医療・製薬

医療におけるICTとは? 導入のメリットと課題について紹介

医療におけるICTとは? 導入のメリットと課題について紹介

ICTの活用は医療業界においても大きなテーマになっています。しかし、医療におけるICTの必要性やメリット、課題については十分に理解されていないことも少なくありません。そこで本記事では、医療におけるICTの概要をはじめ、その必要性や現状、活用メリット、導入時の課題、そして課題解決に役立つソリューションの紹介をします。

先端技術とAI倫理がもたらす「より良い医療のかたち」

医療におけるICTとは

ICTとは"Information and Communication Technology"の略称で、「情報通信技術」を指します。つまり、医療におけるICTとは、医療のために活用される情報通信技術のことです。具体的には、電子カルテやオンライン診療、AIを用いた診断システムなどがその代表として挙げられます。病院のホームページや予約管理システムなどもICTなくしては実現できません。

これらのICT技術は、医療現場の業務効率化に加えて、医療サービスの品質や利便性を向上させるための基盤となります。昨今では、ICTを活用して医療体制を改革する「医療DX」を推進する動きも活発です。ICTとDXの詳しい関係については以下の関連記事をご参照ください。

関連記事:ICTとDX・IoTなどの違いとは?それぞれの事例を踏まえて分かりやすく解説

医療のICT化が必要な理由

医療分野でのICT化が強く求められている背景には、少子高齢化がもたらすさまざまな問題が大きく関係しています。まず、少子高齢化が進むことで、医療・介護が必要な高齢者人口が増加します。その一方で、労働力人口は減っていくので、医療従事者の不足および業務負担の増大がますます加速する見込みです。また、国民1人当たりの医療・介護費用の負担が増していくのも問題です。ICTによる業務効率化や医療サービスの充実・革新は、こうした社会的課題の解決に資すると考えられています。

医療のICT化の現状

上記の事情から医療のICT化の必要性は広く認められており、多くの医療機関がその推進をしています。例えば、2020年時点で電子カルテは病院全体で57.2%、400床以上の病院では実に91.2%も導入されている状況です。

さらに、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、オンライン診療の必要性も強く認識されるようになりました。このオンライン診療は感染症対策のみならず、地域の医療格差の面でも必要とみなされています。

とはいえ、国全体で見た場合、医療のICT化はまだ途上であり、他の業界と比べると遅れているという声もあります。そのため、今後もさらなる普及・推進が期待されているのが現状です。

参照元:厚生労働省|電子カルテシステムの普及状況の推移

医療のICT化によって得られるメリット

医療のICT化は、以下のように医療従事者と患者双方にメリットをもたらします。

業務を効率化できる

大きなメリットとして挙げられるのは、医療現場の業務効率化です。例えば、かつてカルテは手書きで記入するもので、必要な情報を探すのにも時間がかかることが一般的でした。しかし、現在では電子カルテの導入によって、デジタル上で簡単に情報を入力・検索できるようになっています。この電子カルテの例に示されるように、ICTの活用は医療従事者の負担を軽減し、患者の診療に一段と集中できる環境をつくるために有効です。

地域格差の解消につながる

ICT化は、医療サービスの地域格差を解消する可能性も秘めています。過疎化が進んでいる地域では、病院の閉鎖や医師不足が進み、患者が医療へアクセスするのが困難な状況です。こうした地域において、オンライン診療は画期的な解決策として期待されています。オンライン診療が普及すれば、遠隔地の患者や移動が難しい高齢者も自宅から診察や服薬指導を受けることが可能になります。

新しい治療や薬の開発に役立てられる

医療のICT化によって、患者の臨床データが効率的に収集・蓄積されることで、新しい治療法や新薬の開発が進むこともメリットです。例えば、AIによる画像診断は、すでにがんの早期発見などに活用されています。また、一部の製薬会社では、AIを活用して創薬プロセスの効率化および期間短縮を進めています。

医療のICT化における課題

他方で、医療のICT化を進めるにあたっては、セキュリティやシステムエラーへの対策、さらには病院ごとの対応の隔たりなどが課題として存在します。

セキュリティ対策が求められる

電子カルテやオンライン診療の導入など、医療のICT化にあたっては、必然的に患者の個人情報をデジタルで管理することになります。医療情報は患者の重要なプライバシーに当たるため、万が一にも情報漏洩が生じないように、強固なセキュリティ対策が必要です。また、データの取り扱いについて患者へ適切に説明して同意を得ることや、そのためのマニュアルを整備することも求められます。

システムエラーの可能性がある

ICTへの依存度が高まると同時に警戒されるのが、システムエラーの発生リスクです。デジタル技術に依存する医療システムは、災害や停電、ハードウェアの故障などによって使えなくなった場合のリスクが極めて大きなものとなります。緊急性の高い患者が運ばれてきたときなどに「診療ができない」「患者の情報にアクセスできない」といった事態に陥らないよう、バックアップシステムの整備や、エラー発生時の対応マニュアルの策定などが必要です。

病院によって対応に差がある

医療のICT化は病院の規模や地域によって対応に差が出やすいことも大きな課題です。例えば、前掲した2020年時点のデータによれば、電子カルテの普及率は400床以上の大病院では9割を超える一方、200床未満の病院や診療所では5割にも達していません。

また、個人レベルで見てもICTのスキルやリテラシーに差が出やすいのは問題です。せっかくICTツールを導入しても、職員間でスキルに差があると、病院全体で真に使いこなすことはできません。そのため、関係する全職員が新しいシステムを扱えるように研修を行ったり、誰もが使いやすいシステムを導入したりする工夫が必要です。

参照元:厚生労働省|電子カルテシステムの普及状況の推移

まとめ

医療のICT化は、医療現場の業務効率化に加え、地域格差の解消、新しい治療や薬の開発に大きく貢献しています。しかし、セキュリティ対策やシステムエラーへの対応、病院による導入・運用の格差など、克服すべき課題も多いのが実情です。
ICT化のメリットは見逃せないものです。使いやすいシステムを選定して導入するなど、工夫をしながらICT化を進めるようにしてください。

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