小売店の運営会社や、多店舗展開している企業にとって店舗運営マニュアルは欠かせません。店舗運営マニュアルが整備されていないと、サービス品質が低下し顧客満足度にもいい影響を与えないでしょう。この記事では、店舗運営マニュアルの重要性や、作成時のポイント、覚えておくべき注意点などについて解説します。
店舗運営マニュアルの重要性とは
そもそも、どうして店舗運営マニュアルが必要なのでしょうか。店舗運営マニュアルは、お店で働くうえでの約束事をまとめた、いわばルールブックです。ルールがない環境で働くとなると、店舗の責任者やスタッフが自分勝手な行動をしてしまい、最終的に企業イメージを損ねることにもつながりかねません。
また、現在の日本では少子化の流れがさらに進んでおり、今後さまざまな業界において働き手の確保が難しくなるとも言われています。少ない働き手をスピーディーに実戦レベルへ昇格させ、お店の戦力とするためにも店舗運営マニュアルは必要なのです。
マニュアルを作成することで、研修時の業務説明を簡略化できたり、業務の標準化が実現できたりするため、人の出入りが激しいお店であっても運営や責任者の負担が軽減されます。
続いては、店舗運営マニュアルを作成することのメリットについて詳しく解説していきます。
研修時の業務説明が簡単になる
スタッフ研修は、スムーズかつ適切に業務へ従事できるよう説明を行うことが重要です。このとき、働き方に関するルールが定められていない場合、説明内容は統一性を欠き、スタッフが混乱してしまう恐れがあります。店舗運営マニュアルがきちんと用意されていれば、各スタッフが明確なルールや働き方をしっかりと理解でき、いざ現場に入ったときの即戦力になる可能性も高くなります。
また、マニュアルがあれば、説明する側の負担を軽減できるというメリットもあります。その都度資料を用意する必要がなくなり、研修自体も簡略化可能。
加えて、誰が説明しても受け手の解釈にブレが生じなくなるのもメリットです。「しっかりとした店舗運営マニュアルを制作し、なおかつ研修スタイルも統一する」。これにより、スムーズに新規スタッフを育成することができるでしょう。
業務の標準化
業務を標準化し、マニュアルに記載することで誰もが同じ作業を行えます。もしこれができていないと、特定のスタッフにしかできない業務が存在してしまい、その人が休むと現場が回らなくなるということにもつながります。
こうした業務の属人化はできるだけ回避しましょう。そのためには、業務フローをしっかり明確に記載し、マニュアルを読めば誰でも業務に従事可能な仕組みを作らなければなりません。
業務を標準化すれば、品質の安定にもつながります。作業のプロセスをマニュアルへ記載し、全スタッフが同じ手順で業務を行うことで、品質が安定するだけでなく、ムダな動きを省くこともできます。加えて業務効率向上も期待できるでしょう。
また、年数が経過するにつれて業務のプロセスやルールが変更することも考えられます。このようなとき、マニュアルを更新せず放置してしまうと、スタッフが古いルールのまま業務を進めてしまいかねません。こうした事態が起きないよう、マニュアルは定期的に更新し、内容の変更をきちんとスタッフへ周知させる必要があることも覚えておきましょう。
店舗マニュアル作り方のポイント
初めて店舗運営マニュアルを制作するときは、何から手をつけてよいのかわからないかもしれません。決まった作り方はありませんが、ここではいくつか大切なポイントについてお伝えします。
行動と目的を記載する
現場に配置されたばかりのスタッフは、自分が何をすればよいのかわかりません。このようなスタッフがスムーズに業務へ従事できるよう、行動レベルまで落としこんだマニュアルを制作するのが大切です。
業務を行う場所や時間、分量なども明確に記載するとよいでしょう。
例えば、「Aの作業を行うときは必ずBの場所でする」「Cの作業分量が規定値に達したならDの作業へ移行する」といった具体性が重要です。作業時間や分量に関して具体的な数字で記載すれば、よりスタッフの理解を深められるでしょう。
また、スタッフがとるべき行動のみ記載するのではなく、併せて目的も明確にします。取るべき行動のみを記載しても、スタッフは「どうしてそれをするべきなのか」がわかりません。目的まで記載しておけば、スタッフは「この目的を達するためにこの行動が必要なのか」と理解しやすくなります。
店舗マニュアルに従うメリットを記載する
マニュアル制作の基本として、誰が読んでも理解できる内容に仕上げることが大切です。同時に、わかりやすい優れたマニュアルを制作しても、スタッフが守ってくれなくては意味がありません。
きちんと業務を遂行してもらうためにも、マニュアルに従うことでミスを減らせる、作業が楽になる、評価がアップするといったメリットがあることをしっかりと伝えましょう。
ミスの発生を自ら望むスタッフはいませんが、業務をするうえでミスは付きものです。スタッフのミスをできるだけ少なくするよう、業務フローやルールを作り、かつそれを明確に記載する必要があります。
作業負担を軽減できることや、評価がアップして待遇の改善につながることもメリットです。特に「評価のアップ」「待遇の改善」は、スタッフのモチベーション上昇につながります。
またマニュアルを守らなかったときに、どのようなデメリットが生じるのかを記載するのもよいでしょう。ケガにつながる、ペナルティの対象になるなどスタッフがイメージしやすい、リアリティのあるデメリットを記載しましょう。
店舗マニュアルの作成時の注意点
ここでは、店舗運営マニュアルを作成するときの注意点をいくつか紹介します。これらをきちんと踏まえておかないと、せっかくマニュアルを作成してもメリットが得られない恐れがあります。
説明が抽象的で複数の解釈の余地がある
説明が抽象的すぎると、スタッフは作業のイメージがしづらく、誤った手順で仕事を進めてしまう可能性があります。その結果、ケガやミスが発生し、全体の業務効率が低下してしまう恐れもあるのです。
また、マニュアルを読んでさまざまな解釈ができてしまうようでは、読み手によって異なる解釈をしてしまうため、現場で混乱を招いてしまいます。その結果、業務の標準化が難しくなってしまいます。
このようなことが起きないよう、具体的な内容を記載するよう仕上げなくてはなりません。誰が、いつ、どこで、何をするべきかといった具合に、丁寧かつ具体的に記載しましょう。
さらに、完成したマニュアルはいきなり配布せず、誰もがわかりやすい内容になっているかの確認が必要です。できれば、業務に熟知していない人にチェックしてもらい、必要に応じて修正も加えるとよいでしょう。
説明の構成がまとまっていない
構成がまとまっていないと、マニュアル本来の機能を果たせません。作業に入った際、手順やルールを再度確認したいとき、マニュアルを開いて知りたい情報をすぐに探せないようでは役に立たないのです。
わかりづらいものだと、マニュアルに書かれた内容を忘れやすくなり、さらには思い出しにくくもなります。時系列や目的別に構成し、必要な情報へすぐにアクセスできるように仕上げましょう。
また、説明の順番についても注意が必要です。きちんと順を追った丁寧な説明で構成されていないと、使いにくく内容を理解しにくいマニュアルになってしまいます。行き当たりばったりで作成してしまうと、こうした事態に陥りがちです。
まずは全体の構成をきちんと考えることが大切です。そのうえでひとつひとつの作業フローやルールを振り返りながら記載するよう心がけましょう。
まとめ
店舗運営マニュアルを作成すれば、研修時の負担を軽減できるだけでなく、業務の標準化も実現可能。ただ、こうしたメリットを得るには、正しく明確なマニュアル制作が求められます。スタッフがすべき行動や目的の記載はもちろん、マニュアルに従うメリットなどもきちんと盛り込んで制作するとよいでしょう。