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DXにおけるクラウドの役割とは?事例も交えて活用方法を解説

DXにおけるクラウドの役割とは?事例も交えて活用方法を解説

デジタル技術を活用したビジネス変革「DX」は、現代企業にとって不可避な課題です。しかし、その実現は容易ではありません。そこで注目されるのがクラウドです。

クラウドは、DX推進における強力なツールであり、コスト削減、業務効率化、新たなビジネスモデルの創出など、さまざまなメリットをもたらします。
本記事では、DXにおけるクラウドの役割を解説し、具体的な活用方法を事例を交えて紹介します。

DXとは

DXとは

DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、「デジタル技術を使って、私たちの生活や社会をよりよい方向へ変えていくこと」を意味します。

DXを進める主な目的は、企業の業務効率化と新たな価値を創造することです。デジタル技術を使って、今まで人の手で行っていた作業を自動化したり、簡略化したりすることで、時間やコストを削減したり、今までになかった新しい商品やサービス、ビジネスモデルを生み出すことを狙いとしています。

例えば、スマートフォンの普及によって、コミュニケーションや情報収集など、さまざまなことがより便利になりました。これは、DXの代表的な例といえるでしょう。DXは、企業だけでなく、行政や教育など、多くの分野で進められています。

DXにはクラウドが必要か

DXにはクラウドが必要か

デジタル技術を利用して企業や個人をよりよくすることがDXの目的です。デジタル技術の代表例がクラウド技術であり、DXにはクラウドが欠かせないといわれています。ここでは、DXとクラウドの関係性について解説します。

クラウドとは|クラウドの基礎知識

クラウドとは、インターネット経由で必要なサービスや機能を利用できるシステムです。従来のオンプレミス型システムとは異なり、自社でサーバーやストレージなどの設備を保有する必要がなく、必要なときに必要な分だけ利用できるため、無駄なリソースやコストを削減できることがメリットです。

クラウドサービスは、以下の3つに分類されています。

  • IaaS (Infrastructure as a Service):
    サーバーやストレージなどのITインフラをサービスとして提供
  • PaaS (Platform as a Service)
    アプリケーション開発に必要なプラットフォームをサービスとして提供
  • SaaS (Software as a Service)
    アプリケーションソフトウェアをサービスとして提供

例えば、自社でインフラの設計は行わず、アプリケーションの開発のみを行いたい場合は、PaaSサービスを利用します。PaaSサービスでは、ITインフラはクラウド事業者が管理を行っているため、利用者は開発に専念できるというメリットがあります。IaaS、PaaS、SaaSは、それぞれ特徴があるため、用途に合わせて最適なサービスを選択するようにしましょう。

DX推進にクラウドは必要な理由

クラウドは、DX推進に欠かせない技術といわれています。なぜクラウド技術が必要なのか、その主な理由を4つ紹介します。

スムーズにDXを進められる

1つ目の理由は、クラウドは契約後すぐに利用できるため、DXを迅速に進めることができることです。従来のオンプレミス型システムの場合、サーバーやストレージなどの設備を導入するのに時間がかかりますが、クラウドであれば、契約すればすぐに利用できます。

また、クラウドサービスは常に最新の状態にアップデートされるため、システムの保守・運用にかかる時間も削減できます。

導入コストが抑えられる

2つ目は、導入コストが抑えられるためです。従来のオンプレミス型システムの場合、サーバーやストレージなどの設備を購入する必要があるため、初期投資が大きくなります。初期費用が大きい場合、企業では費用の調達や予算の確保に時間がかかるため、業務のDX推進にもさらに時間がかかります。

一方でクラウドは、初期投資を抑え、必要なときに必要な分だけ利用できるため、コストを削減できます。しかし、すべてのコストを削減できるわけではありません。システムの運用・管理にかかる人件費や電気代などのランニングコストは継続して発生するため注意が必要です。

人的リソースの負荷軽減

3つ目の理由は、従業員の負担が軽減できるためです。クラウドは、システム運用や管理をクラウド事業者に任せることができるため、人的リソースを他の業務に集中できます。

従来のオンプレミス型システムの場合、システムの運用・管理は自社で行う必要があります。そのため、システム管理の専門知識を持った人材が必要となり、人的リソースの負荷が大きくなります。しかし、クラウドサービスでは、運用・保守・管理はクラウド事業者が行うため、人的リソースを有効活用できます。

スムーズなデータ連携ができる

4つ目の理由は、データ連携がスムーズになるためです。クラウドは、場所や時間に縛られずにデータにアクセスできるため、部門間のデータ連携をスムーズに進めることができます。

従来のオンプレミス型システムの場合、セキュリティ強化のためデータを暗号化してデータを送受信したり、データ送信用のケーブルを接続する必要があるなど、手間がかかっていました。一方で、クラウドサービスには、データ連携を容易にする機能が搭載されているため、部門間のデータ連携をスムーズに進めることができます。

DX推進にクラウドを利用する際の注意点

DX推進にクラウドを利用する際の注意点

近年、DX推進においてクラウドサービスの利用が注目されています。しかし、クラウドサービスを導入すれば必ずしもDXが成功するわけではありません。以下では、DX推進にクラウドを利用する際の4つの注意点について解説します。

利用者がクラウドを活用できないこともある

クラウドサービスは、ITリテラシーが高くない従業員には、使いづらいツールと感じる場合があります。特に、これまでオンプレミス環境で業務を行ってきた従業員にとっては、操作方法やデータ管理方法の違いに戸惑う可能性があるでしょう。そのため、事前に十分なトレーニングやサポートを実施する必要があります。トレーニングやサポートをおろそかにすると、利用者がクラウドサービスを活用できず、DX推進が阻害される恐れがあります。

そもそも社内で合意が得られない

クラウドサービス導入には、コストやセキュリティ、データの所有権など、さまざまな課題があります。

クラウドサービスはセキュリティ的に問題があるといわれ、多くの企業で導入が見送られていた過去があります。導入後に考えられる課題について事前に十分な議論を行い、社内で合意を得ておくことが重要です。もし社内で合意が得られなければ、導入後にトラブルが発生したり、プロジェクトが中止になったりする可能性があります。

セキュリティリスクを考慮する

クラウドサービスは、インターネット経由で利用するため、セキュリティリスクが問題視される傾向があります。情報漏えいや不正アクセスなどのリスクを回避するために、適切なセキュリティ対策を行いましょう。具体的には、アクセス制御やデータ暗号化などの対策を検討する必要があります。

自社に合わせたカスタマイズが難しい

クラウドサービスは、多くの企業が利用するために提供されている汎用的なサービスです。そのため、自社の業務に特化した独自機能をつけるなどカスタマイズが難しいといわれています。

もし自社に合わせたカスタマイズが必要な場合は、事前にベンダーに確認する必要があります。場合によっては、追加費用が発生したり、カスタマイズが不可能な場合もあります。

DXを推進できるクラウドサービスの例

DXを推進できるクラウドサービスの例

ここまで解説してきたように、DXを行う上でクラウドサービスが必須となります。ここから、DX推進に役立つクラウドサービスを紹介します。

グループウェア

代表的なDX推進のためのクラウドサービスが、グループウェアです。多くの企業がDX推進のためにツールを導入しています。その中でも、グループウェアは、情報共有やコミュニケーションの効率化、業務の可視化など、さまざまな効果をもたらすDX推進の強力なツールとして注目されています。

グループウェア導入をすると、メール、チャット、ビデオ会議などのコミュニケーションツールやファイル共有、スケジュール管理、タスク管理、掲示板など、企業やプロジェクトを管理するためのさまざまなツールを使用可能です。グループウェアを導入しても機能を使いこなせず、導入費用が無駄になるケースもあるため、導入時は特に、DXの目的を明確にしておきましょう。

ワークフローシステム

ワークフローシステムを利用して、従来の紙ベースの業務を電子化することで、書類作成や承認、共有などの作業のDX推進ができます。また、自動化により業務量を削減することで、人材をより付加価値の高い業務に集中させることも可能です。さらに、ペーパーレス化によるコスト削減や環境負荷の軽減にもつながります。

Web会議ツール

会議のDXを推進するツールがWeb会議ツールです。遠隔地にいる社員や顧客との会議や商談を、オンラインで簡単に実施できます。また、録画機能や資料共有機能などの活用で、会議の効率化や情報共有の促進にもつながります。さらに、従業員の移動にかかる費用の削減、ワークライフバランスの向上も期待できるでしょう。代表的なWeb会議ツールとして Zoom、Teams、Google Meetがあります。

オンラインストレージ

オンラインストレージを利用して、社内のファイルサーバーをクラウド上に移行することで、場所やデバイスを選ばずにデータへのアクセスと共有が可能になります。また、バージョン管理機能やセキュリティ機能などを活用することで、データの安全性と利便性を向上させることができます。さらに、オンプレミス環境の運用コストの削減もできます。
場所にとらわれず業務を行えるため、Web会議ツールと同様に、リモートワークの促進やワークライフバランス向上が期待できるでしょう。
具体例としては、Dropbox、Google Drive、OneDriveがあります。

CRM

CRMを導入し、顧客情報の管理、営業活動の記録、顧客分析などを一元的に行うことで、顧客との関係性を強化し、顧客満足度向上が見込めます。また、顧客分析機能を活用することで、潜在的なニーズを把握し、効果的なマーケティング活動も可能になります。さらに、営業活動の効率化による売上向上にもつながるでしょう。
代表的なCRMツールは、Salesforce Sales Cloud、kintone、Zoho CRMなどです。

BIツール

BIツールを導入し膨大なデータを収集、分析、可視化することで、経営層は客観的なデータに基づいた意思決定が可能になります。また、データ分析結果を業務改善に活用することで、業務効率化やコスト削減も可能です。さらに、新たなビジネスチャンスの発見にも貢献できます。
代表的なBIツールは、Tableau、Power BI、Looker Studioです。

DX推進のクラウド活用の成功事例

DX推進のクラウド活用の成功事例

最後に、クラウドサービスを利用してDX推進を成功させた企業の事例を紹介します。

有限会社ゼムケンサービス

女性技術者比率8割という驚異的な数字を誇り、建設業界の常識を覆すDX成功事例として注目を集める有限会社ゼムケンサービスを紹介します。ゼムケンサービスでは、全員参加のDX勉強会や研修、代表によるビジョン共有の場を設け、全社員のITリテラシー向上に取り組んでいます。

SNSや社内稟議システム導入による情報共有の効率化、クラウド共有、モバイル端末支給によるテレワーク環境の整備など、DXによって働き方改革を推進してきました。

DXによって働き方改革を実現し、ワークライフバランスやワークシェアリングの仕組みを浸透させました。その結果、子育て中や介護中の女性など、さまざまな背景を持つ人材が活躍できる環境を構築し、1人当たり売上高は業界平均を大きく超えています。

参考:DX Selection2023(経済産業省)

株式会社Mountain Gorilla

株式会社Mountain Gorillaは、クラウドサービス「カカナイ」などを提供するIT企業です。同社は、経営者をデジタル人材として位置付け教育するなど、社内全体にDX推進体制を整え、研究チームを外部機関と連携させて技術力を高めています。

グループウェア導入や情報収集とデータ活用などを積極的に行い、未来予測や業務改善サポートなどの付加価値の高いサービスを既存ユーザーに提供する取り組みも進めています。

元々はWebシステムが強みの会社で、DXに関する専門性が乏しく、推進者がいない状況でした。そこで、まずは少額のツールを導入し、社員が効果を実感できる環境を作りました。その後、リモートワークと出社を組み合わせたハイブリッドな働き方に適した技術センターも開設しています。この工夫により、社員が効果を実感し、新たなツール導入などを自主的に提案するようなDX推進に理解のある社風へと変化しました。

参考:DX Selection2023(経済産業省)

株式会社ソロン

佐賀市と久留米市を拠点とする地域専門型の不動産会社、株式会社ソロンの事例を紹介します。株式会社ソロンは、Kintoneを基盤としたデジタル化推進により、顧客とのコミュニケーション量・質を劇的に向上させ、事業拡大と新事業立ち上げを実現しました。

社員のITリテラシー向上のための資格取得推奨・報酬制度や、各部門方針にDX項目を設けるなど、積極的に人材育成に取り組みました。同時に、社内データはKintoneを基盤に蓄積し、営業活動報告や社内申請などさまざまなアプリを社内で開発することで、部門横断的なデータ活用を推進しています。

また、Chatwork導入により、社長も含めた全社員が適宜非同期なコミュニケーションを実施することで、不要な会議を削減し、限られた時間をより有効活用できる環境を整えました。

クラウドサービス選定ポイント

クラウドサービス選定ポイント

デジタル化が進む現代において、企業の競争力を維持するためには、DXへの取り組みは不可欠です。DXを成功させるためには、業務効率化や新たなビジネスモデルの創出など、企業の目的に合ったクラウドサービスを選択することが重要です。

DXの目的に合ったツールを選ぶ

DXといっても、その目的は企業によってさまざまです。例えば、業務効率化、顧客満足度向上、新規事業創出などが考えられます。まずは、自社のDXの目的を明確にしましょう。

目的が明確になったら、その目的に合致した機能を持つクラウドサービスを選びましょう。例えば、業務効率化を目的とする場合は、オンラインストレージやワークフローツールなどが有効です。顧客満足度向上を目的とする場合は、CRMやWeb会議システムなどが有効でしょう。

従業員のスキルに合った使いやすいツールを選ぶ

どんなに優れた機能を持つクラウドサービスでも、従業員が使いこなせなければ意味がありません。従業員のスキルに合った、使いやすいツールを選ぶことが重要です。

導入前に、無料トライアルなどを活用して、実際に従業員が使い勝手を確認することをおすすめします。また、操作方法を学べるチュートリアルやマニュアルが充実しているかどうかも確認しましょう。

安全性・セキュリティ性の高さで選ぶ

クラウドサービスには、機密情報を含む重要なデータを扱うものも多くあります。そのため、安全性・セキュリティ性が高いサービスを選ぶことが重要です。

サービス提供事業者のセキュリティ対策レベルを評価する国際規格である「ISO/IEC 27001」を取得しているサービスを選ぶとよいでしょう。また、データの暗号化やアクセス制御などのセキュリティ対策がしっかりとしているかどうかも確認しましょう。

無料トライアルがあるツールを選ぶ

実際に使ってみないと、ツールの使い勝手や機能が自分に合っているかどうかはわかりません。そのため、無料トライアルがあるツールを選ぶことをおすすめします。無料トライアル期間中に、ツールの使い勝手や機能を十分に確認してから、導入を検討しましょう。

サポートが手厚いツールを選ぶ

多くのトラブルや疑問は、導入後に出てきます。そのため、電話やメールだけでなく、チャットやオンラインサポートなど、さまざまなサポート方法を提供しているサポートが手厚いツールを選びましょう。

まとめ

初期導入コストの削減や場所、人員のリソース削減など、多くのメリットがあるため、企業のDX推進のためには、クラウドが欠かせません。

データ分析やAIの活用など、最新のIT技術を利用したDXを実現するためにもクラウドサービスが必須です。

企業のさまざまな業務のDXをトータルで推進する場合はグループウェアを導入、その他、DXの目的が決まっている場合は、目的に沿ったサービスを選びましょう。

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