新型コロナウイルスの脅威が薄れた現在も、不安定な国際情勢や複雑化する消費者行動など、サプライチェーンを取り巻く環境は常に変化し続けています。こうしたVUCA時代にあわせて、サプライチェーン管理について見直すことが必要です。これからのサプライチェーン管理に求められるものとは何かについて解説します。
「サプライチェーン」の管理とは?
原料調達から製造、配送、消費者へ販売するまで鎖のようにつながった流れを「サプライチェーン」といいます。サプライチェーンの管理とは、ひとつひとつの過程を見るのではなく、全体を一連の流れとして考えて管理することです。
サプライチェーンでは、原料調達から販売までの各工程は有機的につながっています。そのためひとつの行程で遅れが出た場合はその後すべてに影響します。たとえば原料の調達に遅れが出た場合は、製造工程から顧客や消費者への納品までに影響が出るといった具合です。
サプライチェーン管理とは、このような各工程の遅れや非効率さなどを全体で見て最適化を図るマネジメント手法です。
サプライチェーン管理では、製造・倉庫・運送・小売などの各現場が密接に連携して業務を遂行できるように、シームレスな管理と情報共有に取り組みます。こうして原料の供給者から消費者に至るまでの各プロセスを統合的に管理することで、業務の迅速化、コスト削減、全体の効率化などを実現していくのがサプライチェーン管理の特徴です。
サプライチェーン管理が求められる背景
サプライチェーン管理は1980年代に登場した概念ですが、近年は従来の手法が見直されつつあります。その背景にあるのが、経済のグローバル化により世界中の企業を相手に競争する必要が出てきたこと、消費者の行動やニーズが多様化していることです。
グローバル化で激化する企業競争
企業間の競争は、グローバル化により激化し、いまや世界中の企業を相手として想定しなくてはいけなくなっています。競争に勝つためにも世界各国に調達、製造、販売の拠点を持つ必要性も出てきます。
海外からの供給を考える際は、新型コロナウイルス、ロシアによるウクライナ侵攻などのように不確実なリスクの発生を考慮することが特に大切です。サプライチェーン分断を避けるために情勢チェックをする、複数の供給元を確保するなどの対策に取り組み、何かトラブルが生じても的確な対応ができる強靭なサプライチェーンの構築がグローバルな競争力につながります。
多様化する消費者の動向とオムニチャネルへの対応
インターネットやスマートフォン等の普及により、消費者の行動様式は常に変化するようになりました。現在の消費者は購入をする際に、ネット上で多種多様な商品の価格を比較するほか、デジタル広告やSNS、インフルエンサーによる発信などの情報を得ており、ニーズに影響を及ぼします。
さらに、「インターネットで調べてから実店舗に行く」「実店舗で商品を見てからECで購入する」など、オンラインとオフラインの境界を越えた消費者行動が増えているのも近年の特徴です。こうした消費者行動に企業が対応するためには、ECと実店舗の連携を図る、SNSでの商品情報取得を容易にするなど、オンライン、オフラインに関わらず複数のチャネルを横断し販売に結び付ける「オムニチャネル」の実現が望まれています。
これに伴いオムニチャネルに対応した需要予測を行うことも重要になります。これには過去の購買実績データのみでは不十分であり、Webのページビュー、SNS広告、検索トレンド、製品の評価、パブリックデータなどの外部データを組み合わせた分析が必要です。この予測は、AIをはじめとする最新技術を採用し大量のデータ処理を行うことで実現できます。
オムニチャネルに対応するためにも、在庫情報の一元化管理によって多様なチャネルへの供給を可能にする、立地条件のいいネットワークを確保して供給スピードを上げるといったサプライチェーン管理が重要になってきます。
サプライチェーン管理の目的
サプライチェーン管理の最終的な目的は企業の収益拡大です。この目標を達成するためには、以下で挙げる3つの課題を解決することが重要になります。
- リードタイムの削減
市場に素早く商品を提供できるよう、仕入れ、在庫、販売、出荷のリードタイムの削減を目指します。 - 在庫の最適化
在庫の最適化は収益に密接に繋がります。過剰在庫はキャッシュフローの悪化を生み出し、在庫不足は機会損失となるため、適正な在庫を保持するようにします。 - 適材適所の人材管理
サプライチェーン全体を見て、どこにどのぐらいの人材を投入すればいいかを把握し、必要数の人材を配置します。適切な人材配置をすることで、オペレーションをスムーズにします。
09のソリューションで実現するサプライチェーン管理
これからの時代に合ったサプライチェーン管理を行うためには、消費者行動や需要予測を押さえることが鍵になります。この需要予測を実現するためには、膨大な外部情報を分析する必要があります。そこで紹介したいのが、AIや機械学習による大量データ分析機能を備えた次世代のサプライチェーン管理プラットフォーム「09」です。
「09」ではサプライチェーン全体を可視化した上で、「多数のチャネルを横断した需要予測」と「デジタルツインによる供給予測」という2つのアプローチを行います。
次世代プラットフォームによる需要予測
オムニチャネルにおいて正確な需要予測をするためには、常に変化する消費者の購入方法を把握する必要があります。そのためには、POSデータ、過去のeコマースの受注、出荷、HPのPVなどの内部データに加え、Webの製品情報、SNS、パブリックデータ、天候、イベント情報などの外部データをリアルタイムに収集・分析することが求められます。
「09」は、高度なアルゴリズムを持つAIや機械学習を活用することで、多様かつ膨大な内部データと外部データを分析し需要予測を行います。また、販売パターンの相関関係を評価し、分析情報を自動的に予測モデルへ統合します。これにより需要予測の精度が上がり、よりリアルな消費者のニーズに合わせた販促計画や市場開拓戦略の立案が可能になりました。
需要予測に影響を与えている要素を需要計画に表示することもできます。
デジタルツインによる供給予測
サプライチェーン管理には、消費者の需要予測だけでなく、生産者・供給側の状況予測も欠かせません。天候により原料を調達することが困難になったり、物流の問題が起きて供給側に予期せぬ事態が起きたりした場合もサプライチェーンに重大な影響が及ぶためです。
ここで効果を発揮するのが、デジタルツインを活用した「09」の供給予測です。「09」ではコントロールタワーとよばれるデジタルツインによって、生産能力、労働状況、リードタイムなどのデータが可視化されます。
さらにコントロールタワーの機能を用いて、将来的に発生する可能性がある問題、潜在的な脅威の特定、解決策の提案を行います。例えばリアルタイムの入荷データ(IoT)を用いて将来のボトルネックを特定するといったことです。
起こりうる問題を独自に想定し、それに対する解決策を見出すことも可能です。複数の物流センターをまたいだ供給経路の変更、前倒しの生産、サプライチェーンの需要ピークのコントロールなど、複数のオプションを確保して供給側のリスクに備えます。
まとめ
グローバル化や消費者行動の変化、オムニチャネルの躍進など、ビジネスを取り巻く複雑な環境に対応するためにも、サプライチェーン管理の重要性が増しています。次世代のサプライチェーン管理ソリューション「09」は、AIやデジタルツインといった最新技術を活用してサプライチェーン全体を可視化し、膨大なデータを用いて需要や供給予測を実現します。まさにこれからのサプライチェーン管理に必要な要素を備えた「09」の導入をぜひご検討ください。