メーカーにとって、無駄が少ない効率的な生産体制を構築することは、業績に直結する重要な課題です。そのときに重要な役割を担うのがプロセス設計の仕事です。本記事ではプロセス設計の基本的な仕事内容や、そのサポートに役立つソリューション「AVEVA Process Simulation」の紹介をします。
プロセス設計とは？
「プロセス設計」または「プロセスエンジニアリング」とは、石油・ガスの製造をはじめとするモノづくりに関わる生産現場で、製品の生産工程や設備（プラント）を設計・改善・再設計することです。その担当者は一般的に「プロセスエンジニア」または「プラントエンジニア」と呼ばれます。プラントは多くの設備や機器が組み合わさって構築されており、これらの一連の流れがプロセスです。プロセス設計では、原材料が製品になるまでの生産プロセス、そのプロセスを実行する機器や設備、それらが集まったプラント全体まで網羅的に設計します。企画段階からの設計はもちろん、既存プロセスの管理や維持、改善も行うことで、コストを抑えた効率的な製造現場の実現に貢献します。
生産技術との違い
生産工程の構築を担うという点でプロセス設計と生産技術は似ていますが、以下の点で異なります。
生産技術は人員配置などを含めた生産体制の全体を考え、効率のいい生産環境を整えるための業務全般を担当します。他方のプロセス設計は製品を生成する機器や設備における工程にフォーカスし、いかに高品質な製品を安定的かつ効率的に生成できるかを考えます。
生産技術とプロセス設計はこのように細かな違いはあるものの、仕事内容や必要となる知識・スキルには共通する部分も多いので、求人広告などでは兼務するような形で募集されていることもあります。
プロセス設計の主な仕事内容
プロセス設計の主な仕事は次の4つです。
設計企画・配置計画
プラントを建設するにあたり、さまざまな企画や計画を立てます。主に、下記のような文書を作成します。
- 基本設計条項（プラントの基本設計を示した文書）
- プロセスフロー図（各工程を担う機器を簡単な線図で示した図）
- マテリアルバランス（各工程の運転条件や組成などを示した表）
- 配置図（プラント内の機器・設備の位置を示した図）
機器データシート・プラント設計図の作成
プラントを構成する各機器の詳細設計や調達を行う部門へ、企画したプロセス設計を伝えるデータシートを作成し、共有します。また、これまでに作成した文書から詳細な設計図を作成します。これは多くの部門やクライアントとの話し合いや設計フェーズによって記載する内容が変化していき、次項の試運転・性能試験まで必要となる重要文書です。
試運転・性能試験
プラントの建設が終わったら、完成したプラントが設計どおりに稼働するかを確認する試運転を行います。負荷が低い状態から実際に製品の生成を始めて、起こった不具合を解消していきます。不具合がなくなったら最大稼働率でプラントを運転し、製品の生産量や品質に問題がないかを確認します。これを終えて、プラント建設が完了となります。
生産工程の見直し・再設計
稼働が始まったプラントの管理・維持を行いながら、出てきた課題に応じて生産工程を見直し、システムなどの再設計を行います。さらに原料や素材、設備などの全体的な観点から検証を行い、品質向上に貢献する改善策を提案します。
生産工程全体の連携を行う
企画段階からプラント運転に携わっているプロセスエンジニアは、各部門の橋渡し役としても活動します。課題の抽出や検証などのプロセスにおいても、開発部門や製造現場などと円滑なコミュニケーションを図りながら、生産工程全体の連携を行います。
プロセスエンジニアリングを効率化する「AVEVA Process Simulation」とは？
「AVEVA Process Simulation」は、プロセスエンジニアの仕事をサポートするプラットフォームです。プロセスエンジニアリングにおける設計、シミュレーション、トレーニングにまで幅広く活用でき、生産工程全体のライフサイクルを単一のプラットフォームで管理できるツールです。クラウドベースで利用でき、生産性の向上のみならず生産現場のDXに大きく貢献します。「AVEVA Process Simulation」の概要は以下の通りです。
【ユーザーインターフェイス】
役割別にユーザーインターフェイスを提供することで、各ユーザーに最適な仕方で情報を表示します。これにより、各ユーザーは直感的に操作し、必要な情報にすばやくアクセス可能です。また、プロセス設計で従来使用されているプログラムを最大50件、単一のインターフェース上に集約できます。
【次世代エンジニアの育成】
最新の標準技術を採用し、画期的な使いやすさを実現しています。直感的なユーザーインターフェイスを採用しており、実行ボタンを省略することで即座にシミュレーション結果を表示可能です。このような使いやすいプラットフォームを活用することは、新たなプロセスエンジニアの育成や研修を行う際にも役立ちます。
【プロセスに関するデジタルツインの作成】
単一のシミュレーションで、「定常シミュレーション」「ハイドロリック・サイジング」「動的シミュレーション」の3種のモードを随時切り替えながら利用できます。また、カスタムモデルはノーコードで利用できるので、誰もが簡単かつ迅速に使い始められます。さらに、「AVEVA Unified Engineering」、「AVEVA PI System」等の製品とシームレスに連携し、エンジニアリング製品群との統合運用、オペレーションデータの活用等を行うことが可能です。
「AVEVA Process Simulation」の特徴
「AVEVA Process Simulation」は、プロセス、ユーティリティ、フレアシステムのシミュレーションプラットフォームです。以下にその特徴を詳しく解説します。
化学プロセスのシミュレーションを行える
「AVEVA Process Simulation」は、化学系プロセスシミュレーションに最適です。特に、多くのリサイクルループを伴う複雑なシステムにおいて効果的に使用できます。従来のシミュレータでは操作に時間がかかることがある中で、「AVEVA Process Simulation」はスムーズな操作性を提供します。
プロセスユーティリティで分析と動的シミュレーションが行える
プロセスユーティリティの担当者は、ひとつのシミュレーションモデル内で冷却水や蒸気バランスなどを構築できます。そして、モードを随時変更して動的シミュレーションや配管フローネットワーク分析を実行可能です。これにより、プロセスユーティリティに関する詳細な分析やシミュレーションを効率的に行えます。
フレアネットワークの評価が簡単に行える
フレアライブラリを利用することで、複数の脱圧シナリオを簡単に評価し、圧力の予測をすぐに行うことが可能です。フレアネットワークの評価は、上記の化学プロセス及びプロセスユーティリティと同一のソフトウェア環境で行えるので、設計変更時の調整も簡単にできます。
カスタムモデル内で知見を管理できる
「AVEVA Process Simulation」では、エンジニアが直感的なモデリング機能を使用してプロセスモデルを拡張できます。自社独自の知見やノウハウを組み込み、管理することも可能です。これにより、自社に最適な施策を継続的に活用できます。
まとめ
プロセス設計はメーカーなどの生産現場において生産体制を見直し、再設計する重要な業務です。各工程の課題を抽出し、効率的な生産体制と低コスト化・良質化を実現します。その仕事を円滑に遂行できるようにするには、使いやすさと高い機能を兼ね備えた革新的なソリューション「AVEVA Process Simulation」の導入が役立ちます。
