日本では少子高齢化などを理由に、健康寿命への関心が高まっています。そこで考えたいのが、世界的に注目を集める「ウェルネスビジネス」への参入です。本記事では、ウェルネスビジネスの概要や求められる背景、具体的な内容について解説します。 併せて、ウェルネスビジネスに有用なソリューションもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ウェルネスビジネスとは
「ウェルネスビジネス」について考えるときは、「ウェルネス」と「ビジネス」を分けて考えると理解しやすくなります。まずウェルネスとは、身体的・精神的・社会的に良好な健康状態のことです。もともとは身体の表面だけでなく、総合的に健康について考えた概念であり、アメリカのハルバート・ダン医師が考案しました。そしてウェルネスをビジネスに、つまり商業的に活用しようとした概念がウェルネスビジネスです。
改めてウェルネスビジネスとは、病院など体調を崩したときに利用するサービスではなく、健康維持や病気予防といった視点でサービスを提供することを指します。ウェルネスビジネスの代表的な例としては、スポーツジムやヘルスカウンセリング、社会的に交流するコミュニティ活動などが挙げられます。
人生100年時代といわれる昨今、日々さまざまなメディアで健康寿命の重要性が取り上げられており、日本だけでなく世界でもウェルネスビジネスは注目されているのです。
ウェルネスビジネスが求められる背景
世界的に注目を集めるウェルネスビジネスですが、日本ではより強く求められているといえます。というのも、身体的健康・精神的健康・暮らしの健康など、日本におけるウェルネスの構成要素は世界的に見ても水準が低く、早急な改善が求められているからです。
日医総研が2019年9月に公表したレポートによると、我が国における国民1人あたりの医療機関の年間平均受診回数は12.6回と、OECD加盟国の中では韓国に次ぐ第2位となっています。これはつまり、月1回以上の頻度で医療機関を受診していることを表し、いささか病院に通いすぎている印象です。
この主な理由としては、アメリカなどと比べ治療費が安いことが挙げられますが、それゆえ少し体調を崩しただけで病院に行くような状態となっているのです。少子高齢化が進む現代では、充実した医療制度がいつまでも続くとは限らないため、身体的健康を維持する重要性が増しています。
また、精神的健康・暮らしの健康の面においても、うつや引きこもり、生活習慣病などに陥るケースが多く見られ、課題が山積しています。日本人は気質柄ストレスを溜め込みやすいとされており、さらに偏食・運動不足・睡眠不足といった不健康な生活習慣をなかなか改めない傾向にあるため、このような問題が顕在化していると考えられます。
そして、これらに拍車をかけたのが、2019年に発生した新型コロナウイルスです。コロナ禍がもたらしたライフスタイルや価値観などの変化により、日本では一層ウェルネスビジネスへの興味・関心が高まっているのです。
ウェルネスビジネスの市場予測
ウェルネス業界の研究機関「Global Wellness Institute (GWI)」の調査によれば、2018年時点でウェルネス業界の世界市場規模は4.5兆ドル、日本円にして約500兆円にのぼるとのことです。これは世界の総医療費(7.8兆ドル)の約57%に相当し、非常に高い割合を占めていることがわかります。
また、この数字はウェルネス・メンタル産業や、ウェルネスフード・栄養・ダイエット産業、ウェルネスツーリズム、パーソナルケア・ビューティー・アンチエイジングなども含んでおり、これらの分野はさらなる成長が予想されます。たとえばウェルネスツーリズムの世界市場は、イギリスのリサーチ企業「TechNavio」のレポートによると、2020年~2024年の間に約3,155億ドルもの成長が見込まれています。
少子高齢化が進む日本では今後、シニア・高齢者層が社会の主要構成員となるため、健康寿命に関する取り組みは避けて通れません。これを疎かにすれば、社会保障費をはじめとする負担の増加は免れないでしょう。こうした事情を考慮すると、日本における今後のウェルネス業界の成長性はきわめて高いといえます。
ウェルネスビジネスの具体例
前項で挙げたように、ウェルネスビジネスにはさまざまな事業がありますが、「具体的にどんなことをやっているのかがピンとこない」という方は多いでしょう。実際、日本ではまだあまり浸透していない概念ゆえ、ビジネスの全体像が見えてこないのも無理からぬことです。そこで以下では、ウェルネスビジネスの具体例を3つご紹介します。
パーソナライズドフード
「パーソナライズドフード」とは、人それぞれの趣味や嗜好、体型、健康状態などに合わせた食べ物のことをいいます。昨今の日本では、健康的な食事に絶対的なものがあると思われがちですが、当然ながら人それぞれに合う・合わないがあります。
たとえば、屋外で土木・建築などの肉体労働をしている人と、屋内でデスクワークをしている人とでは、必要な栄養素やカロリーは異なるでしょう。前者は一定の脂質や糖質を取らなければ1日もたないことも多く、後者は肉体労働の人と同じ食事だとカロリーオーバーで食べすぎです。このように各々のライフスタイルや職業、体型など、あらゆる点において考えられた食事が求められているのです。
その点、パーソナライズドフードは個人に最適化されており、今よりもっと幸せな暮らしをもたらす可能性があるほか、環境問題・食糧危機・フードロスなどの社会問題の解決にも寄与します。
パーソナライズドフィットネス
「パーソナライズドフィットネス」とは、パーソナライズドフードと同様に、個々人の健康状態や生活スタイルに合わせたフィットネスのことを指します。
わかりやすい例としては、アスリートと一般人との運動強度(トレーニングの強さ)の違いが挙げられます。一般人がアスリートのようなトレーニングをすれば、怪我をする可能性が高まります。逆に、アスリートが一般人と同様のトレーニングを行っても、強度が足りず体を鍛えるには足りません。
パーソナライズドフィットネスでは、日々のトレーニング具合や成果をデータで保存することで、長期的な成長を確認でき、モチベーションが続きやすいメリットがあります。ほかにも、個々人に最適化されたトレーニングゆえ短期間で効果が出やすい点も特徴です。
ウェルネスツーリズム
「ウェルネスツーリズム」とは、心身の健康維持を目的として行われる、温泉・ヨガ・スパ・瞑想・ヘルシー食などを取り入れた観光のことです。日本ではあまり聞き慣れない言葉ですが、フィンランド政府観光局が2020年5月、自然豊かなフィンランドの暮らしを疑似体験できるオンラインプログラム「バーチャル Rent a Finn」を開始したことで、にわかに話題となりました。
一般的な旅行でも、温泉や瞑想を目的とした観光は可能です。温泉地に行き、ヨガや簡単なトレーニングをしてから温泉に入り、瞑想をするといった計画を立てれば、立派なウェルネスツーリズムといえるでしょう。それゆえ上記2つと比べ、一般人でも気軽に取り組みやすいのがウェルネスツーリズムの特徴です。
ウェルネスビジネスをするなら「ASTARI」で市場調査を
ウェルネスビジネスといっても、要は健康寿命の延伸を目的としたビジネスのことで、決して難しいものではありません。健康意識の高まる昨今ゆえ市場規模が大きく、今後も業界の成長が期待されているため、参入するなら今からでも遅くはないでしょう。
もし、これからウェルネスビジネスに参入する場合は、TIS株式会社が提供するデータ活用ソリューション「ASTARI」の導入がおすすめです。本ソリューションでは、アプリを通してユーザーの生活・消費に関するさまざまなデータを収集・分析できます。ユーザーが利用した運動管理やバイタルチェック、食事管理などの機能からヘルスケア情報をキャッチし、マーケティングに活かせることが特徴です。
ユーザーの趣味嗜好や生活スタイルなどを把握できるため、それをもとに適切なマーケティングを行えば、カスタマーサクセスの実現につながります。ウェルネスビジネスへの参入をお考えの際は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
ウェルネスビジネスは、人間の健康寿命を延ばすうえで重要とされる諸要素をビジネス化したものです。昨今の健康意識の高さから著しい成長を遂げており、今後が期待されている業界でもあります。今回ご紹介した「ASTARI」なども活用することで、よりスムーズな参入が見込めるでしょう。