昨今よく聞かれるようになった「サブスクリプション」について、その概要や認知が広まってきた背景について解説します。また、メリットやデメリットを提供企業側、顧客側それぞれの観点から見ていきます。最後にサブスクリプション型サービスの代表的なジャンルについてもご紹介します。
サブスクリプションとは
近年、多くの企業が自社ビジネスに「サブスクリプション」を取り入れ始めています。雑誌の定期購読を意味する「subscription」が語源のサブスクリプションとは、毎回決まった料金を支払うことで、一定期間利用サービスを利用できるという契約を指します。通称「サブスク」とも呼ばれ、さまざまなメディアで取り上げられ、目にする機会も増えてきました。
同じような意味合いで、電気代やガス代などで使用される「リカーリング」という用語がありますが、サブスクリプションは金額が固定化されている点で、金額変動型のリカーリングとは異なります。
また、「レンタル」や「リース」も意味合いが似ていますが、決められた期間が過ぎると返却の必要があるそれらとは異なり、サブスクリプションは料金を支払っている期間は利用し続けられるという特徴があります。
つまり、サブスクリプションで提供されるということは、商品やサービスそのものが目的ではなく、それらを利用する権利に焦点が当てられているといえます。サブスクリプションは、元は定期購読やレンタル、リースといった形で提供されていたサービスから採用されはじめましたが、やがてデータやソフトウェアのようなデジタル領域に広がり、現在では自動車、靴、洋服、食品など、さまざまな業界でサブスクリプション型のサービスが提供されるようになってきています。
サブスクリプションが注目される背景
では、昨今、サブスクリプションサービスがなぜ急激に浸透してきたのでしょうか。
まず、IT技術の進歩が挙げられます。従来、ソフトウェアはDVDなどの媒体に記録され、パッケージ化して販売されていました。しかし、インターネット環境が整備されたことで、スムーズに大容量のデータ送受信が可能になると、変化が起きました。常に最新化されたソフトウェアをインターネット上からダウンロードし、利用できるようになったのです。提供する企業にとってはコスト削減につながり、ユーザーにとってはよりタイムリーに最新のソフトウェアを使えるという、両者にとってメリットのあるビジネスモデルが誕生したといえます。
また、別の背景としては、消費者の意識や生活スタイルの変化が挙げられます。日本は特に少子高齢化が進んでおり、将来の漠然とした不安などから、「モノ」に対する所有欲がない人が増えています。代わりに、「柔軟なサービス」「自由な体験」「人間関係」といった目に見えないものに価値を見出そうとする流れがあるのは確かです。
そのため、「所有」せず「使いたい間だけ使う」というサブスクリプションの概念がスムーズに消費者に受け入れられてきたといえます。
サブスクリプションサービスのメリット
急速に浸透してきたサブスクリプションですが、どのようなメリットがあるのでしょうか。企業側と、消費者側、それぞれに分けて一例をご紹介します。
企業にとってのメリット
まず、売り上げの試算がしやすくなり、継続的な収益を得られるという点が挙げられます。幅広いサービスに適用できる上、導入するのに初期コストがかからないことからハードルが低くなり、新規顧客を獲得しやすいのもポイントです。さらに、継続的に顧客から利用データを収集できるため、商品やサービスの改善に活かすマーケティング戦略をとるケースでも有効です。
消費者にとってのメリット
一方で消費者も、多額な初期コストがかからないことからお試し感覚で利用しやすいという安心感があります。モノが必要になった時は、通常、購入手続きを行い、保管、管理する場所を確保したり、それに伴う費用が発生したりして負担がかかります。しかし、サブスクリプションであれば、厳密に言うと自分自身の所有物ではないので、管理する手間が抑えられるといえるでしょう。
サブスクリプションサービスのデメリット
サブスクリプションには多くのメリットがありますが、逆にデメリットもあるため、それを理解した上で利用することが重要です。ここでも、企業側と消費者側に分けてご紹介します。
企業にとってのデメリット
サブスクリプション型サービスをリリースした直後は、顧客が集まりにくく収益を出すのに時間がかかる可能性があります。性質上、売り上げ面での即効性がないことを理解した上で採用しなければなりません。また、サブスクリプションサービスは単純な定額制サービスと異なり、料金が支払われているうちは、顧客や市場のニーズに合わせて継続的に改善を図り、アップデートしたり、コンテンツ追加をしたりする必要があります。
また、サブスクリプションモデルの導入にあたっては、ノウハウやツールを用意したり、当初からある程度のリソースを割いたりしなければなりません。これらも場合によってはデメリットといえるでしょう。
消費者にとってのデメリット
消費者側にも次のようなデメリットがあります。まず、毎回一定の利用料金を支払うということは、たとえ使わない期間があったとしても、同じ費用がかかってしまうということです。また、興味がない、または必要でないコンテンツや機能が付属してくる場合もあるでしょう。解約すると最終的に自分の手元には何も残らず、後々利用できないことに対し、「支払ったお金がもったいない」と感じる層が一定数いることに注意が必要です。
サブスクリプションサービスの種類例
ここからは、サブスクリプションサービスについてより深く理解しやすいように、どのようなジャンルやビジネスモデルがあるのかについて、代表的なものをご紹介します。
IT(ソフトウェア)サービス
1つ目は、一定の利用金額を支払い、ソフトウェアなどを利用できる権利を得られるサービスです。たとえばMicrosoft社の「Microsoft 365」などが挙げられます。従来であればパッケージ製品を購入して、パソコンにインストールする方法が主流でした。しかし、サブスクリプションであれば、利用するだけでなく、バージョンアップやユーザーサポートなども受けられ、従来ではアフターサービスと呼ばれていた部分も、サービスが続く限りカバーされるというメリットがあります。Microsoft 365も、契約するとExcelやWordといったおなじみのアプリを常に最新バージョンで利用できるのが魅力です。また、クラウドからSaaS型で提供されるため、導入コストを抑えられることもあり、幅広い国や地域で多数の企業や個人に利用されています。
運輸業界向けサービス
ある大手タイヤメーカーは、運輸業界向けのサブスクリプションサービスとして、一定の月額料金でタイヤに関連する業務をトータルでサポートしています。劣化したタイヤの新品交換やメンテナンスに関する負担は、運輸系企業の経営陣にとって悩ましい問題ですが、月々決まった予算で済ませられるため、予算管理もスムーズになるというメリットがあります。
音楽系
1曲ごとに都度、利用料金を支払うのではなく、定額で音楽が聞き放題となるサービスも昨今人気が高まっています。これまでCDなどのパッケージを購入する必要があったのに対し、インターネットからいつでも好きなだけダウンロードして聴くことができます。サービスによっては、無料プランや学生割引が効く学割プランなど、消費者の多種多様なニーズに合わせたさまざまなサービスが提供されているのも、支持を集めている理由といえるでしょう。
動画系
TVドラマや映画、アニメ、スポーツなどの動画を定額で見られるサービスも近年ニーズが高まっているジャンルです。定額で視聴し放題という点は同じでも、ユーザーに提供されるコンテンツはサービスごとに大きく異なります。また、気軽に無料トライアルできるサービスや、オリジナルで制作したコンテンツを提供するなど、新規ユーザー獲得だけではなく既存ユーザーを囲い込むための戦略が多く見られるのも特徴です。
まとめ
サブスクリプションとは、時代のニーズに応える契約形態のひとつです。今後、さまざまな分野でサブスクリプションの世界はますます広がっていくでしょう。IT化や消費者のニーズに応える形で、Microsoft社もソフトウェアのサブスクリプションとして「Microsoft 365」を提供しています。常に最新のバージョンをクラウド経由で利用できるため、利便性が高く、ビジネスの現場でも活躍します。