製造業

プロトタイプとは? 種類や作成するメリットをわかりやすく解説

製造現場では、製品のプロトタイプを制作するケースが少なくありません。プロトタイプの制作にはさまざまなメリットがあるのですが、きちんと理解できている方は意外と少ないようです。本記事では、プロトタイプの概要や制作するメリットなどについて、わかりやすく解説をします。

プロトタイプとは? 種類や作成するメリットをわかりやすく解説

Factory of the Future

プロトタイプとは

プロトタイプとは、商品やサービスなどの試作品を指し、英語ではPrototypeと表記します。ビジネスの現場では製品やサービスに関して、もしくはシステムエンジニアリングにおいてプロトタイプ宣言などといった形で使われています。また、プロトタイプガンダムやプロトタイプケンプファー、プロトタイプゲームなど、エンターテインメント分野でも良く耳にする言葉です。さまざまな使われ方をしますが、基本的な意味はほぼ同じです。

自動車やスマートフォンなど、プロトタイプはさまざまな製品で制作されています。また、製品の簡易版を制作し、効率的な開発を行うプロトタイプ開発なるソフトウェア開発手法もあります。

プロトタイプの種類

ひと口にプロトタイプといっても、複数の種類があることを理解しておきましょう。よく知られているのは、ファンクショナルプロトタイプとデザインプロトタイプ、コンテクスチュアルプロトタイプの3つです。

ファンクショナルプロトタイプ

ファンクショナルプロトタイプは、製品の動作をチェックするための試作品です。アプリやソフトウェア開発であれば、ユーザーが行った操作に対し、正しい動きをするかどうか、問題が発生しないかどうかなどを確認します。

完成した製品が正常に動作しないとなれば、企業の信頼を損ねかねません。リリースしてから不具合が発見された場合、製品の回収や代替品の用意など、多大なコストが発生するおそれもあります。

実際の動作を事前にチェックできるため、問題点の抽出を行えるのがメリットです。また、ユーザーが実際に使用していると仮定したシミュレーションもでき、快適性を損ねていないかなども確認可能です。

デザインプロトタイプ

デザインプロトタイプは、ファンクショナルプロトタイプの進化版です。より完成品に近い仕上がりで制作した試作品で、機能はもちろんデザイン面も最終的な製品とほぼ同じです。

アプリやソフトウェアの場合、開発段階では動作が軽かったのに、リリース後は動きが重いといったことが起こりえます。そこで、限りなく完成品に近づけた試作品を制作し、ユーザー使用時の重さや視認性などもチェックするのです。

コンテクスチュアルプロトタイプ

コンテクスチュアルプロトタイプは、ユーザーに製品使用時のイメージを抱いてもらうための試作品です。アプリやゲームなどを、実際に使用している様子を動画で撮影し、ユーザーへ公開するといった具合です。

これにより、ユーザーはまだ見ぬ製品を、実際に使用しているような感覚を体験できます。動画を用いたプロモーションのほか、テレビコマーシャルやカタログなどを用いるケースも少なくありません。

プロトタイプを作成するメリット

プロトタイプを制作したほうがよいのか悩んでいる企業経営者や担当者にとって、どのようなメリットを得られるのかは気になるところでしょう。主なメリットは4つあります。

完成品のイメージを伝えられる

製品を開発するとなれば、設計図を起こすのが一般的です。ただ、平面の図面では完成品の具体的なイメージが掴みにくく、特徴や魅力を相手に伝えにくいというデメリットがあります。

住宅をイメージするとわかりやすいかもしれません。家を新築する場合、事前に図面を見せてもらいますが、ほとんどの方はそれだけで完成した家をイメージできないでしょう。そのため、試作品であるモデルハウスに足を運び、完成品のイメージを掴むのです。

試作品として形にすれば、開発しようとしている製品の魅力や特徴をしっかりと相手に伝えられます。形になっていないと、今までの製品と何が違うのか、どのような魅力があるのかわかりません。熱意を込めて上司やクライアントに説明しても、理解を得られない可能性があるのです。

このような状況を回避すべく、プロトタイプを制作します。完成品とほぼ同じ機能、操作性を実装した「モノ」を作り、実際に触れてもらうことでより理解を得やすくなるのです。

製品・サービスの質が高まる

プロトタイプの制作により、製品やサービスの質向上につながります。たとえば、リリースした製品が想定外の使われ方をするケースは少なくありません。開発側がまったく意図していなかった使い方をされてしまい、その結果不具合が生じる可能性があります。

アプリやソフトウェアであれば、バグの問題もあります。完璧だと思っていたプログラムでも、バグが発生するケースは多々あります。万が一、リリース後にバグが発見されたとなると、対策に追われてしまい膨大な時間とコストを費やす羽目になりかねません。

また、内容的に素晴らしい製品であっても、操作性に難がありユーザーから受け入れられない可能性もあります。このような問題も、事前にプロトタイプで確認しておけば、発生を防げるのです。

プロトタイプを用いて検証と分析、改善を重ねれば、製品やサービスの質がより高まります。使いやすく魅力的な製品にブラッシュアップしたのちにリリースでき、顧客満足度の向上にもつながります。

認識のズレが生じにくい

製品やサービスの開発は、複数人からなるチームで取り組むケースがほとんどです。一人ひとりが共通の認識をもって作業を進めれば問題ないのですが、チームで取り組むプロジェクトでの認識統一はそれほど簡単ではありません。

人によって感性や理解力などは大きく異なるため、認識のズレが生じるおそれがあります。その結果、不要な機能を実装してしまい手戻りが生じる、リリースのタイミングが遅れるといったことも起こりえるのです。

プロトタイプを制作しておけば、これらのリスクを軽減できます。あらかじめ、試作品で完成形の全体像を把握できるため、チームメンバー全員で共通の認識をもてるのです。

おぼろげなイメージだけを頼りに製品の制作を進めると、進捗も滞ります。こうしたほうがよいのだろうか、こうするべきなのではといろいろなことが頭をよぎってしまい、作業が進みません。完成形たるプロトタイプがあれば、目指すべきゴールが明確になっているため、このような問題も起きないでしょう。

PDCAを回しやすい

プロトタイプを用いた開発は、PDCAを回しつつ段階的に完成形へと向かっていける強みがあります。プロトタイプを使い、適宜検証や分析、調整を繰り返すため、クライアントのニーズに沿った製品を開発できます。

仕様書通りの製品、サービスを開発しても、クライアントのニーズを満たせないケースは少なくありません。発注者側と受注者側で、認識のズレが生じていると、このようなことはよく起こります。

クライアントと受注者側では、有する知識量や経験が大きく異なるため、ニーズを正確に汲み取れていない可能性もあります。その結果、完成した製品やサービスが、クライアントの納得いくものではなかったということも起こりかねません。

あらかじめ、プロトタイプを制作してPDCAを回しつつ開発を行えば、このようなリスクも回避できるでしょう。その都度クライアントにも確認してもらい、指摘やアドバイスを受けつつブラッシュアップしていくのです。

このように、小さく早いPDCAサイクルを回しながら開発を進めれば、手戻りの発生も軽減します。効率よく作業を進められ、トータルでの開発時間も短縮できるでしょう。しかも、検証と改善を幾度となく繰り返しているため、質の高い製品やサービスに仕上げられるのです。

まとめ

プロトタイプを用いた開発により、手戻りの発生を抑制しつつ、より高品質な製品やサービスの開発を実現できます。この機会に、プロトタイプを用いた開発手法に切り替えてみませんか?なお、以下でご紹介する資料ではビジネスに関するさまざまなヒントが網羅されています。気になる方は、併せてチェックしてみてください。

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