキーワードやテンプレートを登録しなくてはなりません。キーワードが登録されていることが前提の仕組みであるため、未登録のキーワードが登場した場合は、適した返答を出すことができなくなります。さらに質問される内容を正確に推測しなくてはならず、キーワードの抽出には時間がかかります。同時に返答のテンプレートも作成する必要があるため、導入から運用までに時間がかかってしまうという課題もあります。
選択肢型&辞書型
選択肢型&辞書型は、双方の機能が融合しているタイプです。このタイプでは、登録したキーワードに反応して選択肢を提示し、構成したシナリオ通りにユーザーを誘導できます。有人対応のようなやり取りも実現でき、ユーザーに違和感を与えにくいのも特徴です。
双方の良いところを活用できつつも、対応パターンに限界があることがデメリットの1つと言えます。キーワードや選択肢、それに対する回答を細かく想定し、登録しておく必要があり、その範囲から外れたイレギュラーな質問があると対応できなくなってしまいます。
辞書型と同様に、数多くのキーワードを抽出し登録する必要があるため、手間と時間、人的コストが発生すること、そして形式的でない質問があった場合は人に変わって応対できる仕組みを整えておくことも押さえておかなければなりません。
AIチャットボットの誕生
近年では、AI(人工知能)を用いた「AIチャットボット」を導入する企業も増えています。AIそのものの歴史も古く、1950年代には概念が生み出され活発な研究が繰り広げられました。そして現在ではスマートフォンやエアコン、掃除ロボット、建設機械など、あらゆるものにAIが導入されています。
AIチャットボットとは、AIがデータを分析し、質問に対して最も適切な返答を出す仕組みです。特徴として、AIには学習機能があります。見当違いな回答を出してしまったとしても、そのことを学習・分析し、チャットボットの精度を上げていくことができます。また新たな質問が来た場合に、過去の膨大なデータから適した回答は何かを導き出すこともできるようになりました。
現在使われているチャットボットはAI搭載・AI非搭載に分けられます。それぞれの特徴について説明します。
AI非搭載チャットボット:ルールベース型
ルールベース型は、AIを搭載していないタイプです。あらかじめシナリオを設定しておき、ユーザーは選択肢を選んで会話を進めていきます。
ゴールを決めてシナリオを設定できるため、ユーザーを誘導しやすい特徴があります。頻繁に寄せられる質問に対する答えをシナリオに組み込んでおけば、自動的に受け答えできる体制が整い、従業員が同じ問い合わせに何度も答えるといった負担が軽減できます。またキーワードや回答をピックアップし登録していくため、後述の機械学習型に比べて導入しやすい点も特徴です。
一方、仕組み自体がシナリオありきであるため、設定外の受け答えはできません。そのため、柔軟性に欠けるのがデメリットといえるでしょう。ユーザーをスムーズにゴールへ誘導するには、綿密なシナリオ設定も求められます。
AI搭載チャットボット:機械学習型
AIを搭載した機械学習型のチャットボットは、自動的に学習し成長していきます。過去のやり取りをAIが記憶し学習するため、例えば入力した文言が異なるAとBの質問であっても、過去のデータから最適な回答は同じであることを導き出せます。
データが蓄積されるほど、AIの学習と分析が進むためデータが蓄積されればされるほど回答の精度が向上します。また近年では、Azureのサービスを用いれば、低コストで自社にマッチしたAIチャットボットを構築しやすくなりました。これもAIチャットボットに注目が集まる所以でしょう。
自ら学習し、精度を高めてくれるAI搭載型のチャットボットですが、ルールベース型に比べて導入までに時間がかかり、運用コストもある程度必要になることがデメリットです。また定期的なメンテナンスも必要です。そのため、すぐにでもチャットボットを導入し運用したい企業には適さないかもしれません。
チャットボットのそれぞれの特徴と、自社がチャットボットに求める機能性を照らし合わせながら、どのタイプが最適なのか、ひいては顧客満足度を上げるカスタマーサービスなどにつながるのかを十分に検討する必要があるでしょう。
まとめ
チャットボットには選択肢型と辞書型だけでなく、機械学習によって精度向上が可能なAI搭載型のチャットボットの需要が高まっています。AI搭載型のチャットボットをご検討中なら、知識やノウハウを持ったJMAS(日本能率協会グループジェーエムエーシステムズ)のような専門家へご相談してみることをおすすめします。