大企業も取り組んでいる「見える化」とは何なのか、どのようなメリットがあるのかご存じでしょうか。見える化への取り組みにより解決すべき課題が明らかになり、業務効率化や生産性向上の効果も見込めます。本記事では、見える化の概要やメリット、具体的な方法、実践に役立つ支援ツールなどを解説します。
見える化とは
見える化とは、本来目に見えないものや見えにくいものを、テキストやイラストなどを用いて見える状態にすることです。業務プロセスや従業員に割り当てたタスク、仕事の進捗状況、スキルなどが主な見える化の対象です。
現在、大手をはじめ多くの企業が見える化に取り組んでいます。たとえば、トヨタ自動車では発生した問題を可視化できる仕組みを構築しており、スピーディーに適切な対応をとれる体制を整えています。
見える化と似た言葉に「可視化」がありますが、双方における違いは「意識せずとも目に入るかどうか」です。可視化は、見えないものや見えにくいものをテキスト化、図式化したものであり、必ずしも目に入るとは限りません。一方、見える化は対象を可視化するだけでなく、意識せず自然に目に入る状態や、ルール化などで目にしなくてはいけない状況を作り出すことを指します。
見える化をおこなうメリット
見える化に取り組むメリットとして、発生している課題の把握や情報共有の円滑化、公平な評価の実施などが挙げられます。これらのメリットを得ることで、業務の効率化や生産性の向上効果が期待できます。
課題を把握できる
業務で何らかの課題が発生しているにもかかわらず、把握できていないケースは少なくありません。たとえば、作業の属人化や無駄などが発生しているのに気づけていないと、生産性の低下を招きます。
見える化に取り組めば、現状で発生している課題を明確にできます。本来1人で十分な作業に2人の従業員を投入している、無駄な業務のプロセスが発生し生産性を落としている、といったことが分かります。
課題が明確になれば、解決に向けて具体的に何をすべきかがはっきりします。その結果、迅速に見直しを図り、解決策を打ち出すことも可能です。
情報の共有を円滑化できる
円滑な情報共有を実現できるのも、見える化に取り組むメリットです。たとえば、業務の進捗状況が見えないとその都度確認しなくてはならず、余計なやり取りが増えてしまいます。
業務の進捗が見える環境を構築すれば、このような状況を回避しスムーズに現場の把握が可能です。余計なやり取りが少なくなるため集中して業務に取り組め、生産性の向上も期待できるでしょう。
また、スキルやノウハウを共有できる環境を整備すれば、業務の標準化を実現でき属人化も回避できます。さらに、部門間で顧客情報や商談の進捗などを可視化、共有することで連携を強化でき、適切かつスムーズな対応をおこなえるようになります。
評価をより公平に実施できる
従業員のスキルや実績などを見える化すれば、より公平な評価を実施できます。目に見えにくいスキルや実績が可視化され、データに基づいた評価をおこなえるためです。
公平な評価の実施により、従業員のモチベーションを高められる効果も期待できます。自身の頑張りや実績が正しく評価されていることが分かれば、仕事に対する意欲がより高まり、今まで以上のパフォーマンスを発揮してくれる可能性もあります。
また、従業員の離職防止効果も期待できるでしょう。多くの方は、正当な評価をしてくれる会社で働くことを望むと考えられるためです。
見える化の手段・方法例
見える化の手段や方法は多々ありますが、代表的なものはマニュアルやプロセスマップの作成、スキルマップ、進捗確認票の活用などです。何を見える化したいかにより、とるべき手段や方法が異なります。
マニュアル
作業の流れや方法などをマニュアルとして見える化する手法です。作業の方法が決まっていても、マニュアル化されていないと各々が好き勝手に取り組んでしまう可能性があります。その結果、作業スピードや品質のばらつき、属人化などの発生を招きます。
マニュアル作成により、このようなリスクを回避できるでしょう。業務の標準化につながり、作業スピードや品質の安定化をもたらします。
ただ、マニュアルを作成しただけでは意味がありません。従業員が共有できる体制や環境の構築が求められます。また、作成後に作業の方法や流れが変更されたときは適宜更新をおこないましょう。運用しつつ内容を見直し、ブラッシュアップを続けることが大切です。
プロセスマップ
プロセスマップとは、業務全体の流れや関連する部門同士の関係性などを図式化したものです。プロセスマップの作成により、業務の全体像を把握できるほか、それぞれの部門がどのように関わり合っているのかも理解できます。
業務全体を俯瞰で見られ、どこに問題が発生しているのかも把握できます。プロセスマップはExcelでも作成できますが、オンラインで共有できる専用ツールを用いると部門間、従業員間で共有できるためおすすめです。
スキルマップ
スキルマップとは、従業員が有するスキルを整理した表を指します。従業員がどのようなスキルを有しているのかを正確に把握できれば、適材適所な人材配置を実現でき、組織力の強化につながります。
従業員のスキルを正確に把握できていないと、リソースを無駄遣いしてしまうおそれがあります。専門的なスキルをもつ人材を、誰でもできる定型作業に従事させてしまう、といったことも起こりかねません。
また、スキルマップの作成は人材育成にも役立ちます。どのようなスキルが足りないのかも把握できるため、必要に応じて教育や研修の実施、資格取得支援などのサポートをおこなえます。
進捗管理表
進捗管理表とは、業務の進捗を把握するために作成する表です。プロジェクトの進捗管理に用いられるケースが多く、スケジュールの遅延回避や作業漏れ防止などに役立ちます。
進捗管理表の例としては、ガントチャートが挙げられます。縦軸と横軸で構成される表で、縦軸には担当者や作業内容などを、横軸には日付や時間を設定するのが一般的です。
手書きやExcelなどでも進捗管理表は作成できますが、見える化の観点で考えると不十分です。手書きやExcelで作成した表は共有しにくく、意識せずとも目に入る環境を構築できません。従業員がオンラインで確認できるツールを導入して作成するとよいでしょう。
見える化を支援するツール
見える化を支援するツールは多々ありますが、ここではスキル管理ツールとCRM/SFA、タスク管理ツールの3つを紹介します。それぞれできることが異なるため、違いを理解しておきましょう。
スキル管理ツール
スキル管理ツールは、従業員ごとのスキルを整理しオンラインで共有できるツールです。従業員が所属する部門や特殊なスキルの有無、保有する資格などを把握できます。
ツールの導入により、組織に在籍する全従業員のスキルを一元管理できるのがメリットです。人事評価やフィードバックをおこなえるもの、スキルマップを作成できるものなど、ツールによって実装されている機能はさまざまです。
CRM / SFA
CRMは顧客管理ツールのことで、SFAは営業支援システムを指します。CRMの導入により、顧客の属性や行動履歴などあらゆる情報を一元管理できます。過去の取引情報や自社との関係性などを見える化するのに役立ちます。
SFAは、顧客管理をはじめ商談管理や担当者管理が可能な機能を実装したものがほとんどです。商談の進捗もひと目で把握でき、そのときどきに応じた適切な対応をおこなえます。
タスク管理ツール
個々の従業員に割り当てたタスクを見える化できるツールです。誰が何をいつまでにすべきかが明確になり、作業漏れやスケジュール遅延などの回避に役立ちます。
タスクを見える化すれば、優先的に取り組むべき順番も理解できます。重要度の高い仕事へ優先的に取り掛かることができ、スムーズにプロジェクトを進められるでしょう。タスクの進捗度合をチェックできるものやガントチャート機能を備えたもの、コミュニケーション機能を実装したものなどがあります。
まとめ
見える化への取り組みにより、課題の把握や円滑な情報共有を実現できるほか、公平な評価の実施にもつながります。ツールを導入すれば、見える化の効果をより実感できるでしょう。Microsoft 365には、タスク管理や業務内容の分析機能が実装されているため、見える化への取り組みとしておすすめです。