製造業

バックキャスティングとは? フォアキャスティングとの違いや実施手順を紹介!

現在、斬新なビジネスアイデアの創出につながるバックキャスティング思考が注目を集めています。この取り組みで得られるメリットは多く、すでにさまざまな企業が実践する手法です。本記事では、バックキャスティングの概要やメリット・デメリット、実施手順などを解説します。

バックキャスティングとは? フォアキャスティングとの違いや実施手順を紹介!

Factory of the Future

バックキャスティングとは

バックキャスティングとは、思い描く未来像から逆算して、実現するための道筋を描く思考法です。近年、SDGsの実現に役立つ思考法として注目されているほか、企業としての存在意義を見いだすのに活用するケースが増えました。

SDGsは、国連加盟国が2030年までの達成を掲げる共通目標であり、もともと国が主体となって達成を目指す目標です。注目が高まるとともに、実現へむけて企業にも協力的な取り組みが期待されるようになりました。
そんなSDGsを達成しようにも、具体的に何をすればよいのかと悩むケースは少なくありません。そこで、バックキャスティングであれば、実現したい目標から逆算して道筋を考えられます。たとえば、「貧困をなくそう」をゴールとするなら、そのために「従業員の給料をアップする」「雇用を増やす」などやるべきことが明確になるのです。

また、企業の社会的な存在意義を明確化し、それに沿って取り組みを実施するパーパスの策定においてもバックキャスティングが役立ちます。目標を決定する際に実現性を検討したり、取り組みを具体化したりするための道筋を考えるのに有効です。

パーパスについては、以下の記事も参照ください。

https://www.cloud-for-all.com/dx/blog/what-is-meaning-of-purpose

フォアキャスティングとの違い

フォアキャスティングは、バックキャスティングの対極に位置する考え方です。実現したい未来をゴールとして最初に設定するバックキャスティングに対し、フォアキャスティングは現状を起点に課題の解決や改善を進めます。
たとえば、1年で離職率を30%下げるといった短期的な目標を立てます。これに対し、従業員の待遇や職場環境の改善、採用におけるミスマッチの削減など、地道な施策から始めるのがフォアキャスティングの考え方です。
バックキャスティングは中長期的な目標達成のために、従来にない戦略や内部改革といった抜本的な施策を打ち出し、それをもとに具体的な取り組みを決めていきます。

「できるところから手をつける」のがフォアキャスティングの特徴です。そのため、この手法では新規性の獲得や抜本的改革のような、組織にとって大きな変化を起こせず、リスクは少ないもののバックキャスティングほどの効果は見込めません。

バックキャスティングのメリット・デメリット

バックキャスティングのメリットとして、新たなアイデアの創出や組織変革の実現などが挙げられます。一方、デメリットとして情報収集がメインになる、短期的な課題解決は難しいといった現実があるため注意が必要です。

バックキャスティングのメリット

バックキャスティングのメリットとしては、新たなアイデアの創出につながりやすいことが挙げられます。現状を起点とせず、実現したい目標から逆算して道筋を作るため、これまで思いつかなかったアイデアを生み出せる可能性があります。

現状に縛られてしまうと、柔軟な思考を妨げかねません。1年で売上をアップしたい目標があっても、「人材がいない」「競合が多い」などネガティブな状況を考慮し、諦めてしまう可能性があるのです。
一方、ゴールから逆算する思考法であれば、とりあえず現状を考えず、理想的な状況を想定できます。その結果、視野が広がり斬新なアイデアが生まれやすくなるのです。

また、組織変革につながるのもメリットです。定めた目標を達成するのに何が必要かを考えなくてはならないため、従業員の自主的な行動を促すことができ、モチベーションアップにつながります。

バックキャスティングのデメリット

デメリットとして、情報収集に時間がかかることが挙げられます。取り組みを始めたいと考えても、何から手をつけてよいのかわからず情報収集ばかりに時間をかけてしまうのです。

また、バックキャスティングは目先の問題を解決するのには適していません。現状に即した短期的な解決を必要とする問題については、フォアキャスティングで考えるのがよいでしょう。バックキャスティングは基本的に、長期的な問題解決や目標実現のために活用されます。

ほかにも、現状を鑑みずに理想の未来像を追い求める手法であるため、施策を誤った場合のリスクが大きい点がデメリットです。理想を求めるあまり、現実的でない施策に多額の予算や時間を割いてしまうことが考えられるため注意しましょう。

バックキャスティングの実施手順

バックキャスティングを実施するには、まず未来のあるべき姿や、なりたい姿を設定します。そのあと、描いた未来への障害となる課題や足りない要素などを洗い出し、必要なアクションを時間軸に設定しましょう。

未来のあるべき姿を設定する

まずは、未来のあるべき姿や目標とする将来像を設定します。ゴールから逆算して道筋を立てる思考法であるため、最初に未来像を設定しないと始まりません。どのような未来を求めるのか、なるべく具体的にイメージしましょう。

この時点では、逆算や実現が可能かどうかを考える必要はありません。実現できないかもしれない、と考えてしまうとそこで思考が停止し、自ら可能性を狭めてしまうおそれがあります。

あるべき姿にむけて課題を洗い出す

描いた未来の実現を妨げる要素を洗い出しましょう。たとえば、資金や設備などのリソース、社内の体制、ビジネスパートナーなどが考えられます。実現性を高めるためにはこれらの要素を具体的にする必要があるため、正確に抽出しましょう。

また、求める未来の実現に活用できるものについても洗い出します。アイデアとして想定しなかったにもかかわらず、現状ですでに必要なものを自社で保有しているかもしれません。社外に対しても目をむけ、取引先などから活かせるものがないか探しましょう。

必要なアクションを時間軸に配置する

描く未来の実現にむけて、必要なアクションを検討するプロセスです。たとえば、人材が足りないのなら外部採用の実施または社内育成を強化するなど、具体的にやるべきことを決定します。

このとき、SVTに落とし込むと効率的です。SVTとは、System(システム)、Value(価値観)、Technology(技術)のことです。この3要素で整理すれば、具体的にどのようなアクションが必要なのかわかりやすいでしょう。

さらに、必要なアクションを時間軸に設定し、目標までの全体像を明確にします。全体像の可視化により、不足する要素を見つけられます。

バックキャスティングの事例

代表的な事例として、低炭素社会の実現にむけた取り組みが挙げられます。ある大学や研究所による取り組みであり、バックキャスティングの手法を用いて将来的に低炭素社会を実現できる可能性を明らかにしました。
この事例では、まず2050年の未来を想定したうえで二酸化炭素排出量を導き出し、低炭素社会を実現するための12の具体策を提示しています。

また、ある自動車メーカーもバックキャスティングをビジネスに活用しています。この企業は、自動車が排出する二酸化炭素を2050年までに90%削減するとの目標を掲げました。ほかにも、工場の二酸化炭素排出量をゼロにする、水使用量を最小化するなど6つのチャレンジを掲げています。
これらの長期目標を実現するために、実際にさまざまな取り組みへと着手しているのです。
たとえば、燃料電池を使用した次世代車の開発や電気自動車の普及促進、再生可能エネルギーを工場へ導入するなどの施策をすでに実施し、中間目標を達成するなどの実績をあげています。

まとめ

バックキャスティング思考の導入により、新たなアイデアの創出や組織改革の実現などさまざまなメリットを得られます。一方、情報収集に時間をかけすぎてしまう、目先の問題解決には非効率であるといったデメリットもあるため注意が必要です。メリット・デメリットを正しく理解したうえで取り組みましょう。

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