医療・製薬

PACSとは?医療用画像管理システムについて

医療画像撮影装置で撮影した画像をデータベース内に保管して管理するシステム、PACS(パックス)が、医療の現場に浸透しつつあります。PACSとはどのようなシステムなのでしょうか?仕組みやメリット、導入による業務効率化についてご紹介します。

PACSとは?医療用画像管理システムについて

先端技術とAI倫理がもたらす「より良い医療のかたち」

PACS(パックス)とは

医療の現場において1990年ごろから徐々に導入が進んできたシステムが、PACS(パックス)です。PACSとは、「Picture Archiving and Communication Systems」の略で、「医療用画像管理システム」または「医療画像保管伝送システム」などとも呼ばれています。

現在では、病院や歯科医院など、多くの医療機関がPACSを導入しています。これは、CR・CT・MRIなど医療画像撮影装置で撮影した画像を電子的に保存して、院内ネットワーク内で配信するシステムです。

従来は画像を物理的なフィルムで管理していましたが、PACSでは画像データとして医療画像撮影装置から受信します。撮影した画像データは、ネットワークを通じてデータベースに転送され、保管・管理されます。

医師など医療従事者は、ビューワーを搭載したパソコンやタブレットなどから、必要に応じて画像を閲覧・参照できます。

PACSには、各医療機関の中だけで閉じたネットワークを構成して運用する「院内PACS」と、公開用サーバーを用意して、周辺の医療機関とも情報を共有する「地域連携PACS」があります。

PACSを導入するメリット

各医療機関でPACSを導入するメリットは以下のようなものが挙げられます。

業務の効率化

フィルム管理では、撮影画像を見たいときは膨大なフィルムの中から目的のフィルムを探すという手間がかかります。PACSなら必要な画像だけを瞬時に表示することが可能です。また、オーダリングシステムなどの院内システムや電子カルテなどを連携させることで、さらなる業務効率化も期待できます。

過去の画像との比較

PACSで管理する画像データはいつでも参照できるため、同じ患者でも過去の画像と新しく撮影した画像との比較が容易です。例えば胸部の検査では、これまではなかった"影"が、直近の検査で認められれば異常であると判断します。一方、5年前・3年前にも同じ影があり変化が認められないときは、ほとんどのケースで精密検査の必要なしと判断します。物理的にフィルムを動かすことなく、画像診断医が読影を行えるため、角度の高い診断につながります。

人的ミスの回避

物理的なフィルムで画像を管理すると、フィルムの取り違えや紛失が発生するリスクが高まります。患者IDや名前を誤認してファイリングしてしまったり、教育目的で貸し出した後に返還されなかったなど、フィルムの取り違えや紛失の原因は様々です。ほとんどの場合は、ヒューマンエラーによるものです。

PACSでは、画像をIDと紐付けてデータとして保管しているため、人が行う処理に起因する問題が回避できます。

地域医療の向上

地域の医療機関と連携して「地域連携PACS」を構築すれば、他の医療機関で撮影した画像データなどを参照することも可能になります。同様の疾患を持つ他の病院の患者の画像データも参考にしながら、適切な処置を施せます。

画像配送の迅速化

画像診断医は主治医の依頼により撮影画像を確認します。フィルムで画像診断医に配送する場合、現像したフィルムを袋に入れ、IDを付け、袋に見出しを添付して人手で画像診断医師の元に配送する必要がありました。PACSでは、主治医が依頼ボタンを押すだけ、または自動的に撮影画像が画像診断医に配送されます。画像配送にかかる事務・運搬作業を削減し、病院運営を効率化させることができます。

医療画像の保存義務について

医師法では、診療録であるカルテは、5年保存する義務があると規定されています。また、医療画像の保存義務は、医療法により2年と定められています。

一方、がん治療では治療成績を5年生存率で判断しますが、医療法や医師法に準拠すると、がん患者は治療の過程で過去の治療記録が破棄されてしまうことになります。また、医療法や医師法の保存規定どおりの運用では、医師の育成や臨床研究にも支障をきたしてしまいます。

このため、PACSが浸透する以前にも、医療画像の永久保存に取り組む医療機関もありました。ただ、この病院では、結果として、増え続けるフィルムすべてを院内で保管することが不可能となり、倉庫の増設を行ったものの、フィルム保管費用だけで年間1億円かかったといいます。結局、10年ほどでフィルムの廃棄に着手せざるを得ず、永久保存は断念しました。

PACSではフィルム倉庫も持たずに画像をデータとして永久に保存できることにより、病気の再発時にも初回治療時のデータを参照することができます。がん治療においても、5年生存率での治療成績判断ではなく、10年生存率で判断すべきといわれ始めており、画像の永久保存への需要は高まるばかりです。医療の効率化や質向上の面から、PACSは医療の現場に必要不可欠なものとなっています。

まとめ

角度の高い診断のためには、医療画像の永久保存が必要であるものの、フィルムでの保管は実質的に不可能です。

このためPACSが医療の現場に浸透しつつあり、今や周辺の医療機関とも連携して地域医療の効率化や利便性も進められています。PACSの導入は、今後もますます加速していくでしょう。

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