「色」が人に与える影響というのは、想定以上に大きいものです。当然、店舗にどんな色を取り入れるかによって印象はガラッと変わります。このため、小売業経営者は店舗にどのような色彩を採用するかに悩むことでしょう。魅力的な店舗を演出するためには、それぞれの色が持つ効果を知り、適切な配色パターンをコンセプトに合わせて使い分けることが大切です。そこで本記事では、店舗の色彩を考える際に参考にしていただきたい情報をお届けします。
色の効果、それぞれの特徴
店舗に対する印象を決定づける要素には、立地・建物面積・スタッフの対応・店内の清潔感・店舗スタッフの対応・設置する家具などがあります。この中に色も含まれており、店内に配置する家具に関しては色として考える側面が強いでしょう。それではまず、色が持つ基本的な特徴をそれぞれ見ていきましょう。まずは大まかな分類から。
暖色系と寒色系
- 暖色系…赤や黄色、橙色など温かい印象を与える
- 寒色系…青や水色など冷たい印象を与える
- 中間色…紫など暖色系と寒色系の特徴を併せ持った色
膨張色と収縮色
- 膨張色…白や薄い暖色系の色など膨らんで見える
- 収縮色…黒や濃い寒色系など引き締まって見える
店舗に採用する色に悩んだら、ひとまず暖色系か寒色系かだけでも決めておくと、まとまりのある色合いにできるでしょう。では次に、各色の特徴を知りましょう。
青色系
- 精神を鎮静化し安定させる
- 集中力を増進させる
- 解毒、殺菌作用がある
- 催眠効果がある
- 内分泌系(ホルモン等)の働きを鎮静させる
- 発汗を抑える作用がある
- 冷静、落ち着きのあるイメージ
赤色系
- アドレナリンの分泌
- 心拍数を上昇
- 新陳代謝を促進
- 交感神経を刺激
- 食欲を増進
- イメージ:血気盛ん(元気、活発)
黄色系
- 神経を興奮
- うつ・精神衰弱に効果
- リンパ系を刺激
- 身体機能の向上
- 消化器系の働きを促進
- 消化不良の改善
- イメージ:軽量
緑色系
- ストレスを減少
- 副交感神経を優位に
- リラックス効果
- 鎮静作用
- 鎮痛作用
- 緊張緩和
- 催眠作用
- 解毒、殺菌作用
- 眼を休める
- イメージ:爽やか
紫色系
- 血圧・脈拍を低下
- 想像力・創造力を促進
- 治癒効果
- 不安・ストレスを蓄積
- イメージ:高貴、エレガント
橙色系
- 食欲不振を回復
- 筋肉痛の緩和
- しびれの緩和
- 内分泌を活性化
- イメージ:健康的、躍動感
茶色系
- 心身ともにリラックス
- 安心感と安定感
- イメージ:大人の落ち着き
白色系
- 緊張感・警戒心を増進
- 眼球が披露(長時間見ると)
- 不安感(長時間見ると)
- 重量を軽くかんじさせる
- イメージ:清潔
黒色系
- 自信を与える
- モノが締まって見える
- 強い意志が伝わる
- 重量を重く感じさせる
- 眼球が疲れにくい
- イメージ:シック
灰色系
- エネルギーを低下
- 脳機能を低下
- 対人ストレスを緩和
- イメージ:地味
アースカラーを採用する店舗が多いのはなぜ?
小売業の店舗を見ていると、あることに気付きます。それが、「ほとんどの店舗が”アースカラー”を取り入れている」ことです。アースカラーというのは、大地や森林をイメージさせるような茶色系や緑色系の色を使った配色パターンです。カーキやベージュなども積極的に取り入れます。
多くの店舗がアースカラーを採用する理由は、各色は暖色系に該当するものが多く、色のトーンも落ち着いているため配色が簡単で、かつ落ち着いた居心地の良い雰囲気を演出できるからです。
例えば家具ブランドの店舗のほとんどはアースカラーを取り入れています。無印良品、ニトリなど日本の大手家具ブランドはもちろん、海外の家具ブランドでもほとんどが店舗内装にアースカラーを取り入れています。それに反し、スウェーデン初のIKEAは店舗内装にブランドカラーである白・黄色・青を取り入れており、落ち着いた雰囲気よりも大型店舗としてのイメージと、高品質低価格なブランドを演出しています。
また、飲食店においてもアースカラーは積極的に採用されており、特に落ち着いた雰囲気で食事を楽しんで欲しいと考えるカフェなどはほとんどがアースカラーです。
ただし、アースカラーにもデメリットはあります。白や黒などの差し色がないと地味な印象を与えますし、赤や青といったハッキリとした色合いを取り入れると配色が途端に難しくなります。このため、アースカラーを取り入れる際は店舗のコンセプトに合致している配色かどうかを十分に検討することが大切です。
配色パターンの基本
店舗に色を取り入れる際に王道とされているのはアースカラーだけではありません。魅力的な店舗を作るためには、店舗のコンセプトと照らし合わせながら様々な配色パターンを検討する必要があります。そこでここでは、配色パターンの基本をご紹介します。
無彩色を使った配色パターン
白・黒・灰色といった無彩色は特定の色を持ちません。どの有彩色(赤・青・黄色など)とも上手くまとまる特徴があります。特に白と黒は合わない色はないほどの無色彩なので、配色が苦手な人はどちらかの色を基本として、有彩色を組み合わせると店舗の雰囲気をコントロールしやすくなります。無彩色と有彩色を1つずつ選んで組み合わせることで、比較的おしゃれな空間を演出できます。
灰色も使いやすい色ではありますが、明度が近い色と組み合わせるとぼんやりとした印象を与えることになります。視認性が悪くなるので、灰色を取り入れる際は一方で明度がハッキリとした色を選ぶと良いでしょう。
また、隣接すると馴染んでいないように感じられる色同士でも、間に無彩色を挟むことで雰囲気を調和させることができます。これはセパレーションと呼ばれるテクニックであり、無彩色以外でも利用できるのでぜひ取り入れてみてください。
同系色を使った配色パターン
無彩色を使った配色パターンと同様に、色に自信がない人でも簡単にまとめられるのが同系色を使った配色パターンです。先ほど暖色系と寒色系、膨張色と収縮色という分類を紹介しましたが、実は他にも有彩色と無彩色、純色・清色・濁色といった分類があります。また、同系色を使った配色パターンとは主に以下の3点となります。
- 明度、もしくは彩度だけが異なる色の組み合わせ
- トーンは異なるが同じ色相の色の組み合わせ
- トーンは同じで、かつ色相上隣ある色(隣接色)の組み合わせ
これらの基本を抑えることで、洗練された印象の配色パターンに仕上げることが可能です。ただし、短調で抑揚のない色彩になってしますケースも少なくないので、明度や彩度、トーンとコントラストを付けることで抑揚を付けます。
色相差を使った配色パターン
無彩色や同系色を使った配色パターンは大胆さに欠けることから、店舗のコンセプトによっては合わない場合があります。そこで、色が持つ効果をより引き出すために色相差を使った配色パターンにもチャレンジしてみましょう。ただし難易度を下げるために、同じトーン内での配色を行うのが基本となります。
例えば、色相環の角度でほぼ正反対にある色(補色)を組み合わせた配色では、色の差が大きいためダイナミックな印象やカジュアルな印象を与えられます。あるいは、色相環の角度で30~60度の色相差のある色を類似色相と呼び、ほぼ同系色となる隣接色相と比較すると色の変化をより感じさせることができる配色です。
いかがでしょうか?店舗の色彩というのは、基本を押させるとそう難しいものではないことがわかります。ただし、デザイナーズ物件のように高度な配色パターンを使ったような店舗内装にしたい場合は、やはりプロのデザイナーに依頼するのが無難でしょう。まずは、店舗のコンセプトからどの色を基本として、他にどの色を取り入れるかを考えてみましょう。