新規事業を立ち上げたいと考えているものの、どのような手順で取り組めばよいのかわからないと悩む企業経営者は少なくありません。スムーズに新規事業を立ち上げたいのなら、必要なプロセスを把握することが大切です。本記事では、新規事業立ち上げに必要なプロセスや役立つフレームワークを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
新規事業の立ち上げに必要なプロセス
行き当たりばったりで新規事業を立ち上げようとすると、かえって取り組みを停滞させてしまうおそれがあります。新規事業のスムーズな立ち上げに必要なプロセスを理解し、それに沿って進めていきましょう。
1: 解決したい課題を見つける
新規事業の創出にあたり、とりあえず全員でアイデアを出しあうといったケースは少なくありません。ただ、これでは自分たちのやりたいこと、実現したいことを優先してしまうため、顧客が求める価値とのあいだにギャップが生じてしまいます。
基本は、自社の顧客がどのような課題を抱えているのか、どうすればその課題を解決できるのかを考えることです。顧客の行動履歴やアンケート調査の結果などから、抱える課題と解決策を見つけましょう。
すでに顕在化している需要から、新ビジネスのアイデアを得られるケースもあります。たとえば、本来の用途と異なる使い方をされることが多いアプリなら、違った需要が発生しており、そこから新ビジネスのヒントを得られます。
2: 市場性・事業性・競争力を見極める
素晴らしいビジネスのアイデアがひらめいたとしても、市場が飽和状態となれば成功は難しいでしょう。強力な競合が大勢いたり、商品やサービスが広がり価格競争が始まっていたりする市場に参入しても、十分な利益を得るのは困難です。
そのため、新規事業を立ち上げる前には、参入しようとしている市場の調査と評価を必ず行いましょう。たしかな需要があるのか、将来性はどうか、競合の様子はどうかといった部分をチェックしましょう。
市場規模が大きければ、競合が多くても勝てる可能性は十分あります。ただ、競合と競争して勝つには相手のことをしっかりと分析し、弱点を見極めなくてはなりません。競合と同じことをしていても大きな利益を狙えないため、競合が満たせていない顧客ニーズに着目して、新ビジネスのヒントを得ましょう。
3: 製品・サービスを開発できる環境を整える
魅力的なビジネスのアイデアを創出できても、現実的に製品やサービスを開発できる環境が整わなければ絵に描いた餅となってしまいます。まずは、開発環境を整えるために予算計画を立てましょう。
製品やサービスの開発にどのような設備が必要なのか、人的資源をどの程度投入するのかを考えます。必要なリソースをピックアップし、そのうえで予算計画を立てていきましょう。
企業によっては、自社に保有する資金だけでまかなえないケースもあるでしょう。このような場合には、金融機関からの資金調達も考える必要があります。資金調達をするのなら、どの程度の期間で返済できるか、黒字化のタイミングは、といった部分も考えなくてはなりません。
指揮系統をきちんと定めておくことも重要です。必要以上にチームへ権限を与えてしまうと、上層部が把握できていないうちに暴走される可能性もあります。与える権限の範囲や、上層部が決裁を行うタイミングなども決めておくとよいでしょう。
4: 行動計画を立てる
具体的な行動計画を立案するプロセスです。無理な計画を立ててしまうと、とん挫するリスクが高まるため、現実的な行動計画を立案しましょう。また、当初の計画がすべてスムーズに進むとは限りません。問題が発生する可能性を踏まえ、トラブルに直面したときはその都度計画の見直しを行いましょう。
また、計画から実行へ移すまでに時間をかけすぎるのもNGです。計画をじっくり練るのはよいことですが、いたずらに時間を要してしまうと、市場へ参入するベストなタイミングを逃すおそれがあります。慎重になりつつも、可能な限りスピーディーに計画を形にしていきましょう。
計画を実行に移したあとも、定期的な見直しや改善が必要です。抽出した課題を分析し、ビジネスのクオリティを高めていきましょう。実際にチームで新製品やサービスを試してみる、顧客から直接意見をヒアリングするということも、クオリティ向上に役立ちます。
新規事業立ち上げに役立つフレームワーク
複数のチームメンバーで新規事業の計画を立てていても、なかなかよいアイデアが出ず一向に進まないことがあります。そこでおすすめしたいのが、フレームワークの活用です。以下、新規事業の立ち上げに役立つフレームワークをピックアップしました。
MVV
MVVは、Mission、Vision、Valueの略です。ミッション(存在意義)とビジョン(ありたい姿)、バリュー(行動指針)の3つを定めることで、組織全体の方向性を明確にできるフレームワークです。
3つの要素が決まれば、やるべきことが明らかになるため、チーム全員で同じ方向に進めます。また、何かしらの課題に直面したときも、MVVに基づいて考えることで、スピード感のある意思決定を行えます。
また、MVVを反映させた商品やサービスには、魅力的なストーリーが生まれやすいのもメリットです。顧客にとってより価値の高い製品、サービスとなり、競合との差別化にもつながります。
3C分析
3C分析は、Customer(市場・顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)の3Cを分析するフレームワークです。ビジネスを成功させるうえで、市場や顧客、自社、競合の分析は欠かせません。3C分析を行えば、市場規模や顧客ニーズを把握したうえで、競合の脅威や弱み、自社の勝機などを導き出せます。
3Cの分析により、自社がどのように進めばその市場、競合に勝てるのかを見極められます。自社と競合双方の強み、弱みも把握できるため、より効果的なマーケティングの展開が可能です。
また、3C分析では、政治や社会、経済などの要素と、業界における勢力関係や売り手・買い手双方の交渉力など、マクロとミクロな2つの視点で行います。
ABC分析
データをABCの3つにわけて分析を行う手法です。対象となるデータは、売上やコスト、在庫などが該当し、比重がもっとも大きいものをA、その次にB、さらにCとランク分けします。
たとえば、製品の売上がもっとも多いグループ、そこそこ多いグループ、少ないグループといった具合に分類します。これにより、顧客が何を求めているのか、何が足りないのかといったことがわかり、重点的に取り組むべきことを把握できます。
新規事業を立ち上げても、すぐにとん挫しては意味がありません。事業を立ち上げたあとは、軌道にのせるための努力が必要です。事業をスムーズに軌道へのせるため、ABC分析を活用しましょう。
ポジショニングマップ
ポジショニングマップは、縦軸と横軸からなる座標に自社や競合の商品を配置し、分析を行うフレームワークです。市場における自社製品のポジショニングを客観的に把握でき、そこから今後自社がどのような取り組みをすべきかを導き出せます。
ポジショニングマップの活用により、他社との差別化を実現できるのがメリットです。マップ上の情報から、他社の商品・サービスと被らない領域を見つけることができ、差別化のアイデアを導き出せます。
ポジショニングマップの軸には、顧客が購入を決定する要因を配置するのもポイントです。たとえば、ビールであれば縦軸に「爽快感-苦味」横軸に「キレ-コク」といった具合です。なお、商品やサービスのターゲット層によって購入決定の要因を変えることも忘れないでください。
まとめ
新規事業立ち上げにあたっては、まず顧客が解決したい課題を発見し、市場性や事業性、競争力を見極めたうえで商品、サービスの開発環境を整えましょう。行動計画を立案したあとは、できるだけスピーディーに行動へ移し、必要に応じて見直しと改善を行うことも大切です。紹介したフレームワークも活用し、新規事業立ち上げを成功させましょう。