CDOは、近年注目を集めている役職のひとつです。すでに欧米では多くの企業がCDOの設置を進めており、日本でも広がりを見せつつあります。本記事では、CDOとはどのような役職なのか、類似する役職との違いや求められる役割、必要なスキルなどについて解説します。
CDO(最高デジタル責任者)とは?
CDOとは、Chief Digital Officerの頭文字を取ったもので、日本語では「最高デジタル責任者」と訳されます。
CDOは組織におけるデジタル部門を統括する責任者です。デジタルを活かした組織改革をリードする存在であり、経営側の視点でDX推進に努めることを求められる役職です。ITやデジタル技術に関する高度かつ専門的な知識が求められます。ビジネスのグローバル化やデジタル化、DX推進が進む現代において、CDOは組織になくてはならない存在となりつつあります。
すでに欧米では多くの企業がCDOを設置していますが、最近はようやく日本でも広がりを見せつつあります。PwCコンサルティング合同会社が実施した2020年Chief Digital Officer調査によると、CDOを設置している企業は2016年には8%でしたが、2018年には10%、2020年には13%と少しずつではあるものの確実に増えています。また、2020年時点でデジタル化推進を担う専門役職を設置している企業は50%、非設置は37%です。
Chief Data OfficerやCIOとの違い
実はChief Digital Officer以外にもCDOと略される役職が存在します。Chief Data Officerも、CDOと略される役職のひとつであり、日本語では最高データ責任者と訳されます。
こちらも比較的新しい役職であり、組織におけるデータ管理を統括する役割を担います。組織が扱うあらゆるデータを適切に管理するのはもちろん、ビジネスに活かすための戦略立案やデータ活用促進の取り組みに携わります。
CIOは、Chief Information Officerの略で日本語では最高情報責任者や情報統括役員、情報システム担当役員などと訳されます。企業が掲げる目的達成に向けた情報化戦略の立案や実行、IT資源の有効活用などを促進する役職です。
実務においては、社内に構築しているシステムの保守や運用に携わるほか、ITセキュリティに関する課題の抽出、問題の改善などにも携わります。かつてのCIOは権限が限定的であることが多く、直接的に経営へ関わるケースは多くありませんでした。
しかし、企業におけるIT戦略の必要性やDXの推進など、さまざまな事情により近年ではCIOの権限が拡大しつつあるともいわれています。企業によっては、より経営的な視点でIT、デジタル技術の活用、組織改革を進めるべく、CIOに代わりCDOを設置するケースが増えていくことも考えられます。
CDOが必要とされる理由
CDOが必要とされる理由のひとつに、デジタルマーケティングの普及が挙げられます。デジタルマーケティングとは、IoTやSNS、ビッグデータ、AIなどを活用したマーケティングの手法です。
デジタルマーケティングは、従来とは異なるマーケティング手法であるため、専門知識に基づき業務をリードできる人材が不可欠です。デジタルの専門家と経営側の視点で、必要なデジタルツールの導入や具体的な施策の立案を行う必要があるため、CDOのような役職が求められます。
組織変革が求められているのもCDOが必要とされる理由です。DXを推進し組織やビジネスに変革をもたらすには、組織一丸となり取り組みを進める必要があります。しかし、変革への取り組み内容が大きいほど、従業員からの反発も大きくなる可能性があるのも事実です。
このような場面において、社内調整を行う役割をCDOが担います。反発している部門や従業員に変革の必要性を説いて理解を求め、経営側の視点も交えつつコミュニケーションを取りながら改革を進めていく重要な役割です。
このように、DX化を着実に進めて企業経営を成功へ導くためにもCDOが必要です。DX化をスムーズに進めるには、ITやデジタル分野に強い人材が部門間をまたいで権限を行使する必要があります。そのため、CDOを設置して権限と責任の所在を明らかにし、全社横断的にDX戦略に取り組まなくてはなりません。
CDOに求められる役割
CDOに求められる主な役割のひとつとして、データの徹底活用が挙げられます。インターネットやモバイル端末の普及により、企業が扱うデータはひと昔前に比べ格段に増えました。これらのデータをビジネスに有効活用するのはもちろん、データに基づいた経営の意思決定に役立てるためCDOが力を発揮します。
デジタル技術を用いた新規事業の開発も、求められる役割といえるでしょう。既存ビジネスの市場が成熟している場合、将来性が見込めない場合も考えられます。そのため、CDOは専門分野であるITとデジタル技術を活かせる、新規ビジネスの具体案を模索します。
デジタルマーケティングの推進もCDOの役割です。現状におけるデジタルマーケティング状況の把握と課題の抽出、必要なツールの導入などに携わります。また、デジタルマーケティングの世界は変化が激しいため常にアンテナを張り、最新の技術やマーケティングモデル情報の収集が求められます。
また、内部開発チームの組成に携わるケースも少なくありません。DXの推進やデジタル技術の活用に必要な人材の獲得、育成などに取り組みます。
CDOに必要とされるスキル・資質
CDOに必要なスキルとして、高度なITリテラシーが必要です。DXを推進するには、高度かつ専門的なIT、デジタルの知識と使いこなせるスキルが必要です。特定のデジタル技術にどのような用途があるのか、どのような仕組みでどう活用できるのかといった理解力も求められます。
従業員のITリテラシーを高めるスキルも必要です。ITリテラシーの低い従業員がいると、セキュリティインシデントの発生を招きます。高度なデジタル活用やDX戦略に取り組んでいても、情報漏えいや改ざんなどを招いたとなると、企業の信頼度が大きく失われます。
また、DX化は全社横断的な取り組みが必要です。CDOは部門間の調整を行うのにコミュニケーション能力が求められます。DX推進の取り組みに異議を唱える従業員が現れた場合には、必要性やメリットなどをきちんと伝える必要もあるため、相手に合わせてわかりやすく情報を伝えられる力も必要です。
さらに、組織におけるDX推進をリードする存在であるため、リーダーシップも求められます。CDOが強いリーダーシップを発揮し、各部門や従業員をけん引できればDX化も円滑に進められるでしょう。
企業に変革をもたらし新たな価値を創出するには、さまざまなビジネスへの理解が必要です。幅広いビジネスに精通していれば、デジタル技術やデータを活かした新たなビジネスの創出につながります。ビジネスチャンスが訪れたとき、素早く判断してアクションを起こせる意思決定スピード、行動力も求められます。
このように、CDOにはさまざまなスキルや資質が必要ですが、その分大きなやりがいを感じられる役職であることも間違いないでしょう。
まとめ
DXを成功へ導くには、全社横断的に権限を行使できるCDOの存在が欠かせません。日本でもCDOを設置する企業は今後も増加すると考えられます。高いITリタラシーや調整能力を携え、経営者の視点を持ってDX化を牽引していけば、優秀なCDOとしてビジネスに大きく貢献できる存在になれるでしょう。