DXを推進するためには、AI・クラウドといった最新のデジタル技術が欠かせません。そこで本記事では、DXとは何か振り返ったうえで、DXに活用される技術の種類や概要について解説します。併せて、DX化を推進するためのポイントについてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
そもそもDXとは
DXに活用される技術を見る前に、まず「DX」とは何かについて簡単に振り返っておきましょう。DXとは「Digital Transformation」を略した言葉で、文字通り「IT・デジタル技術(Digital)」によって、企業活動や社会の在り方そのものを「変革(Transformation)」することを意味します。
DXはしばしば「IT化」と混同されがちですが、両者には大きな違いがあります。IT化とは、業務効率化のためにIT技術を利用することです。たとえば、電話や手紙によるコミュニケーションから、Eメール・チャットに変わったのもIT化の例といえます。Eメールやチャットは、電話や手紙よりはるかに軽いフットワークでコミュニケーションがとれるため、業務効率化につながることは間違いありません。
しかし、これはあくまで業務効率化にとどまり、企業活動そのものを「変革」するまでには至っていません。DXでは、IT化のように一部業務を効率化するだけでなく、ビジネスモデル・組織に至るまで、企業の抜本的な変革が目的とされるのです。
昨今では世界中の市場において、先進的なDX企業によるビジネスモデルの再構築が進められています。中には、これらのDX企業が、それまで市場をリードしてきた既存企業にとって代わる例も少なくありません。
そうした中、日本企業でも市場競争力を維持・強化するために、DXの推進が求められています。DXを進めるためには、企業に取り残されたレガシーシステムの刷新が重要です。レガシーシステムは維持に多くのリソースを要するうえ、そのせいで新しいデジタル技術に対応できないケースも多いためです。
DXに活用される技術とは
一口にDXといっても、そこで活用されている技術は幅広く、さまざまなIT・デジタル技術が該当します。日常的な作業を支援し業務効率化を促すものから、コスト削減を実現するものまで多岐にわたるため、すべてをここで取り上げることはできません。
いずれにしろ企業に大きな変革をもたらすような、インパクトがあるIT・デジタル技術がDX実現のため活用されています。次項では、DXで注目される代表的なIT・デジタル技術の例をご紹介します。
DXに関連する技術例
上述したように、DXではさまざまな技術が活用されており、それぞれ特徴やメリット、活用シーンなどが異なります。以下では、その中でも代表的な例をピックアップして見ていきましょう。
IoT
「IoT」は「Internet of Things」を略した言葉で、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。文字通り、私たちの生活に存在するさまざまなモノをインターネットに接続して、より有益な方法で活用するための技術のことです。ビジネス領域においてIoTは、多様な情報を収集する技術としてよく利用されます。
日常生活で使われるIoTの例としては、スマート家電が挙げられます。家電をインターネットに接続することで、遠隔地からでも操作できるようになります。たとえば、IoT化されたエアコンやお風呂を外出先からコントロールし、冷暖房を点けたり湯船にお湯を張ったりするのもひとつの例です。
ビジネス領域においても、さまざまなIoT事例が挙げられます。たとえば製造業では、工場機器にセンサーやカメラを設置して、稼働状況を遠隔で監視したり情報収集したりするケースが見られます。
AI
「AI」とは「Artificial Intelligence」を略した言葉で、日本語では「人工知能」と訳されます。AIによって、これまで人間が担ってきた知的な判断が必要とされる作業を、コンピューターに代行させることが可能です。さらにAIは、自らさまざまな情報をかき集め、正確かつスピーディーなデータ分析や予測も行えます。前述のIoTで集めたビッグデータをAIに解析させるのも、DXに有効なこれら技術の模範的な活用例といえるでしょう。
クラウド
「クラウド」とは、インターネット上で構築されたシステム・サービスを利用するための技術です。企業がこれまでオンプレミスで開発・運用管理してきたシステムの多くは、クラウドで代替できます。クラウドを使うことによって、企業は自社でシステムを所有したり、保守・運用したりする必要がなくなるのです。これにより、オンプレミスにシステムを持つ場合と比べ、初期コスト・運用コストを大幅に削減できる可能性があります。
XR(VR・AR・MR)
「XR」とは、仮想的な空間と私たちが存在するフィジカル空間(現実空間)を融合し、新たな価値を創造する技術の総称です。XRの「X」は未知数を表す文字であり、この部分に具体的な技術を指すほかの文字が入ります。代表的なXRの技術として挙げられるのが、以下の3種類です。
○VR
「VR」とは「Virtual Reality」の略で、日本語では「仮想現実」と訳されます。VRによって、あたかも仮想空間にいるような体験が可能です。VRでは一般的に専用のゴーグルなどを装着し、ゴーグル内のモニタに仮想空間の映像を投影します。スピーカーやマイクがあれば、音声の入出力もできます。
近年では、国内でもVRを社員研修に導入する企業が増えています。VRで仮想空間上に用意した研修設備を利用することで、研修の効率化やコスト削減といったメリットが見込めるようです。
○AR
「AR」とは「Augmented Reality」の略で、日本語では「拡張現実」と訳されます。ARによって、フィジカル空間に仮想的なアイテムを表示させることが可能です。ARでは専用グラスやスマートフォンを使います。
あるECサイトではARを使い、自宅の部屋に仮想的な家具を表示するサービスを導入しました。これにより消費者は、わざわざ家具を購入しなくても、実際に家具が自宅へ設置されたときの状況をイメージできるようになっています。
○MR
「MR」とは「Mixed Reality」の略で、日本語では「複合現実」と訳されます。MRによって、VRによる仮想現実と、ARによる拡張現実を違和感なく連続的に行き来できます。
たとえば製造現場では、MR上に用意したマニュアルを見ながら作業する、といった利用方法があります。遠隔地からも同じ映像を参照できるため、MRによって熟練者がリモートからサポートすることも可能です。
5G
「5G」とは「5th Generation」の略で、日本語では「第5世代移動通信システム」と訳されます。5Gによって、これまでとは比較にならないほど高速・大容量・低遅延で、かつ多数同時接続にも対応した通信が可能です。
5GはDXに活用される各種技術の価値をさらに押し上げ、より有効に利用できるようにします。たとえば、IoTで収集した膨大なデータを送受信して、リアルタイムでAIに分析させる際、大容量かつ高速な5Gは非常に効果を発揮します。
また5Gは、XRを実現するためにも重要な技術といえます。XRで表示される高画質な映像も、5Gを利用すれば遠隔地とリアルタイムで共有可能です。
DXにおいて技術の導入以外に重要なこと
DXはいうまでもなく、ここでご紹介した技術だけでは実現できません。これら技術を導入・活用するためにも、以下に挙げる要素も重要となります。
人材の確保
DXを実現するためには、DXの各技術を扱える専用知識をもち、DXによって会社をデザインできる人材を確保しなくてはなりません。IT人材が慢性的に不足している昨今、DXに通じる人材の育成は、企業にとって大きな課題といえるでしょう。
社内体制の整備
繰り返しになりますが、DXを取り入れることで企業のビジネスモデルが変革されます。その過程では、ある程度失敗も経験するかもしれません。DXを推進するためには、それらを許容する組織風土や経営層の戦略、体制の整備も求められます。
まとめ
DXで活用される技術は、日常業務を支援するものから、コスト削減に有効なものまでさまざまです。具体的には、IoT・AI・クラウド・XR・5Gなどが挙げられます。すでにこれら最新のデジタル技術を活用し、DXに取り組んでいる事例も少なくありません。新しい技術に関する見識を深め、自社のDX化に役立ててみてはいかがでしょうか。