DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ITの浸透によって人々の生活をあらゆる面でより良く変化させるという概念です。実店舗・ECサイト・本部の情報を一元化してマーケティングに活用するオムニチャネルや、顧客生涯価値(LTV)の最大化を目指すオンラインとオフライン統合の取り組みも、DXにつながるものとして注目されています。
DXが必要とされる背景
パソコンやスマートフォンの普及に伴って、消費者の行動は大きく変化しました。インターネット検索で情報を入手した後に実店舗で購入するウェブルーミングや、実店舗で実物を確認してからECサイトで購入するショールーミングによって商品を購入する人が増えたことで、DXの必要性が高まっています。さらに、人々の価値観が多様化し、少子高齢化による人手不足の慢性化といった社会問題が生じていることなども、DXが必要とされる要因です。
さらに、既存モデルのコモディティ化、企業間競争のグローバル化、レガシーシステムが抱えるリスクといった問題に対応するためにも、DXは重要視されています。コモディティ化とは、市場参入時には高い付加価値を持っていた商品やサービスが、他社の参入で市場価値が下がって一般的なものになることを指し、コモディティ化が起こると、企業の利益率は低下します。
レガシーシステムとは、古い技術や仕組みで構築されたシステムのことです。システムを導入してから時間が経つと、システムに肥大化・複雑化・ブラックボックス化などが生じるため、最新のITツールやテクノロジーとの連動が困難になり、改修を行うとなると多大な費用や工数が発生します。
小売業におけるDXとは
それでは、企業がDXを推進するためには具体的に何を行えばよいのでしょうか。特に市場競争の激しい小売業において、DXを推進するためのポイントを3つ紹介します。
データの連携・活用
実店舗とECサイトの在庫情報や顧客行動のデータを一元化したり、各チャネルの在庫データベースと顧客データベースを統合して連携・蓄積してマーケティングに活用したりするように、データの連携・活用を図ることが、DX推進のポイントです。
公式アプリで来店予約ができるようにして利便性を上げたり、キャッシュレス決済や共通ポイントを導入したりして顧客満足度を高めることも、顧客の購買意欲や売上向上につながります。
既存業務の自動化・オンライン化
既存業務の自動化・オンライン化も、DX推進において重要です。
過去の販売実績や気象情報などのデータを基に商品発注数や来店客数、売上などを自動的に算出する自動予測システムを発注業務に導入すれば発注作業時間が削減され、商品の欠品や廃棄ロスの減少につながります。
また、これまで対面で行っていた接客やサービスの提供といった業務をオンライン化し、従業員がどこでも働ける環境を構築することで、リモートワークの促進や業務効率化、業務オペレーションの省人省力化が可能です。
既存システムのクラウド化と連携
既存システムのクラウド化と連携も、DXを推進するうえで忘れてはいけません。
各部門で利用しているオンプレミス型のシステムをクラウド化し、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で連携させることで、最新技術との連動が難しいレガシーシステムから脱却して SEの作業負荷を軽減し、システムの柔軟性と拡張性を確保できます。また、顧客データや実績データなど自社が保有するすべてのデータを全社で共有して活用し、企業競争力の向上が可能です。
DXにおいて監視カメラ(クラウドカメラ)の利用が拡大!
小売業でDXを推進するには、以上のポイントを踏まえて自社に必要なものを取捨選択することが重要です。矢野経済研究所のレポートによれば、Withコロナ/Afterコロナを見据えたDXに関する投資として、店舗における「クラウドカメラ」の利用が広まってきています。ここからは、クラウドカメラの機能を簡単に述べたうえで、小売業におけるクラウドカメラの活用・導入事例を紹介します。
クラウドカメラとは
クラウドカメラとは、インターネットに接続されたカメラです。撮影映像はクラウド上に保存されるのでレコーダーの購入・設置スペース・メンテナンスが不要です。遠く離れた場所からでも映像を確認でき、データ消失のリスクが低いのがメリットです。
小売店に限らず、オフィス、事務所、飲食店、工場、倉庫などさまざま施設で利用され、その用途は防犯、在庫管理、状況把握、情報漏洩リスク防止など多岐にわたります。
小売業におけるクラウドカメラ活用例
業務の効率化が急務とされている小売業においては、クラウドカメラを活用することでリスクマネジメント、業務効率化、収集したデータの活用が可能です。
リスクマネジメント
クラウドカメラは、防犯対策、お客様トラブルの事実確認、スタッフ管理などリスクマネジメントのツールとして活用できます。たとえば、クラウドカメラを見えるように設置し、レジまわりや店舗全体を撮影することで、強盗や万引きの抑止力となるでしょう。また、クラウドカメラで接客の状況を常時撮影していれば、金銭の受け渡し状況や金額、商品状態やサービス品質などを確認でき、トラブルが起きた場合にも迅速な解決やサービス改善に役立てられます。さらに、スタッフ管理の用途では、勤怠管理に利用できるだけでなく、スタッフのオペレーション・身だしなみ・接客態度などを把握でき、万が一バイトテロの被害を受けた際は、証拠を押さえることも可能です。
業務効率化
クラウドカメラがあれば臨店業務にも活用できるので、業務効率がアップします。たとえば、店舗状況の確認や客層・購買行動の把握によって、適切なタイミングでの品出しやレジ応援などが可能になり、集客対策を講じた場合には効果測定が迅速に行えるようになるでしょう。また、店舗まで足を運ばなくてもリモートで確認して、適切な支援を行うことも可能です。
データ活用
クラウドカメラは、もはや映像の記録や保存を単純に行うだけの利用にとどまりません。設置カメラ数が増加し、画像認識や解析技術が進化して用途が拡大したことにより、「侵入者・不審者の感知」「混雑情報の可視化」「店舗における顧客動線の可視化」などへのデータ活用も始まっています。これらは小売業のDXを促進するものとして大いに期待されています。
クラウドカメラ導入事例:防犯用途だけでなく業務ツールとしてカメラを活用
クラウドカメラの導入事例として、ある宝飾店のケースを紹介します。
この宝飾店では、もともと防犯、商談の記録、接客の品質向上を目的に、オンプレミス(自社保有)のシステムを運用し、レコーダーに録画するタイプの監視カメラを使用していました。それをVPN接続し、東京と大阪の営業監査部門で各店舗をモニタリングしていました。
しかし、本社で障害が起きるたびに復旧するまで店舗の録画が不能になるという問題や、データセンター経由によるVPN構築やルーター保守費用の肥大化など複数の課題がありました。また、新型コロナ感染拡大によるリモートワークのニーズも高まり、どこにいてもシステムが管理できる体制を整えるため、オンプレミスからクラウドへの移行が決まりました。
クラウドカメラを導入した結果、リモートワーク環境でもカメラ映像の確認ができるようになり、レコーダー関連のメンテナンスが不要で手離れが良いため、業務負荷の軽減につながりました。また、データ検証作業の軽減化や、新人教育、接客の品質向上などにも寄与し、業務効率化に繋がっています。レコーダーのメンテナンスや買い替えがない点にもメリットを感じています。今後もリモート化が進めば、さらなる利便性の向上が期待されます。
小売店の課題解決にはクラウドカメラの導入がおすすめ!
画像認識精度や情報取り扱いなどに課題はあるものの、クラウドカメラ関連の技術や活用法は日々進化しており、小売業のDX化を促進するものとして期待されています。リスクマネジメントや業務効率化にも通じる中長期的なDX投資として、クラウドカメラの導入がおすすめです。