医療現場においては、さまざまなモダリティを使用する場面があります。そのため、医療従事者にとっては、モダリティに対する深い理解が必要不可欠です。
では、そもそもこのモダリティとは、どのようなものなのでしょうか。ここでは、医療分野におけるモダリティについて詳しく説明します。
医療機器におけるモダリティ(Modality)とは
モダリティ(Modality)とは、一般的には「様式」や「様相」という意味です。医療分野においては、医療機器の種類やタイプを表す言葉として「モダリティ」が使用されています。特に実際の医療現場においては、医用画像機器を総称してモダリティ機器と呼ぶケースがほとんどです。モダリティ機器は、現代の高度な治療技術を提供するために無くてはならない存在だといえます。
モダリティに分類される医療機器について
医療現場では、さまざまなモダリティ機器が使用されています。たとえば、強い磁場と電波によって体の断層を撮影するMRI(磁気共鳴診断装置)は、代表的なモダリティです。これは、現場ではMRと呼ばれています。また、X線によって体の断層を撮影するCT(コンピュータ断層撮影装置)も、モダリティのひとつに含まれるものです。
モダリティにはその他にも、同じくX線を使用して臓器や血管などを画像化するCR(コンピュータ・ラジオグラフィ)やDR(デジタルX線撮影装置)、XA(血管造影X線診断装置)、US(超音波診断装置)、ES(内視鏡装置)などがあります。
医様画像の国際企画DICOMが定める「モダリティコード」
モダリティには、DICOMの「モダリティコード」が定められています。これはモダリティの医療機器の分類を、アルファベット2文字で表したものです。ここからは、モダリティを活用するうえで、DICOMのモダリティコードとはどのようなものなのかを説明していきます。
「DICOM」とは
DICOM(ダイコム)とは、MRIやCTをはじめとする医療機器で撮影したデータを扱うために定められた国際標準基準で、「Digital Imaging and Communications in Medicine」の頭文字です。DICOMがあることで、撮影した画像や動画のデータを検索したり保存したりできます。
DICOMは、1993年に北米放射線学会(RSNA)によって定められた新しい基準です。もともとは、1985年に北米放射線学会(ACR)と米国電機工業会(NEMA)が定めた「ACR-NEMA300-1985」という規格がありましたが、医療機器の発展に伴い、基準も一新されました。
NEMAが、この具体的な基準に関する規格書を出版しています。DICOMは常に更新され続けており、新しく登場した機器が追加されたり、廃止またはほとんど使用されなくなった機器が削除されたりしています。DICOMの規格や説明は英語で表記されているため、社団法人日本画像医療システム工業会(JIRA)などが国内向けに和訳した内容を公開しています。
なお、DICOMが定める基準については、解釈が複数ある部分も存在します。モダリティを開発している企業によって異なる対応をしていることもあるため、注意が必要です。ただし、DICOMに対応しているモダリティを販売するには、対応している内容を具体的に示したり、補償範囲を正確に示したりすることが求められています。そのため、実際にDICOMに対応した機器を使用する際は、どのような内容が示されているかきちんと確認したほうがいいでしょう。このような内容の提示は「コンフォーマンス・ステートメント(適合性宣言)」とよばれています。
DICOMが定めるモダリティコード
DICOMによって定められているモダリティコードは、さまざまなものがあります。機器とモダリティコードの対応について例をあげると、以下のとおりです。
- AS(血管顕微法)
- BI(バイオ磁気イメージング)
- CD(カラーフロードップラー)
- CF(X線映画透視法)
- CP(コルポスコピー)
- CR(コンピュータラジオグラフィ)
- CS(膀胱鏡検査)
- CT(コンピュータトモグラフィ)
- DD(2重のドップラー)
- DF(デジタル式蛍光透視診断法)
- DG(透過グラフ)
- DM(デジタル鏡検)
- DS(デジタルサブトラクション血管造影法)
- EC(超音波心臓検査)
- ES(内視鏡検査)
- FA(フルオレセイン血管造影)
- FS(眼底検査)
- LP(ラパロスコピー)
- LS(レーザー面スキャン)
- MA(磁気共鳴アンギオグラフィー)
- MR(磁気共鳴)
- MS(磁気共鳴スペクトルスコープ)
- NM(核医学)
- OT(他)
- Pt(PET)
- RG(X線撮影イメージング)
- ST(単一光子放射形コンピュータ断層撮影)
- TG(温度記録)
- VF(ビデオフルオログラフィー)
まとめ
医療分野で活用されるモダリティにはさまざまな種類があります。医療の進歩とともに技術開発が進んでおり、高機能で新しいモダリティもどんどん登場しています。モダリティを活用する場合、DICOMが定めるモダリティコードについても把握することが大切です。モダリティについて理解を深め、正しく活用しましょう。