センサー技術などの発達により、さまざまな場所でIoTの利用が進んでいます。業務効率化のため、オフィスにIoTを導入する企業も増えているようです。一方で、IoTの仕組みやメリットを適切に理解している人が少ないのも現状だと言えます。そこで当記事では、IoTのメリットや、導入するうえで準備すべきことを解説します。
そもそもIoTとは
IoT とは「Internet of Things(モノのインターネット)」の略称です。スマートフォンやパソコンに加えて、従来インターネットに接続されていなかった家電製品や電子機器、住宅などの「モノ」を、ネットワークに接続する仕組みのことをいいます。これらのモノとインターネットがつながることにより、さまざまな情報が集まり、遠隔操作も可能になり、生活の利便性が高まります。またIoT の活用によって、今までにないサービスを生み出すことも可能です。
IoT導入が進んだきっかけ
では、なぜ急速にIoTが普及してきているのでしょうか?その背景には、電子機器の普及と、それに伴うコスト低減があります。近年ではIT技術が進歩し、センサーやスマートフォンといった電子機器が当たり前に使われるようになりました。さらに、通信インフラも整備され、5Gも使われるようになってきています。また、技術の向上により電子機器が低価格化しています。これらの条件が整うことにより、IoTの導入がしやすくなっているのです。
加えて、少子高齢化による働き手不足も原因として挙げられます。働き手が不足した企業で求められるのは、業務の効率化です。そこで、監視をはじめとした業務をIoTに任せることにより、業務の自動化ができます。すると、ほかの業務に人手を回せるようになるため、業務を効率的に進められます。
IoTはどのような場で活用されているのか
では、どんな企業でIoT導入が進んでいるのでしょうか?IT専門調査会社の「IDC Japan 株式会社」の調査によると、2019年では、製造業・官公庁・公共/公益・小売・運輸などの業界で、IoTに対する支出額が大きいことがわかりました。
特に製造業では、より効率的に業務を進めるために、国策としてIoTの活用を推進しています。公共面については、交通システムなどでIoTが取り入れられており、例えば、現在の運行状況からバスの発着時刻を掲示するスマートバス停などが挙げられます。今後は、農業や病院でもIoTが取り入れられる見込みです。
さらに、個人消費者においてもIoTに対する支出の増加が見込まれます。近年よく耳にするようになった「スマートホーム」など、より生活の利便性を高めるための手段として、IoTが活用されるようになるでしょう。
オフィスにIoTを導入することで何ができるのか
近年、さまざまな領域で取り入れられているIoT。では、オフィスに導入することにより、具体的に何ができるようになるのでしょうか?
RPAと組み合わせて作業の自動化
IoTは、業務の自動化に大きく貢献します。例えば、複合機の遠隔メンテナンスです。プリンターなどの機械をIoTで監視し、機械が正常に動いているかをチェックします。万一、動作に異常が見られた場合は、IoTがすぐにその兆候をキャッチして知らせてくれるため、問題が大きくなる前に対処できます。月に1回の担当者によるメンテナンスより、毎日監視してくれるIoTの遠隔メンテナンスのほうが、問題の早期発見につながるでしょう。
また、IoT自体はあらゆるモノと接続して、情報を集めることを得意としています。そこで、より高度な自動化を実現したいなら、IoTとRPAを組み合わせるのがおすすめです。「RPA」は「Robotic Process Automation」の略で、定型業務をロボットによって自動化することを得意としています。まずはIoTで情報を集め、それをもとにAIに分析をさせ、RPAで自動化すれば、業務のさまざまな工程を自動化できるでしょう。
快適な職場空間の実現
IoTのデータ集計や自動機能を使えば、簡単に快適な職場空間を作れます。例えば、センサーで社内外の温度を計測し、自動で最適な温度に調整してくれるものです。これがあれば、いちいち温度を調節する必要がありません。さらに、社員がそれぞれ好きな温度に調整したデータをもとに、社内全体で最適な温度を導いてくれるIoTもあります。
ほかにも、社員がオフィスにいないとき、自動的に電気やエアコンをオフにする機能もあります。こうした機能は節電対策にも役立つでしょう。
業務改善
IoTを導入することにより、主に事務作業をはじめとした業務改善に効果が期待できます。例えば、IoTがあればワークフローに沿って承認業務を進めることが可能です。承認業務に不備があると、何度も差戻しをしなければならず、労力がかかります。そこで、この業務をIoTに任せることにより、業務の効率化が見込めます。また、社内全体の勤務態度を数値化して、業務の見直しや勤怠管理を行うことも可能です。業務を監視できることから、テレワークの導入にも役立ちます。
オフィスにIoTを導入するための準備
いざ、オフィスにIoTを導入しようと思っても、急に取り入れることは難しいものです。ここでは、スムーズにIoTを導入するため、事前に準備しておくべきことを確認しましょう。
ネットワーク環境の整備
IoTは、インターネットを通じてさまざまなモノからデータを集めたり、遠隔操作をしたりします。そのため、導入するにはまず、インターネット環境が必要です。ネットワークはなるべく強固なものを構築しましょう。ネットワークが不安定だと、せっかく用意したIoTが使いこなせなくなり、費用対効果は半減してしまいます。
ちなみに費用や消費電力は、インターネットのつなぎ方によっても異なります。IoTをネットワークにつなぐには2つの方法があります。1つは、デバイスを直接インターネットにつなげる「直接通信方式」です。この方法では、広い範囲のIoTとつなげられるのがポイントです。ただし、費用と消費電力が比較的多めにかかります。
もう1つは、一旦BluetoothやZigBeeなどで接続し、その後インターネットにつなげる「デバイスゲートウェイ方式」です。こちらは一旦Bluetoothなどと接続するため、インターネット自体の強弱をそこまで心配する必要はないでしょう。導入費用が安く済む点もポイントです。ただし、パソコンなどIoTをつなぐ先のものがBluetooth接続できるかどうか、事前に確認しておかなければなりません。
セキュリティの整備
IoTはネットワークを通して、企業の大切な情報をやり取りします。そのため、セキュリティ対策も万全にしておきましょう。セキュリティ対策の例としては、以下のようなものがあります。
認証IDとパスワードの設定
ユーザー認証で利用状況をチェックできる機器の場合、認証IDとパスワードを設定しておくことが大切です。「0000」など初期設定のままにしていたり、類推されやすいパスワードにしていると、第三者が不正アクセスし社内の情報を抜き取られたり、ウイルスに感染させられたりする可能性があります。
こまめなアップデートの実施
IoT機器でも、パソコンやスマートフォンと同様、こまめなアップデートが大切です。アップデートをしないままでいると、ウイルスの侵入を許してしまうこともあります。
セキュリティシステムの導入
ファイアウォールをはじめとしたセキュリティシステムを導入し、インターネット経由でのウイルス侵入を防ぎましょう。
セキュリティ対策に困ったら、IoT機器を取り扱う会社やセキュリティ対策を行う会社に相談してみることをおすすめします。
まとめ
IoTは、さまざまなモノをインターネットでつなぐ仕組みのことをいいます。オフィスにIoTを導入することで、さまざまな業務の効率化ができるでしょう。少子高齢化が進む今、IoTの普及はさらに加速していくことが予想されます。まだ導入していないなら、ぜひこの機会に導入を検討されてはいかがでしょうか。