昨今その開発が特に注目されつつある「自動運転技術」には、その技術の水準に応じてレベルが0から5まで設けられています。
どのような基準で区分されているのか、現時点では自動運転技術レベルはどの段階まで進んでいるのか、具体的に確認していきましょう。
自動運転レベルとは?
近年、いよいよ実用化が現実味を帯びつつある車両の自動運転。この技術について語るうえでまず知っておきたいのが「自動運転レベル」です。
自動運転技術には、車に搭載されている技術の段階に応じて0から5までのレベルが設定されています。
自動運転と聞くと、操縦者が運転せずとも車が自動的に進んでくれる技術がイメージされがちです。
しかしながら、実際にはレベル1~2の技術ではあくまでもハンドル操作や加減速のサポートといった色合いが強く、運転自体は操縦者が行います。
このレベルが3以上になると、文字通り「自動的に運転してくれる」ものとなり、操縦者が操作をする必要がなくなります。
なお、現在実装されている自動運転技術は、レベル3寄りのレベル2だと言われています。
たとえば日産が実用化させた技術である「プロパイロット」は、先行車を検知して車間距離を保つように速度を調整したり、車線に従った位置を走るようハンドルの調整をしたりする機能を持ちます。
操縦者が常に注意を払うということが大前提となりますが、こうした機能を活用することで少しの間ハンドルから手を離すことも可能となりました。
機能自体は運転支援ですが、限定的にハンドルオフの状態にもできることから、現在の自動運転技術はレベル3の技術に近づいてきていると言われているのです。
現在、日本国内で許可されているのはレベル2までではあるものの、2020年中には技術・法整備ともにレベル3を目指したいという動きが強まっています。
自動運転レベル0〜5
それでは、自動運転レベルというものが具体的にどのような段階に応じて区分されているのか、それぞれのレベルごとに確認していきましょう。
レベル0(自動運転なし)
レベル0は、ブレーキやアクセルといった速度の加減速やハンドル操作に関するサポート技術が一切取り入れられていない状態のことを指します。
すべての操作を操縦者本人が行わなければなりません。自動運転技術が実用化されはじめたのはここ数年の話なので、国内を走っている車の多くはレベル0のものだと考えられます。
レベル1(運転支援)
レベル1は、「ハンドルの操作、ブレーキやアクセルなど加減速の調整のどちらかをサポートする技術が搭載された車」を指します。最近よく耳にする「自動ブレーキ機能」は自動運転技術レベル1に相当するもので、歩行者や障害物を検知して自動的にブレーキをかけるという運転支援を行う機能です。
この機能は2015年以降に販売された新車の45%に搭載されています。また、昨今の高齢者の誤操作や居眠り運転による交通事故が多発している現状を受け、国は2021年11月からこの自動ブレーキ機能の搭載を義務化することを発表しました。
現在はレベル3といった最先端の技術に向けて開発が進む一方で、同時にこうしたレベル1の技術を広く普及し始めている段階でもあります。2021年の義務化を受けて全ての車に搭載される未来もそう遠くはないでしょう。
レベル2(高機能化)
レベル2は「ハンドルの操作、ブレーキやアクセルなど加減速の調整のどちらもサポートする技術が搭載された車」を指し、日本国内ではこのレベルの技術が実用化され始めている段階です。
自動運転ではなく、あくまで運転支援という意味ではレベル1と同じですが、ハンドル操作と加減速の調整のいずれも自動で行われるようになるので、そのサポートの幅は一気に広がります。
たとえば、前述した日産のプロパイロットのように限定的にレベル3の自動運転に近いサポートを行うことも可能です。
レベル3(条件付自動運転)
この段階から、「運転支援」でなく、いわゆる「自動運転」と言われるレベルになります。
レベル3は「特定の場所においてシステムが全てを操作し、緊急時には操縦者が対応する」といった段階の技術です。
「運転支援」においては事故などの責任は操縦者にありますが、レベル3以降の「自動運転」においてはメーカーが責任を負うようになると考えられています。このように責任の所在が変わってくることから、レベル3に向けて法律がどのように定められていくか、今後の動きを特によく確認しておく必要があります。
ドイツのメーカーであるアウディは、世界で唯一のレベル3自動運転システム「ジャムパイロット」を搭載した「アウディA8」を発表しました。ジャムパイロットは高速道路における運転を自動化する機能を搭載しています。
しかし、残念ながら現時点ではその機能を実際に目にすることはできません。というのも、レベル2までしか許可されていない日本はもとより、自動車基準調和世界フォーラムにおいても現在は時速10km以下の自動運転しか認められていないのです。
そのため「ジャムパイロット」を搭載したアウディA8は未だどこの国でも販売されておらず、法整備が技術に追いつくのを待っているといった状況です。
レベル4(特定条件下における完全自動運転)
レベル4は「特定の場所においてシステムが全てを操作する」といった技術段階で、レベル3との違いは「緊急時でも操縦者が対処する必要はない」という点にあります。
ただ、完全自動運転を行うのは高速道路などといった特定の場所のみなので、それ以外の場所では当然操縦者が全ての操作を行う必要があります。この段階の技術はまだどこのメーカーも実装には至っていない状況です。
しかし、2019年10月にBMWジャパンが自社のショールームにて、開発中であるレベル4の技術を搭載したBMW7シリーズの試乗会を行いました。
BMWは2021年までにレベル3の自動運転車の市場投入を目標としていますが、そのさらに先を行くレベル4の技術も披露したことで、今後のビジョンがより明確になったと言えるでしょう。
レベル5(完全自動運転)
レベル5は、いかなる場所でも完全にシステムが運転を行うという、自動運転技術の完成形です。この段階において、人間は一切の操縦を行う必要がないため、車のデザインもハンドルやブレーキといった操作系統を排した、全く新しいものになるだろうと考えられています。
こちらもまだいずれのメーカーも実装には至っていませんが、コンセプトカーなどは発表されています。
レベル5の実用化がいつになるかは現状どのメーカーも具体的には発表していません。けれども、欧州連合や中国が示したロードマップにおいては、2030年代が一つの目安として考えられています。
まとめ
日本においては、2020年にレベル3の自動運転技術が許可される見通しとなっています。
法整備が整えば、アウディ8を始めとする自動運転レベル3の車両が次々と販売される可能性も高まります。
自動車業界にとって、今年は新しい自動運転技術はもちろんのこと、それに伴う法改正からも目が離せない年となるでしょう。