頻発する自然災害、国家間の対立、感染症の蔓延など、不安定な社会情勢が続く現在、SDGsの重要性を改めて強く意識している方も多いのではないでしょうか。この記事では、「SDGsとは何か」という基本事項からはじめ、企業が実現に向けて今後取り組んでいくべきことと、得られる効果について解説します。
SDGsとは何か。意味とその経緯を解説
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年にパリで開催された国連会議において、各国首脳の全会一致の下に締結された国際的な開発目標です。SDGsの目的は2030年までに、現在世界が直面している環境、政治、経済などのあらゆる問題を解決し、人類社会を持続可能な形で将来の世代に引き継いでいくことにあります。SDGsでは以下に挙げる17の目標を設定しています。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全なトイレと水を世界中に
- エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任、つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
これらの目標は相互に関連し、ある目標の達成が他の目標の達成に影響を与えるかたちとなっています。たとえば、「1. 貧困をなくそう」を達成することは、「2. 飢餓をゼロに」を目指すことに関連しているのは明らかでしょう。
その他、気候変動リスクへの対応にはクリーンエネルギーの開発が重要です。また、平和で公正な社会の実現はあらゆる不平等をなくすことにつながり、すべての人の豊かさに貢献するでしょう。いずれにせよ、SDGsの目標とはすべて、未来の地球人類の生活を向上することを目指すためのものです。
日本国内のSDGsの取り組み
SDGsはすべての国、組織、個人が取り組むべき課題であると言われており、日本政府や国内企業もこの取り組みに参加しています。たとえば、日本政府は現在、カーボンニュートラルの促進など、脱炭素社会の実現を強力に推進しており、2021年10月の所信表明演説において、菅義偉元首相は次のように発言しています。
「菅政権では、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力してまいります。
我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。
もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要です。」
ここで菅元首相は具体的な施策として、次世代太陽電池やカーボンリサイクルなどの研究開発の促進、規制改革などの政策、グリーン投資の普及、環境関連分野のデジタル化などを挙げています。このような指針は、基本的には現在の岸田文雄首相にも引き継がれているのです。実際、岸田首相は2021年11月のCOP26において、「2030年度までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを目指す」と表明しています。
もちろん、日本政府はこうしたエネルギー政策以外にも、男女格差の解消、労働者の雇用改善、健康寿命の延伸など、SDGsの達成に資する幅広い取り組みを進めています。また、世界的なSDGsへの関心の高まりや、日本政府の後押しを受けて、数多くの企業がSDGsに取り組んでいます。その中でも、日本政府は「ジャパンSDGsアワード」を設けて、SDGsについて特に優れた取り組みをしている企業・団体に対して顕彰しています。
SDGsの取り組みによって得られる効果
「SDGsに取り組む」と聞くと、ボランティア活動のようなことを連想する人も多いのではないでしょうか。
しかし、SDGsの取り組みは、単に社会貢献するだけではありません。前述の所信表明演説において「積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながる」と強調されているように、SDGsの取り組みは、企業に一方的な負担や貢献を強いるようなものではなく、むしろその成長や課題解決の助けにもなり得ます。ここでは、その具体的な効果について、紹介していきます。
市場拡大や雇用創出の可能性
SDGsの活動によって、市場拡大や雇用創出の機会が広がることが期待できます。SDGsはエネルギー産業を中心に、既に巨大なビジネス市場としても機能しているため、SDGsに資する技術やサービスを開発することが、自社の新規ビジネスの拡大に好影響を与える可能性があるのです。また、SDGsに取り組む過程で、これまで付き合いのなかった企業や自治体、官公庁などとも縁が生まれ、それらがビジネスチャンスをもたらすかもしれません。
また、現在は投資家もSDGsを重視する傾向が高まっているので、SDGsの取り組みを推進し、その活動を社会に発信していくことで、キャッシュフローが良くなることも見込めます。社内の管理職における男女比率の是正や、従業員の労働環境の改善など、どちらかと言うと社内向けの取り組みであってもメリットは期待できます。従業員が働きやすい環境を構築することは、「8. 働きがいも経済成長も」に寄与すると同時に、離職率を下げたり、有能な人材を集めやすくなったりする効果があるからです。
ブランドイメージ向上
SDGsが企業にもたらす効果として、ブランドイメージの向上が挙げられます。異常気象、自然災害、感染症の拡大、国家間の対立など、現代の社会は非常に先行き不透明な不確実性の時代に突入しています。このような状況の中、「持続可能な社会とは何か」という問いは、多くの人が共有している関心ごとであると言えるでしょう。
このようにSDGsへの関心が社会的に高まっている現在、SDGsに積極的に取り組む企業は社会的責任を果たしている優良企業として世間から高く評価される傾向があります。SDGsに配慮した企業活動や商品・サービスが、そのまま付加価値となるのです。つまり、SDGsへの取り組みは、企業のブランド戦略としても機能するでしょう。
SDGコンパスを活用しよう
SDGsの取り組みを効果的に進めていくには、「SDGコンパス」の活用がおすすめです。SDGコンパスとは、GRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)、WBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)、国連グローバル・コンパクトの3団体によって策定されたもので、SDGsに取り組む企業のための一種のフレームワークです。上記3団体による「SDGsの企業行動指針/SDG Compass」によれば、このフレームワークは以下の5つのステップから成り立っています。
- SDGsを理解する
- 優先課題を決定する
- 目標を設定する
- 経営へ統合する
- 報告とコミュニケーションを行う
これらのステップに沿って、自社の事業活動とSDGs活動の歩調を合わせていくことで、SDGsの達成に寄与しつつ、自社のビジネスの成長を促進していくことができます。
まとめ
SDGsとは、豊かで健全な人類社会を持続していくことを目指す国際的な目標です。企業は自社の事業やビジネス課題と結びつけてSDGsに取り組むことで、新たな商機や販路拡大、成長の機会を得られます。2030年までの目標達成に向けて、ぜひSDGs活動をビジネスに取り入れてみてはいかがでしょうか。