小売業で役に立つ「エリアマーケティング」という手法をご存知でしょうか。この記事では、エリアマーケティングとはいったいどのようなマーケティング手法なのか、また、それに伴い重要となる「商圏分析」のポイントについてご紹介します。
地域特性を掴む「エリアマーケティング」とは
「エリアマーケティング」とは、その名の通りエリア(地域)とマーケティングを組み合わせた言葉で、「店舗や企業において、地域ごとの販促方法を考えること」を指します。特に小売業においては欠かせないマーケティング手法です。
たとえば、全く同じ店舗を北海道と沖縄に置いても、同じ売り上げを出すことはできません。どちらも気温や文化などが異なるため、地域に合った商品を置かなければならないからです。もちろん商品だけでなく、宣伝コピーや店内レイアウトなども、地域に合わせたものにする必要があります。このように、エリアマーケティングは地域に店舗を構える小売業の売り上げを高めるために重要だとされています。
ちなみに、エリアマーケティングとよく似た言葉に「地域マーケティング」というものがあります。これらは一見よく似ていますが、実は全く異なるマーケティング手法を指します。上述した通り、エリアマーケティングは地域の特性に合わせてお店を作り上げることを指すのに対し、地域マーケティングは特定の地域に顧客やモノ、お金を呼び込むことを指します。両者はしばしば混同されがちなので、注意してください。
エリアマーケティングで重要な商圏分析
では、どのようにしてエリアマーケティングを実施すればよいのでしょうか。
まず必要になるのが、どこまでの地域に住む人々が顧客として店舗に出向いてくれるのかという「商圏エリア」を把握すること。そして、その商圏エリアの情報を集め分析することです。これらの情報を分析することを「商圏分析」といいます。
エリアマーケティングを行う上で、商圏分析はメインになるといっても過言ではないほど重要な作業です。この分析結果に基づいてマーケティングを行うため、いうなればエリアマーケティングの基礎となります。
商圏分析で得られるメリット
では、商圏分析をすることで得られるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。具体的なメリットをいくつかご紹介します。
商品仕入れの手がかりになる
商圏分析により、どのような商品に需要があるのかを把握できれば、仕入れの際のヒントになります。売り上げを伸ばすためには、商品を購入する顧客の情報を手に入れることが大切です。
適切な集客ができる
商圏分析のうち、顧客に関するデータは、チラシ・メール・Webなど顧客に合わせた集客方法を考える手助けにもなります。また、集客を実施するエリアの策定にも活かせます。
出店の際の計画に活用できる
商圏分析の情報は、店舗を出店する際、どの位置にどれくらいの規模のお店を出すか決める参考になります。
店舗・企業の将来設計に役立つ
商圏エリアの人口がどのように推移するかを見極めれば、店舗・企業が将来どのように発展するかを設計する手助けになります。
このように、商圏分析にはさまざまなメリットがあります。逆にいえば、商圏分析にミスがあると、マーケティングにも少なくない影響が出る恐れがあります。売り上げが伸びず、退店に繋がるリスクもあるため、正確な商圏分析を行うことが大切です。
商圏分析を成功に導くための4つポイント
ここまで、エリアマーケティングを行う上での商圏分析の重要性やメリットについて解説しました。ここからは、具体的な商圏分析の進め方として抑えておくべき4つのポイントをご紹介します。
マクロ環境分析〜対象地域の成長性を把握〜
「マクロ環境分析」では主に、「人口数・世帯構成」「地域特有の条例」「地域特有の文化」の3つのデータを入手し、地域の市場特性を分析・把握します。
これらの情報は、政府統計の総合窓口「e-Stat」をはじめとした、地域の統計データなどから確認できます。対象地域のホームページなどを確認してみるのもおすすめです。特に人口数・世帯構成を確認することにより、対象地域の市場規模が今後どのように推移していくのか、予想をつけることができるでしょう。
また、マクロ環境分析で確認するデータは、企業側がコントロールすることはできません。企業が合わせる必要があるため、エリアマーケティングを行う際は必ず確認しておきましょう。
ライフスタイル調査〜住人の消費動向を把握〜
商品を購入してもらうためには、顧客の行動を分析し、顧客に合わせた商品を展開する必要があります。そこで必要になるのが「ライフスタイル調査」です。
ライフスタイル調査では、対象地域に住む人々が普段どのような生活を送っているのかを調査します。移動手段や普段利用することの多いスーパーなどの情報から、顧客が持つニーズを探ります。ライフスタイルに関するさまざまなアンケート調査を実施している企業のデータなどを参考にするとよいでしょう。必要なデータが揃わなければ、実際に聞き込み調査を行うのも有効だといえます。
競合調査〜競合店舗の特徴や脅威度などを把握〜
対象地域でよく利用されている競合店舗の調査も欠かせません。競合店でどのような商品を販売しているのか、何時から何時まで開店しているのかなどを調査し、自社に取り入れることにより、住人から必要とされるお店作りを目指します。
また、競合店が提供していない商品やサービスを探り、それらを自社で提供することで、競合店との差別化を図ることもできます。自社の付加価値を高めるためにも、「競合調査」は忘れないように行いましょう。
商圏バリアの調査〜集客の障害となる要素を把握〜
「商圏バリア」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。商圏バリアとは山や川、混雑する道路など、顧客がお店へと足を運ぶ際に障害となる要素のことを指します。顧客のニーズに合っていても、これらのバリアが原因で来客が妨げられる可能性があるのです。
商圏バリアは自然的な要素が強いので、実際に現地に足を運んで顧客の通るルートを確かめてみるのがおすすめです。時間や人手が足りない場合は、商圏バリアを確認できるツールなどを活用してみましょう。
上記4つのポイント以外にも、地域の人々が流通や商売に持つ考え方、情報の伝わり方やそのスピードなど、商圏分析で調べるポイントはいろいろあります。出店したいお店や企業の内容を考慮し、必要な分析ポイントを見極めて調査を行いましょう。
商圏エリアを見極めた上で有効な広告戦略を導く
先の項目では、商圏分析を行うことのメリットの一つに「適切な集客ができる」ことをご紹介しました。ここでは、集客方法として有効な広告戦略について、もう少し詳しく見ていきましょう。
顧客を店舗に呼び込むには、広告が欠かせませんが、広告ばかり打っていても企業の売り上げにはつながりません。適切な量の広告を打ち、多くの集客を目指すことが大切です。
商圏分析を行うと、地域の特性が理解でき、顧客化が期待できるターゲット層や人数を把握できます。特に顧客化を目指す人数を具体的な数値目標として設定すると、広告戦略も導きやすくなります。
また、広告の方法もさまざまです。一部エリアに限定して広告を打つならチラシが便利ですが、コストをかけずに広範囲に広告を打ちたいなら、Web広告が役立ちます。Web広告もエリアを絞って流すことができるので、商圏エリアを見極めてその地域にだけ流すようにすると有効に働くでしょう。
まとめ
エリアマーケティングは、地域に根ざした店舗を持つ小売業では欠かせないマーケティング手法です。地域特性を把握し、その地域に住む人々のニーズに合ったものを提供することが、売り上げにつながる鍵といえます。
これから出店する方や、さらなる売り上げ拡大を目指している方は、エリアマーケティングを検討してみてはいかがでしょうか。