製造業

食品業界におけるIOTテクノロジーの活用

食品業界においてもIoT(Internet of Things)の導入が注目されています。多くの食品メーカーが導入を検討しているなかで、IoTの実態がわからず、導入に踏み切れない企業も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、食品業界におけるIoTの概要やメリット、また導入事例について詳しく解説していきます。

食品業界におけるIOTテクノロジーの活用

Factory of the Future

食品業界におけるIoTとは

まず、食品業界が抱える課題から、必要とされるIoTを明らかにしていきましょう。
社会問題にもなっている少子高齢化は、食品業界においても進んでおり、人出不足が大きな課題となっています。

さらに業界固有の特徴として、製造過程での労災発生件数が非常に多いことが課題として挙げられます。労災の具体的な内容としては「転倒」が最も多く、ついで「はさまれ・巻き込まれ」「切れ・こすれ」(切創)、「墜落・転落」などです。

少子高齢化が進めば、一人あたりの作業負荷がさらに増え、労災被害が増加するのは想像に難くありません。

また、食品業界の働き方としてシフト制が基本のため、人の入れ替わりが激しく、かつ外国人労働者が多いのが特徴です。そのため、必然的に教育コストが多くかかってしまうのです。

さらに、食品を扱う性質から、徹底した品質管理が求められる一方で、一度でも食中毒を発生させてしまうと、経営へ大きな打撃を受けるリスクから逃れられません。
このような課題を解決するための有効な手段として、シンプルなIoTの活用が求められます。

食品業界におけるIoTとは、工場内のモノ(機器やデバイス)をインターネットに接続し、センサーが収集したデータを使って生産工程の効率化を図るシステムのことです。
IoTを導入すれば、従業員の手や目に代わって、生産工程の監視や管理が自動化されるので、人手不足の解消と業務効率化が期待できます。同時に、労災事故や食中毒のリスクも軽減できるでしょう。

IoTを導入するといっても、操作に高度な専門知識を要するシステムは必要とされません。

働き方や人材が多様な食品業界においては、ITに精通してない従業員でも簡単に利用できる「シンプルなIoT」こそが不可欠なのです。

食品業界にIoTが求められるきっかけとなったHACCP

食品業界にIoTが求められる理由の一つとして、2021年6月から義務化される「HACCP」(ハサップ)が挙げられます。

「HACCP」とは、「危害(Hazard)」「分析(Analysis)」「重要(Critical)」「管理(Control)」「点(Point)」の5つに由来する、食品衛生管理のガイドラインです。

HACCPに対応するには、原材料の仕入れから生産、製品の出荷、販売にいたるすべての食品事業者が、食品の安全性を確保するために計画を作成し、管理することが求められます。

具体的には、厳格な基準に基づき、工場などにある冷凍庫や冷蔵庫、陳列棚の温度・湿度管理や、定期的な衛生検査の実施、管理データの作成・保存などを行わなければなりません。

もともと人材が不足している状況で、このような業務が加わることは、大きな負担でしょう。

そこで、IoTシステムを導入することにより、HACCP対応の中で大きなウェイトを占める温度・湿度管理については、解決が見込めます。

センサーを必要な場所に設置することで、手作業では時間も手間もかかる温度・湿度管理だけでなく、データ作成を一気に自動化、さらに保存までできるからです。

インターネットに接続しているため、スマートフォンやタブレットからの一元管理が可能なこともメリットといえるでしょう。

IoTの導入は、業務の効率化だけでなくデータを基にした品質管理自体のクオリティ向上も実現できるのです。

食品業界におけるIoT導入の課題

業務の効率化と品質管理向上が期待できるIoTですが、導入にあたってはいくつかの課題が存在します。導入を成功させるためにも、課題についてあらかじめチェックしておきましょう。

セキュリティ対策

工場内の設備をインターネットでつなぐIoTは、外部からの攻撃を受けやすいリスクを抱えています。工場のIoTがサイバー攻撃を受ければ、システムダウンして操業停止に追い込まれるだけでなく、製品や設備に関する機密情報の漏洩が起こり、市場からの信用を失うかもしれません。IoT導入にあたっては、設備やデバイスに関して強固なセキュリティ対策を講じることが大前提といえるでしょう。

多額な導入コストがかかる

IoT導入には、工場の各設備にセンサーを設置する必要があるため、初期投資がかかります。

また、センサーなどの機器の操作やデータ送信のためには、これまで以上の電力が必要です。

さらに、導入より既存のネットワークへの負荷が大きくなると、システムの脆弱性が生じやすいので、ネットワークを分散化させるなどのセキュリティ対策も求められるでしょう。さらに、導入コストだけでなく、従業員の教育に関するコストもかかってきます。

食品業界においてはシンプルなIoTが求められますが、人的なエラーをなくすためには、導入にあたって一定の教育プログラムをこなすことが必要です。
また、センサーで集めた工場のデータをどう分析し、施策に反映させるかを構築できる人材を育てる、または確保しなくてはなりません。

このようにIoT導入には、多額な導入コストがかかるので、長期的な視野に基づいた予算計画や導入目標の設定など、経営者レベルでの判断が必要とされます。

食品業界におけるIoTの導入事例

最後に、IoT導入の具体的な事例として、食品工場で温度チェックを実施する事例を紹介します。

食品工場における温度チェック

2021年6月から義務化されるHACCP 対策の一つとして、ドコモのIoTサービス「ACALA MESH」が注目されています。

これは、クラウド型の統合温湿度監視記録ソリューションで、工場内にセンサーを設置するだけで、温度や湿度のデジタルデータを取得できるというものです。取得したデータは安全な回線を経由してクラウド上に保管され、温度・湿度が基準値から外れた場合は、メールや電話などでアラームが発せられます。クラウド上に保管するため、データはスマートフォンなどからも監視が可能です。

お弁当やお惣菜などを製造するタカラ食品工業株式会社では、温湿度のチェックを手動で行っていたとき、作業効率が悪いだけでなく、記入漏れなどのミスも発生していました。しかし「ACALA MESH」を導入したことで、データを記入する必要がなくなり、業務が効率化できたそうです。それに加えて、データの信憑性や安全性も向上したといいます。

まとめ

慢性的な人出不足のなかでHACCP対策を迫られる食品業界において、IoTの導入は活路を見出すものとなるでしょう。AVNETでは、お客様がイノベーションを通じて課題解決することをサポートしています。食品業界のIoT導入についてのホワイトペーパーも用意されているので、検討されている方はぜひご覧ください。

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