小売業

出店計画のたて方の基本を紹介

どんなに素晴らしい自社ブランドを持っていても、店舗拡大時に無作為に出店先を決めていては失敗する確率は高まります。本記事でご紹介するのは、店舗拡大時における重要な要素の一つである「出店計画」についてです。その立て方の基本を知り、小売企業や飲食企業は店舗拡大にぜひ役立てていただきたいと思います。

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出店計画とは何か?

出店計画とは、店舗ごとのコンセプトや店舗拡大の方向性を決める上で欠かせない戦略です。この計画には様々な作業や指標が含まれます。いくつかご紹介して行きましょう。

①方針の決定

出店の指針と呼ぶべき方針を決定します。どのような店舗形態で出店するのか?などの基本的事項を決め、大規模店舗なのか小規模店舗なのか、対面販売なのかセルフサービス販売なのかなどを決定していきます。大切なのは、自社ブランドについて熟知した上で「何が最も有効なのか?」を吟味することです。

②状況の分析

自社ブランドを取り巻くあらゆる情報を分析します。まず検討すべきは経営資源です。人・物・金・情報といった経営資源をどれくらい保有しているのか?新しい店舗にどれくらい費やせるのか?を明確にします。さらに、競合他社や顧客の存在など外部要因を分析し、自社ブランドのポジションを確定したり、期待できる売上などを予測します。

③目標の設定

いつまでに何店舗出店するのか?どの地域に何店舗出店するのか?など、企業ごとの経営戦略と突き合わせながら具体的な目標を設定していきます。そこには当然ながら、新店舗の予算や売上予測なども含まれています。また、目標通りに進まなかった場合に備えて、撤退の条件などを事前に決める撤退戦略なども同時に考えることが基本です。

④戦略の策定

次に具体的な戦略策定に移ります。まずは、自社ブランドにとって最も利益を生み出せる可能性の高いターゲット市場を決定し、ここでは立地戦略、エリアポジション戦略、店舗スタイル戦略などからターゲット市場を決定します。

立地戦略

業種ごとにマーケティング範囲となる商圏が存在します。店舗の売り上げ向上を目指すには、購買の可能性が高い地域や場所に店舗を置かなければいけないため、その地域の人口やアクセス、地形や地域住民などについて分析した上で決定します。

エリアポジション戦略

立地戦略で優位な地域では、同業他社の競合店が存在するケースが多いでしょう。そこで自社ブランドの優位性をアピールしなければいけません。例えば優位性を実現するための方法として、「ドミナント戦略」というものがあります。これは、特定地域に自社ブランドの店舗を多く展開し、地域内でのシェア拡大や経営効率向上を図ることで競合他社への優位性を確立する戦略です。

コンビニエンスストア等でよく見られる戦略であり、市区町村ごとに細分化して実施するケースが多いようです。

店舗スタイル戦略

エリアのニーズに基づき店舗規模などを決めます。全国一律に商品展開するのではなく、地域ごとにどういった商品に重点を置くのかなども考えることが大切です。

⑤計画の立案

最後に、物件の取得、設計・試行期間・竣工予定日などの日程を決め、開店直後のキャンペーンについてもこの段階でできるだけ詳細に決定しておきます。

目標総店舗数の考え方について

出店計画の中では、「10年間で50店舗体制を取り、東京以外にも関西や九州、地方都市への拡大を推進する」といった戦略を掲げるケースがあります。また、海外展開を検討するケースもあるでしょう。それらはどのように決まったのか?これを説明づける根拠がなければ戦略とは呼べず、出店計画を思い通りにコントロールすることもできません。そこで、ここでは目標となる総店舗数の考え方についてご紹介します。

まず、店舗あたりの面積と商圏範囲が広いブランドや、店舗あたりの面積は小さいが希少性が高くハイクラスなイメージを持つブランドでは、商圏範囲を広くとることができるため相対的に総店舗数は少なくなります。

例えば大手百貨店は、主要なターミナル駅周辺に大型店舗を構えています。顧客の多くは電車を利用して来店するので、商圏範囲は広域です。加えて、ハイクラスなイメージを確保するために出店する地理的要件も限定的になります。

ハイブランドとして評価されるブランドも、百貨店にテナント出店する他、主要都市に路面店舗を出店している場合が多く、出店エリアもハイエンドなイメージがある地理的市場に限定されます。こうした店舗は、必然的に店舗数を少なく抑えることになります。

例えば、三越伊勢丹ホールディングスは32店舗、高島屋は19店舗、松屋は4店舗となり店舗数が少ないほど希少性が高く、ブランド力が高いイメージがあります。また、TIFFANY&Co.の総店舗数は56店舗となっており、5年前の店舗数とほぼ変わらない状態です。

これらの情報から言えることは、出店する店舗のコンセプトやブランドイメージによって目標となる総店舗数が異なることです。

上記のブランドとは相対的に、郊外型の大型店舗となるイオンモールは国内で165店舗を展開しています。日常的なブランドであったり、店舗面積が小さく希少性が低いようなブランドで利便性が重視されるような場合では、店舗あたりの商圏範囲が狭いため市場をカバーするために多くの店舗数が必要になります。例えばドラッグストアやコンビニエンスストア、外食チェーンなどは数百から数千店舗を展開します。

自治体レベルでの市場選定

次に、出店する地域市場の範囲について考えます。つまり、「自治体レベルでの市場選定」の方針を決めていきます。物件ありきで「個々の物件の立地が良い」というだけで場当たり的に新規出店を繰り返すこともありますが、そこには次のような弊害があります。

  • チェーン企業として成長段階から店舗網が広域に分散してしまい、運営費用、広告宣伝などのコストがかさみ経営が悪化する
  • 出店する自治体の多様性が高まることでブランドイメージが分散してしまう恐れがある

三越伊勢丹ホールディングスは全国的に主要都市へ店舗を配置しています。百貨店が出店する自治体は市場規模が大きく、不特定多数の消費者を惹きつける力があります。そうした自治体に限定して店舗を構えることである程度ブランドイメージを保つことが可能です。

一方、コンビニエンスストアや外食チェーンなどは自治体ごとに10店舗以上出店しなければいけないことも多々あるため、個別のアプローチが必要になります。まずは出店すべき自治体の優先順位を決定してから、自治体ごとにどれくらいの店舗数が必要かを検討することが重要です。

出店計画を立ててみよう

いかがでしょうか?本記事でご紹介した内容以外にも出店計画において意識すべきポイントは他にもありますが、ひとまずは以上のポイントを意識して出店計画を立案してみてください。これまで意識したことがなかったような細かいポイントまで戦略を決めることにより、新規店舗出店や店舗拡大をコントロールして、成長を遂げることができます。この機会にぜひ、自社ブランドの出店計画を見つめ直してみましょう。

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