不動産やビル管理業界に従事している方の中にはビル管理システムがなんなのか、またその特徴について知りたいという方も多くいるでしょう。この記事では、そのような方に向けて、ビル管理システムの基本情報や機能的特徴などについて解説します。
「ビル管理システム」とは
ビル管理システムとは、建物の電力・空調・照明・防災・防犯等の各種設備を監視制御するシステムのことを指します。オフィスビルをはじめとする建物においては、快適で安全な環境を維持するために、何らかの異常が起きていないかどうかを常時確認しなくてはいけません。しかし、そのような作業を人が行うとなると作業負担が増えてしまいます。
ビル管理システムを導入すれば24時間、ビル内の管理を自動で行うことが可能です。常にチェックをしているため、作業員による設備点検や巡回業務の負担を減らすことができ、監理業務の効率化も目指せるでしょう。万が一、異常事態の発生を検知した場合は管理者に情報をシェアする仕組みになっていて、必要に応じて警備員や作業員を派遣するなど、迅速な対応も可能です。
「ビル管理システム」の機能的特徴
ここからはビル管理システムの機能的特徴について詳しく紹介します。
クラウドサービスとの連携
クラウドサービスと管理システムが連携することで、建物の状況や管理ニーズに応じて、後から必要な機能を追加できます。省エネルギー対策や空調制御など、ビル管理システムの様々な機能を追加し、より便利なシステムとして活用できるようになるでしょう。
なお、クラウドサービスにおいてはクラウドを活用するためのサーバーなど、ハードウェアの構築や専用のソフトを導入する必要がありません。そのため、構築費などの初期費用だけでなく、維持費などのランニングコストも減らせる点が大きな魅力です。わざわざサーバーを構築するのは面倒と感じている場合でも、クラウドを活用した管理システムを導入すれば、そのような手間やコストがかかる心配を軽減できます。
どこにいても監視が可能
タブレット端末などを活用し、インターネットや無線LANを経由することで、どこからでも管理状況をチェックできます。管理者が常駐していなくてもビルの管理ができるのがメリットで、異常事態が発生した場合でも、タブレット端末などを見ながらその場の様子を確認できます。
複数拠点でビル設備を一元管理
支店など、いくつもの管理拠点を持つ企業は、それぞれのビルの管理をしなくてはいけませんが、管理システムを導入することで、複数のビルを一元管理することが可能になります。ビルごとにおける消費電力量などの確認もスムーズに行えるでしょう。
このような一元管理が可能になることで、ビル管理がしやすくなるというメリットが生まれます。故障などの異常を検知した際は管理者にメールを送ったり、モニター画面に警告が表示されたりする設定を事前にしておくことで、異常事態発生時にもすぐに対応できるでしょう。
遠隔で監視と制御
ビルの管理者がそのビルから離れたところにいても監視や制御設定を行えます。このことにより、管理者が常駐しなくても安全なビルの管理が実現できるのです。スケジュール制御や電力デマンド制御などにより、設備の自動制御も設定できます。
ビル管理システムに関連する用語集
続いてはビル管理システムにおける重要な用語をいくつか紹介します。
- BAS
「Building Automation System」を略した用語で、監視機能や運転制御機能など、あらゆる機能によってビル内の空調や電気などの調節を含めた設備を管理するシステムのことです。
- DDC
「Direct Digital Controller」を略したもので、エアコンなどの空調機器の制御を行うのが主な役割です。複雑な制御であっても、設定どおりに機能する点を特徴とします。
- INV
電源回路や、その回路を持つ装置の意味を含む「Inverter」の略称です。電動機の回転数を変更できます。
- VAV
「Variable Air Volume」を略したものです。VAV方式は、室温設定器から送られてくる情報をもとに、空調機器から室内に送り込む風量を変える空調方式のことを指します。VAV方式を利用することで、センサーが感知した風量と設定された風量を比較し、適切な風量になるように調整できます。この機能により、空調機器から適切な風量が放出されるだけでなく、適度な室温を保つことが可能となるのです。
- PID制御
フィードバック制御の1つで、P動作・I動作・D動作の3つの要素によって構成されていることから、このような名前がついています。実際の管理においてはD動作のない制御も多くありますが、温度調整などの空調制御はこの制御方法で実行されていることが多いです。
- M&V
「Measurement and Verification」の略です。省エネルギー改修工事の効果を評価する手法を意味しています。省エネ支援を行い、経費削減分の一部を報酬として受け取る事業形態であるESCO事業においては、省エネルギー効果を計る方法として「IPMVP=International Performance Measurement and Verification Protocol」が米国のエネルギー省で定められています。
まとめ
このようにビル管理システムを導入することで、管理者の負担を減らす効果が期待できるといえるでしょう。どこにいても建物内の状況を確認できるだけでなく、複数の建物を一元管理したり、遠隔で操作したりできる点も魅力です。管理の手間やコストを減らしたい場合は、是非、システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。