消費構造の変化やインターネット通販の拡大、消費税の増税など、小売業界を取り巻く環境は日々厳しさを増しています。そのような状況下でも、売上や利益を得ているのはどのような企業なのか、2019年版「国内小売業の売上高・営業利益ランキング」の上位50社をご紹介します。
2019年国内小売業売上高ランキングTOP50
まず、国内上場小売業の2019年版売上高ランキング、上位50社は以下のような結果になっています。
1位 イオン8兆5182億1500万円
2位 セブン&アイ・ホールディングス6兆7912億1500万円
3位 ファーストリテイリング2兆1300億6000万円
4位 ヤマダ電機1兆6005億8300万円
5位 パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス1兆3288億7400万円
6位 三越伊勢丹ホールディングス1兆1968億300万円
7位 エイチ・ツー・オーリテイリング9268億7200万円
8位 高島屋9128億4800万円
9位 ビックカメラ8440億2900万円
10位 ツルハホールディングス7824億4700万円
上位10社は、このような顔ぶれになりました。これらの企業について、詳しくは後述します。
11位 ウエルシアホールディングス7791億4800万円
12位 イズミ7321億3600万円
13位 エディオン7186億3800万円
14位 ローソン7006億4700万円
15位 ライフコーポレーション6986億9300万円
16位 ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス6943億2300万円
17位 ケーズホールディングス6891億2500万円
18位 ファミリーマート6171億7400万円
19位 コスモス薬品6111億3700万円
20位 ニトリホールディングス6081億3100万円
ここで目を引くのは、やはりローソン、ファミリーマート、ニトリといった有名企業でしょう。ほかにも、ドラッグストアのウエルシア、家電量販店のエディオン、ケーズ(ケーズデンキ)や、スーパーのイズミ、ライフ、ユナイテッド・スーパーマーケットといった各業界の大手が名を連ねています。ドラッグストアでは、九州中心に郊外型の大型店を展開している「コスモス薬品」もランクインしています。
21位 サンドラッグ5880億6900万円
22位 マツモトキヨシホールディングス5759億9100万円
23位 バローホールディングス5659億3000万円
24位 しまむら5469億4400万円
25位 ノジマ5130億5700万円
26位 アークス5122億4600万円
27位 スギホールディングス4884億6400万円
28位J・フロントリテイリング4598億4000万円
29位DCMホールディングス4457億5800万円
30位 平和堂4376億3600万円
J・フロントリティリングは百貨店の「大丸」と「松坂屋」、DCMはホームセンターのカーマ、ダイキ、ホーマックを展開している、業界大手の企業です。ドラッグストアでは、お馴染みのマツモトキヨシのほかにも、首都圏を中心に全国に店舗を広げるサンドラッグ、調剤併設店舗を特徴とするスギホールディングスが入っています。スーパーでは、東海・北陸を地盤とする中堅どころのバロー、北海道最大手のアークス、滋賀県が地盤の平和堂が、またファッションのしまむら、家電のノジマといった専門店もランクインしています。
31位 ヤオコー4350億8400万円
32位 良品計画4096億9700万円
33位 上新電機4038億3200万円
34位 ココカラファイン4005億5900万円
35位 アスクル3874億7000万円
36位 コメリ3468億6200万円
37位 コーナン商事3334億9600万円
38位 フジ3123億8800万円
39位 ゲオホールディングス2925億6000万円
40位 クリエイトSDホールディングス2862億9900万円
ここには無印良品の良品計画、関西が地盤の上新電機、法人向け通販のアスクル、レンタルや中古販売のゲオといった、業界大手の有名企業が入っています。ヤオコーとフジは、それぞれ埼玉と愛媛を地盤とするスーパーで、コメリとコーナン商事は大手のホームセンターです。コメリは小型店、コーナン商事は大型店を中心に展開しています。ドラッグストアも、店舗数業界3位のココカラファイン、東京・神奈川を中心に大型店を展開しているクリエイトSDが入っています。
41位 近鉄百貨店2827億円
42位 アインホールディングス2755億9600万円
43位 マックスバリュ西日本2749億3700万円
44位 エービーシー・マート2667億300万円
45位 オークワ2651億1500万円
46位 カワチ薬品2649億2600万円
47位 いなげや2516億5500万円
48位 丸井グループ2514億1500万円
49位 クスリのアオキホールディングス2508億8500万円
50位 青山商事2503億円
アインは全国に店舗を持つ調剤薬局の最大手です。ドラッグストアでは、東日本で主に郊外の大型店を展開しているカワチ薬品、北陸3県では最大手のクスリのアオキがランクインしています。またマックスバリュ西日本、オークワ、いなげやは、それぞれ兵庫・和歌山・東京を地盤とするスーパーで、近鉄、エービーシー・マート(ABCマート)、丸井といった大手の百貨店・専門店もここに入っています。「洋服の青山」でお馴染みの青山商事も名を連ねています。
一方、上場小売企業の営業利益のランキングは以下のようになっています。
1位 セブン&アイ・ホールディングス4115億9600万円
2位 ファーストリテイリング2362億1200万円
3位 イオン2122億5600万円
4位 ニトリホールディングス1007億7900万円
5位 パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス631億1000万円
6位 ローソン607億8100万円
7位 良品計画447億4300万円
8位 エービーシー・マート439億2900万円
9位 ツルハホールディングス418億2600万円
10位 丸井グループ411億8400万円
11位J・フロントリテイリング408億9100万円
12位 マツモトキヨシホールディングス360億2800万円
13位 イズミ352億7300万円
14位 サンドラッグ352億3300万円
15位 ケーズホールディングス327億2200万円
16位 三越伊勢丹ホールディングス292億2900万円
17位 ウエルシアホールディングス290億4500万円
18位 ヤマダ電機278億6400万円
19位 ビックカメラ270億5500万円
20位 高島屋266億6100万円
21位 スギホールディングス258億1700万円
22位ZOZO 256億5400万円
23位 しまむら254億5100万円
24位 コスモス薬品247億7500万円
25位DCMホールディングス210億1300万円
26位 エイチ・ツー・オーリテイリング204億2200万円
27位 コーナン商事198億9100万円
28位 ノジマ192億1200万円
29位 コメリ181億2300万円
30位 ヤオコー179億円
31位 エディオン178億4200万円
32位 アインホールディングス160億6700万円
33位 ゲオホールディングス156億6800万円
34位 アークス148億2100万円
35位 青山商事146億2900万円
36位 クリエイトSDホールディングス142億4100万円
37位 バローホールディングス142億1000万円
38位 クスリのアオキホールディングス141億4700万円
39位 サンエー140億9400万円
40位MonotaRO 137億9000万円
41位 平和堂135億5000万円
42位AOKIホールディングス133億8200万円
43位 ココカラファイン129億1500万円
44位 ライフコーポレーション122億8500万円
45位 ベルーナ120億500万円
46位 ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス118億1100万円
47位 ユナイテッドアローズ110億6300万円
48位 上新電機109億8700万円
49位 アークランドサカモト99億400万円
50位 ベルク98億1800万円
ここでは、売上高では30位台の良品計画、40位台のエービーシー・マート、丸井グループが大きく順位を上げて、トップ10に入っています。また、売上高では50位以下だった企業も数社ランクインしています。
22位のZOZOはファッション通販サイトの「ZOZOTOWN」を運営する企業で、2019年9月にはZホールディングス株式会社(旧ヤフー株式会社)と資本業務提携を結んでいます。39位のサンエーはスーパー、レストラン、ドラッグストアなど多様な店舗を展開している、沖縄県の流通業界の最大手です。40位のMonotaROは、工具・部品などの通販サイトを運営する企業です。
42位のAOKIは東日本を中心に店舗展開している紳士服専門店の大手、45位のベルーナは衣料品をメインとするカタログ通販の大手で、主にミドルエイジの女性から支持を受けています。47位のユナイテッドアローズは独自のセンスでファッション・雑貨などの商品を販売しているセレクトショップの大手で、49位のアークランドサカモトはホームセンターの「ムサシ」や飲食店の「かつや」を展開している企業です。50位のベルクは埼玉・群馬を中心とした関東圏で地域密着型のスーパーを展開しています。
ところで、先述したようにこのランキングには株式の非上場企業は含まれていません。ラング外となっている企業には、有名家電量販店のヨドバシカメラや、広島に本社を置く100円ショップの大創産業(ダイソー)、全国各地に多様な業種の店舗を展開するベイシアなどがあります。
2019年版のランキングは以上のような結果になりました。ここからは、売上高の上位10社について、詳しく解説していきます。
1位 イオン
まず、1位のイオンは、言わずと知れた、国内小売業の最大手です。総合スーパーの「イオン」を中心に国内外で多様な事業を展開し、売上高は7期連続で日本の小売業トップとなっています。また、世界のランキングでも13位にランクインしています。売上高、営業利益ともに前年より増加し、過去最高を更新しました。ただ、消費者の年収が増加せず、スーパー業界全体では、既存店の売上高は減少しています。イオンも、中心となるスーパー部門の売上はやや減少しました。
2位 セブン&アイ・ホールディングス
こちらも、「セブン‐イレブン」「イトーヨーカ堂」「そごう・西武」「ロフト」「赤ちゃん本舗」など、多様な業態の店舗を全国に展開する総合小売りの大手企業です。売上高・営業利益ともに前年より大きく増加しており、営業利益ではイオンを上回って1位となりました。ただ、コンビニエンスストアやスーパー部門では売上高が増加したものの、百貨店部門では売上高・営業利益ともに減少しています。また専門店部門も、売上高は約15%減となりました。
3位 ファーストリテイリング
ファーストリテイリングは、「ユニクロ」を筆頭に「ジーユー」「セオリー」などのブランドを世界中で展開するファッション業界の大手企業です。今回のランキングの数字は2018年8月期のものであり、最新の2019年8月期では、売上高が2兆2905億4800万円、営業利益は2576億3600万円となりました。ユニクロの営業利益が大幅減となったものの、海外のユニクロやジーユーの大幅な増益により、売上高・営業利益ともに過去最高の業績を達成しています。
4位 ヤマダ電機
こちらも言わずと知れた、家電量販店の最大手です。家電量販店では唯一、47都道府県全てに店舗を構えています。売上高に関しては、2001年から業界トップの座を守り続けており、2010年には2兆円も突破しましたが、近年は減少傾向にあります。ただ、2018年期以降は再び増加に転じています。家電量販店全体でも、生活家電などが好調だったため、売上高は増加しています。一方で営業利益は、2018年期から2年続けて大きく減少しています。
5位 パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス
パンパシHDは、ディスカウントストア「ドン・キホーテ」やスーパーの「長崎屋」を展開しています。2019年2月に現在の社名に変更になったのは記憶に新しいところです。2019年1月には、スーパーの「ユニー」も傘下に加わり、店舗数も大きく増加しました。売上高・営業利益ともに、それぞれ前年度より41.1%、22.4%と大幅に増加しており、創業以来30期連続で売上増収・営業増益を達成しています。
6位 三越伊勢丹ホールディングス
三越伊勢丹HDは、「三越」「伊勢丹」に加えて、北海道の「丸井今井」や九州・福岡の「岩田屋」も傘下に持つ百貨店業界の最大手です。国内のみならず、海外にも多くの店舗を展開しています。百貨店業界が低迷傾向にある中、三越伊勢丹も不採算店舗の閉鎖や不採算事業の整理を進めてきました。売上高は、前の年より5%ほど減少しましたが、営業利益は前年比19.7%と大幅に増加しています。7位 エイチ・ツー・オーリテイリング
こちらも、「阪急、阪神」の両百貨店を中心に、スーパーや専門店、ホテルや飲食店など多くの事業を展開している小売業の大手で、「阪急」と「阪神」の両鉄道会社、映画会社の「東宝」と「阪急阪神東宝グループ」を形成しています。業界全体では減益となる中、百貨店部門は増益となりました。2019年期の売上高は前の年より0.5%増加しましたが、営業利益は10.3%の大幅減となりました。スーパーの売上の低迷や阪神梅田本店の建て替えの費用負担などが、主な理由とされています。
8位 高島屋
高島屋は、長い歴史を持つ老舗百貨店としてお馴染みです。首都圏と関西圏を中心に、国内外に多くの店舗を展開しています。売上高は前の年と比べて0.6%増加していますが、これは、日本を訪れる外国人観光客による「インバウンド売上」によるところが大きいようです。一方で、営業利益は新・都市型ショッピングセンターの「日本橋高島屋S.C.」など将来へ向けた先行投資を行った影響などにより、前年比24.5%と大きく減少しました。
9位 ビックカメラ
ビックカメラは広くその名を知られる大手家電量販店です。首都圏を中心に直営店41店を展開するほか、同じ家電量販店の「コジマ」や大手パソコンショップの「ソフマップ」も傘下に置いています。こちらもランキングの数字は2018年8月期のもので、最新の2019年8月期では、売上高が前年比5.9%増の8940億2100万円、営業利益は15.2%減の229億4300万円となりました。営業利益の減少は、物流部門の改革やインターネット通販の強化に取り組んだ影響とされています。
10位 ツルハホールディングス
ツルハは北海道に本社を置く、大手ドラッグストアです。本家の「ツルハドラッグ」に加えて、多くのドラッグストアを傘下に持ち、全国34都道府県に2,000を超える店舗を展開しています。ドラッグストア業界全体では店舗数・売上高ともに増加していますが、ツルハも好調で、売上高は前の年と比べて16.2%、営業利益も4.0%と大きく増加しています。食品売場を中心に既存店舗の改装を推進し、プライベートブランド商品の強化にも取り組んできた成果と思われます。
まとめ
苦境にあると言われる小売業ですが、スーパーや百貨店が苦戦を続ける一方で、コンビニエンスストア・家電量販店・ドラッグストアなどは売上を伸ばしています。各社とも、さまざまな工夫や経営努力を重ね、この難局に挑んでいます。