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生体認証とは?種類やメリット・問題点を徹底解説!

IDとパスワードによる認証はオンライン上で広く利用されていますが、情報漏洩やなりすましなどによって悪意のある第三者に不正ログインされてしまう危険性があります。そのため、ID・パスワード認証に代わる方法として期待されているのが生体認証です。よく知られた指紋以外にも様々な方式があり、日常生活でも利用されています。

生体認証とは?種類やメリット・問題点を徹底解説!

生体認証とは?

生体認証とは、生きている体の一部(=生体)を用いた認証方式です。顔や指紋、歩き方といった個人の身体的な特徴を使って本人であるかどうかを照合します。事前に個人の身体または行動に関する情報から特徴量を抽出してコンピュータに登録しておき、それを用いて本人を特定します。別名バイオメトリクスとも呼ばれます。

生体認証の代表的な種類

認証に使うことができるのは、一人ひとりが異なる特徴を持つ身体的な情報です。具体的には以下のような種類があります。

指紋認証

もっとも身近な生体認証が指紋認証です。指紋が一人ひとり違うことは古くから知られており、拇印や犯罪捜査などに使われていました。国内でコンピュータによる指紋鑑定が行われるようになったのは1970年代で、その後、捜査の精度を上げるために研究が進められてきました。技術進歩によって小型化・低価格化が実現し、現在は個人用途の認証にも広く使われています。

最近では、スマートフォンやノートPCの認証方法としても指紋認証はお馴染みです。事前に指紋をコンピュータに登録しておき、認証時にセンサーで読み取った指紋と登録画像を比較して、一致したら本人だと判断する仕組みです。

顔認証

顔認証とは、個人の顔の特徴を認識して本人を特定する認証方式です。顔のパーツのうち目・鼻・口の3点の位置やバランス、大きさなどを元に本人かどうか照合します。スマホのロック解除やライブ会場の入場チェックなどにも利用されています。

最近では国内空港の出帰国手続で顔認証ゲートを使用しています。これは、パスポートに埋め込まれたICチップに保存されている顔写真と、ゲートで撮影した顔の画像を比較して本人かどうか照合します。今まで空港では指紋認証ゲートも設置していましたが、日中に事前登録を行う必要があり、誰でも利用できるものではありませんでした。また12歳以下の子供は成長期で指紋が安定しておらず照合ができなかったり、大人でも指紋が加齢で摩耗するなどの理由で照合できなかったりする場合があるなどの理由から、利用はそれほど広がりませんでした。顔認証ゲートの場合は事前登録が不要で、手軽に利用できるメリットがあります。ただ身長が135センチ以上という利用制限があるほか、マスクやメガネを着用していると正しく認識されない場合があります。

虹彩認証

虹彩(アイリス)とは、眼球の色がついている部分で黒目(瞳孔)以外の部分を指します。虹彩認証では、その人ごとに異なる虹彩の色やパターンを判別して本人を認証します。虹彩のパターンは生まれてから2年ほどで成長が止まり、その後はほとんど変化しません。そのため経年変化の影響が少なく、生体認証の中でも誤認率が低いのが特徴です。また遺伝の影響がないので、親子や兄弟、双子であっても全く異なるパターンになるという特徴があります。

海外の空港では出入国審査で虹彩認証が用いられている例があります。また、国内ではまだあまり普及していませんが、一部のスマホで認証方式として利用されています。NTTドコモが提供する「パスワードレス認証」では、指紋または虹彩を用いた認証を行います。これはFIDO(ファイド)認証と呼ばれる方式を採用していて、指紋や虹彩の情報と事前に登録した秘密鍵から署名を生成し、認証サーバー側の公開鍵と照合することで端末を認証するしくみです。安全性を高める認証方式として金融機関や大手メーカーを中心に導入の動きが広がっています。

静脈認証

静脈認証とは、手のひらや指の静脈パターンを読み取る認証方式です。指紋認識よりも10倍以上精度が高く、偽造が困難であるのが特徴です。

静脈認証の装置を銀行のATMで見かけたことがあるかも知れません。銀行のATMでは、設置してある生体認証装置に指を乗せ、キャッシュカードのICチップに事前登録しておいた静脈パターンのデータと同じものかどうかを照合します。直接装置に触れるタイプと、スマホやタブレットのカメラで撮影する非接触のタイプがあります。後者の場合は専用機器が不要であり、センサーが汚れず衛生的である点がメリットです。

掌紋認証

掌紋(しょうもん)とは、手のひらの隆線が作る文様(紋理)のことです。これを利用したのが掌紋認証です。

手のひら全体の模様を使って照合します。 手のひらの静脈を認証に利用する「手のひら静脈認証」と混同しがちですが、掌紋認証の場合は掌紋パターン検出センサーが手のひらの画像から掌紋や関節の特徴量を抽出し、事前に登録しておいた掌紋データと比較することで照合します。

声紋認証

声紋とは声の特徴のことです。個人の声の特徴量を抽出して本人と照合するのが声紋認証(声認証)です。話すだけで良いという手軽さが特徴です。

ある特定のフレーズを使って認証する「テキスト依存方式」と、自然な会話を登録して認証に用いる「テキスト独立方式」の2種類があります。スマートスピーカーで使われているのはテキスト依存方式です。

現在は市場も80兆円ほどとそれほど広がっていませんが、音声によるコミュニケーション拡大を背景に需要増が期待されており、2024年には3倍以上の280兆円市場に成長すると予測されています。

耳形認証

耳形(耳介)認証とは、耳のかたちの特徴をデータとして登録し、本人と照合する認証方式です。アメリカでは犯罪捜査にも利用されています。耳のかたちは個人差が大きく、離れた場所からでも確認することが可能であるというメリットがあります。

最近ではNECと長岡技術科学大学が共同開発した、耳音響認証という耳穴のかたちを音で識別する新しい耳の認証方式も登場しています。これはマイク一体型のイヤホンを耳に装着し、耳の中で反射して戻ってくる音をマイクで取得して本人を照合するものです。99%と高い精度を持っており医療現場などでの実用化が研究されています。

生体認証のメリット

生体認証は、認証を提供する企業側にも、利用するユーザー側にも、メリットがあります。

高いセキュリティレベル

生体認証は身体的な特徴を利用するため、なりすましをしにくくなります。掌紋や虹彩を真似てなりすますのは難しい上、事前に登録している情報も暗号化されているため万が一盗まれても利用される危険性は低いです。

ただ生体認証は特定の条件によっては認証精度が下がる場合があります。暗い場所で認証されづらい顔認証がその一例です。そのため複数の生体認証を組み合わせたマルチモーダル認証を取り入れることで、より高いレベルのセキュリティを確保できます。

ユーザーの利便性向上

生体認証は自身の身体の一部を照合する方式のため、ユーザーは別途IDカードの持ち歩きや、IDとパスワードの記憶などが不要です。また金庫を開けるカギや出入室時に提示するIDカードのような物理的なモノを必要としないので、紛失・盗難されないように管理する負担が軽減されます。

運用する際の負担軽減

企業が認証システムを運用するメリットとして、照合がスピーディに行えるという点があります。例えば出入国審査の場合、担当者が目視でパスポートの写真と本人を照合していたため、どうしても時間がかかっていました。顔認証システム導入によって1人あたりにかかる時間が短縮できるだけでなく、担当者の削減にもつながり省人化にもつながります。

生体認証の問題点

とはいえ生体認証は万能ではありません。以下のような問題点もあります。

変わらないリスク

生体認証はその人だけが持っている特徴を利用した認証方式のため、万が一情報が漏れてしまった場合には注意が必要です。例えば指紋情報は情報が漏れてしまったからと言って、違う指紋に変更することはできません。

身体的変化

身体の一部を利用するため、成長や加齢によって変化してしまった場合、認証できなくなる可能性があります。

100%ではない認証精度

誤解されがちですが、生体認証の認証精度は100%ではないことに注意が必要です。IDとパスワードによる認証の場合は、IDとパスワードの組み合わせが完全一致した場合のみ、本人だと認証されます。一方、生体認証の場合では、事前に登録しておいた顔・指紋・虹彩などの情報と、カメラやセンサーで取得した本人の情報は完全に一致することはありません。身体的な特徴なので日や体調、照明などの環境によっても状態が変わるため全く同じになることはないためです。

一般的に生体認証では、事前登録した情報から特徴量を抽出し、本人の情報から抽出した特徴量と比較して照合します。そのためどうしても誤認が発生してしまい、人違いで認証してしまう可能性もゼロではありません。

また生体情報が偽造されるリスクもあります。指紋認証は、ゼラチンでかたどった指紋やプリンターで出力した指紋で突破されてしまった例もあります。またSNSにアップした写真に写っていた指紋を拡大して強調し、指紋を偽造できることが指摘されています。顔認証を写真で解除できてしまった例もあります。

このようなリスクへの対策としては、前述のマルチモーダル認証やパスワードとの併用のように複数組み合わせる方式でセキュリティ強度を上げる方法があります。

まとめ

指紋や顔、虹彩など体の一部を利用する生体認証は、ID・パスワード認証と比較してセキュリティ強度が高いほか、システム側の認識精度向上や設備設置のコスト低下などでメリットがあり、導入企業が増えています。認識精度や安全性に一部課題もありますが、安全に素早く本人認証する方式として今後さらに広がるでしょう。
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