少子高齢化による働き手不足対策や業務効率向上のためにAIの活用を推進していこうという機運が社会的に高まっています。そこで本記事では、AIの活用方法のひとつである業務自動化の内容について解説します。本記事を読めば、AIによる業務自動化のメリットやRPAとの違い、AIによる自動化の事例などが分かります。
そもそも「AI」とは?
AIとは“Artificial Intelligence”の略で、日本語では「人工知能」と訳されます。AIとは、人間の知的能力や知的行為の一部を再現できるコンピュータシステムのことです。ただし、AIの厳密な定義は学問的にも未だ定まっていないのが現状です。
AIは機械学習と言われる機能により、情報処理するためのルールを自ら獲得し、そのルールに基づいて将来のことを予測したり、物事を認識したりできます。昨今では、「ディープラーニング」という人間の脳の仕組み(ニューラルネットワーク)を模倣した新たな機械学習の方法が開発されたことにより、AIが処理できる情報量は爆発的に増加しました。その結果、現在では様々な業界でAIの活用が進んでいます。
たとえば、Amazonの「Alexa」やAppleの「Siri」などの音声アシスタントが身近な存在になりつつありますが、これらがユーザーの様々な言葉へ自然に受け答えできるのもAI技術によるものです。このように、AI技術は私たちの日常生活の中にもすでに溶け込みつつあります。
AIによる自動化の概要
上記のようにAIは人間の知的な行為の一部を模倣できるため、人間の仕事の一部を肩代わり(自動化)できます。特に同じことを定期的に繰り返すルーティン業務や、コンピューター上の処理で作業が完結できるバックオフィス業務などはAIによる自動化が最も進んでいる領域です。後述する無人コンビニの例でも示されている通り、将来的にはお店でのレジ作業なども人間の手が不要になり、AIが代行することも増えてくるかもしれません。
AIとRPAの違い
業務を自動化する技術と言うと、「RPA」を思い浮かべる人もいることでしょう。RPAとは“Robotic Process Automation”の略で、「ロボットによる業務の自動化」を意味します。
RPAとAIの違いは、RPAが人間の業務を自動化するための「ツールそのもの」を指すのに対して、AIの場合はそうしたツールの情報処理能力を向上させる「機能」であることです。そのため、「AIを搭載していないRPA(クラス1のRPA)」、「AIを搭載したRPA(クラス2またはクラス3のRPA)」が存在し、後者は前者よりも一般に優れた機能を持っています。では、AI搭載のRPAとAI非搭載のRPAでは何が違うのでしょうか。
AI搭載のRPAとAI非搭載のRPAの違い
AI搭載のRPA(以下、AI)とAI非搭載のRPA(以下、RPA)の違いを一言で言うと、自動化に対応できる業務の範囲の差が挙げられます。
RPAは、どのような業務を自動化するか最初に設定されたら、後は毎回同じように動作します。これはRPAの仕事の機械的な正確性を担保していますが、同時に文脈依存的な処理、イレギュラーな事柄への処理はまったくできないことを意味します。そのため、RPAは仕事を処理するためにもっと優れた方法がほかにあったとしても、設定された通りにしか動きません。そこで際立ってくるのが、自ら物事のルールを学習できる機能を持ったAIとの違いです。
AIは機械学習を通して人間と同じような認知能力を得ることができるので、RPAとは異なり個々の文脈に対応した情報処理が可能です。たとえば、大量の請求書のデータを会計システムに入力する作業を自動化する場面を例に挙げてみましょう。
会計システムに入力する主な情報は取引先の企業名、担当者、振込先口座、請求内容等々があります。これらの情報を入力する作業は一見RPAでもこなせそうな単純作業に見えますが、実際にはそうもいきません。
というのも、請求書の書式は企業によって様々であり、それらの書式の違いにRPAを対応させるためには、企業(書式)ごとに請求書を分別したうえで、自動化の設定をしなければならないからです。つまり、RPAは請求金額が書かれている位置が違うだけでも対応できなくなってしまうということです。
それに対してAIは人間と同じように文書を理解し、文脈を把握できるため、細部が異なるこれらの請求書も一括処理が可能です。たとえば、自然言語処理や画像認識能力に優れたAIならば、個々人によってまるで癖が違う手書きの文字も理解可能です。このようにAIは機械学習の力によって、従来のRPAよりも多種多様で文脈依存的な業務の自動化を実現できるのです。
AIによる業務の自動化でできること
続いては、AIによって自動化できることを紹介します。
無人コンビニの運営
無人コンビニとは、店員がいなくても運営ができるコンビニのことです。アメリカでは「Amazon Go」、中国では「無人超市」という無人コンビニがすでに運営されており、日本でも開発や導入が進みつつあります。AIが活用された無人コンビニでは、客の動きをカメラや店内の赤外線センサーなどが追い、「誰が何を購入したか」をAIが判断するため、客はセルフレジでバーコードを読み取る必要すらなく、商品を購入できます。客は店の出口に設置されたタッチパネルに表示された内容を確認し、決済するだけです。これによって企業は客の利便性を損なうことなく、人件費などのコストを削減できます。
警備ロボット・システムの構築
AIを警備ロボットに活用する試みも進んでいます。たとえば、アメリカのTuring Video社が開発した警備ロボット「Nimbo」は、セグウェイを使って自律的に移動し、巡回できます。そして、何かセキュリティインシデントが起きた場合はAIが検知します。Nimboには顔認証システムなどを連携させることも可能で、これを利用することで立ち入り禁止区域に未登録で侵入した人間を検知できます。警備をAIによって自動化できれば、人的コストや人間の警備員のリスクを抑えつつ、重要な施設を24時間守ることができます。
トラクターの自動操縦・運転
農業においてもAIによる自動化を導入することが可能です。たとえば、農業機械メーカーのクボタはAIによって完全無人自動運転が可能な「X tractor」というトラクターを開発中です。後継者不足により就労人口の減少が危惧されている農業界において、人手を要さない自動化技術は今後大いに期待されています。
AIによる自動化の成功事例
上記のようにAIは様々な分野に渡って人間の仕事を自動化できるようになってきています。実際、すでにAIによる業務自動化を企業や自治体が導入し、成功している事例もあるのです。
たとえば、静岡県焼津市では、AIチャットボットを導入して市民からの問い合わせ対応を自動化しました。チャットボットとは、ユーザーからの問いかけに機械が自動的に答えるツールです。AIをチャットボットに搭載すると、通常のチャットボットよりも人間とのやりとりに近い会話を行えます。市役所がこのAIチャットボットを導入したことで、焼津市民は24時間365日いつでも問い合わせができるようになりました。つまり、焼津市はAIチャットボットを導入することで窓口業務を一部代替し、サービス改善と問い合わせ業務省力化の両方を実現したのです。
ほかには、自動車メーカーとして有名なアウディの例も挙げられます。アウディはプレス工場の品質検査をAIで自動化したのです。AIに数百万枚ものテスト画像からなる教師データを機械学習させることで、良品と不良品の違いをAIに学ばせることに成功しました。その結果、人間では目視できないような微細な亀裂などもAIに感知させて不良品を検出できるようになり、業務の省力化だけでなく製品品質の向上も同時に実現しました。
デジタルブレインによるAI需要予測
デジタルブレインではAIを活用した需要予測が可能な次世代型プラットフォーム「o9デジタルブレイン」を提供しています。o9デジタルブレインでは、AIを搭載したクラウドネイティブなプラットフォームを活用し、外部の市場データなどとも連携し、将来の需要予測を行えます。これにより企業はレジリエンスなサプライチェーンを構築できます。ご関心のある方はぜひ資料をご覧ください。
まとめ
AIを利用した業務自動化は、通常のRPAと比べてより柔軟に様々な業務を自動化できるという特長があります。AIによる自動化を活用することで、業務の省力化や人件費の削減、あるいは人手不足に対応可能です。AI技術の開発が進むにつれ、AIにより自動化・無人化される業務は今後さらに増加すると考えられています。