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Microsoft Azureの導入による新たな動画配信の体験

人口13億人超の大国インドは、動画の視聴数で米国に次ぐ世界2位の規模に成長しており、国内の動画配信市場の動向が世界的に大きな注目を浴びています。インドの動画配信会社「エロス・ナウ」は「Microsoft Azure」を使った動画配信システムを構築し、インド国内のシェアと世界市場での躍進を狙っています。

Microsoft Azureの導入による新たな動画配信の体験

インドの動画配信会社Eros Now

「エロス・ナウ(Eros Now)」はインドの動画配信会社で、インドを代表する映画会社「エロス・インターナショナル社(Eros International Plc.)」の子会社です。エロス・インターナショナル社は家庭用ビデオ規格「VHS方式」の録画機が米国で発売された1977年に設立され、VHS方式の映画ビデオの発売で利益を上げました。当時の家庭用ビデオ規格では先行して発売されていたベータマックス(ベータ)方式を評価する声も多く、VHS方式の普及に懐疑的な見方も少なくありませんでしたが、エロス・インターナショナル社はVHS方式を選択して、インドで最初のVHS映画配給会社となったのです。この挑戦が同社の成功につながり、2013年11月にはインドのメディア企業として初めてニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場を果たしました。

エロス・ナウは同社のオンデマンド配信部門として2012年に発足し、現在は世界中に1億5500万人超のユーザーと1880万人超の有料会員を抱え、1万2000本以上のボリウッド映画やミュージックビデオのほか、各種のオリジナルコンテンツを配信しています。VHSを選び取ったエロス・インターナショナル社のパイオニア精神はエロス・ナウにも引き継がれているのです。

Eros NowとMicrosoftの協力による動画ストリーミングサービスの革新

エロス・ナウはマイクロソフトと提携し「Microsoft Azure」と「Azure Media Service」を使って動画配信プラットフォームを構築することを2019年9月に発表しました。

エロス・ナウの若きCEO、リシカ・ルーラ・シン氏は、マイクロソフトを開発パートナーに選んだ理由について「先見性や技術力、データ解析のノウハウに優れており、Azureのプラットフォームが、我々が求めるものにフィットしていた」と語っています。

また、今回の提携でマイクロソフトもインド資本の「ALTBalaji」やディズニー傘下の「Hotstar」のシェアが先行していたインドの動画配信市場に初の進出を果たしました。

ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の調査では、インドの動画配信サービスの市場は急速に成長しており、2023年までに50億ドル(約5300億円、1ドル=106円で換算)に達するとみられており、マイクロソフト・インド法人のアナント・マヘシュワリ社長は「エロス・ナウと共同で新たな動画視聴体験を発信して世界中の顧客に提供したい」と意欲的に語っています。このような傾向は全世界的なものであり動画制作および配信を手掛けるヒューマンセントリックス株式会社の代表取締役である中村氏曰く日本の市場も急拡大しているといいます。

オンラインビデオプラットフォーム

エロス・ナウはMicrosoft Azureの動画配信プラットフォーム「Azure Media Services」を使った大規模な配信システムを開発しました。Azure Media Servicesには動画の最適化を行って配信したり、自動であらゆるキーワードを付加したりして検索性を高める機能があります。またコンテンツを暗号化して保護する機能もありセキュリティの堅牢さは世界トップレベルを誇ります。

エロス・ナウのサービスには、多言語国家であるインドの実情に合わせ、地域の言語で音声検索ができる機能が加わっています。こうした高速な音声データ検索を提供するためには信頼性の高いネットワーク回線が必要ですが、Azureの「Azure Content Delivery Network(CDN)」なら、動画配信にふさわしい堅牢なネットワーク回線を確保することが可能になります。

マヘシュワリ社長は「AIと高機能なクラウドツールが次世代メディアの原動力になると考えている」とし、マイクロソフトの技術が支える多言語展開に大きな期待を寄せています。

インタラクティブな音声サービス

エロス・ナウのオンライン動画視聴サービスでは国の公用語ヒンディー語のほか、マラーティー語、カンナダ語など合計10種類の言語による音声検索機能があります。従来のテキスト検索に加えて音声による検索を可能にしたのはAzureのAIツールと、Azure CDNが確保する高品質なインターネット回線です。

エロス・ナウはすでに135か国以上で視聴者を獲得していますが、さらなる挑戦として2019年からの3年間で有料会員5000万人を達成することを数値目標としています。

「ユーザーの立場になってユーザーが楽しめる作品を作り続けることが一番重要だと考えています。そうすれば結果もついてくるでしょう」とルーラCEOは語っています。

レコメンデーションエンジン

ニュースや音楽の配信、動画配信などオンラインサービスの大きな特徴の一つに「レコメンデーションシステム」があります。これは、対象のユーザーにとって価値があると思われるコンテンツを個別のユーザーに合わせて提示する仕組みで、限られた貴重な時間で最大限に楽しむことができる素晴らしいコンテンツを提供するのが狙いです。

Azureを使ったエロス・ナウの配信システムでは、クラウドを利用した巨大データベースに蓄積したユーザーのデータをAzure AIを駆使して分析し、ユーザーの視聴意欲をかき立てるようなレコメンデーションエンジンを実現しています。

「あらゆるコンテンツはAIやクラウドツールを介して互いにつながることで新たな価値を生み出しているというわけです」とマヘシュワリ社長。強力なレコメンデーションシステムが生み出す新たな価値は、次世代のメディア事業を動かす原動力になると考えられているのです。

Eros Nowの目指す姿

ルーラCEOはマイクロソフトとの共同事業で最も印象的だったことに、同社に根付く「コラボレーティブ・カルチャー」を挙げています。

「マイクロソフトは共同事業を行うときに、相手の会社も本質的な部分で目標を達成してベストな状態になってもらうために行動しているのだと実感しました。マイクロソフトとの協力関係はこの上なく素晴らしいものになりました」とルーラCEOは言います。

また、エロス・ナウが目指す姿について「典型的なコンテンツ作りにこだわらず、自由でオリジナルなコンテンツを制作して、他の動画ストリーミング会社とは一線を引いた存在でありたい、他には代わりがいないような作り手でありたい」と語っています。

Azureクラウドにより地域にコンテンツを最適化させた効果

ルーラCEOの言葉通り、エロス・ナウは2015年ごろからオリジナルコンテンツの制作に取りかかり始めました。ボリウッド映画の影響を受けた2018年のコメディシリーズ「Side Hero」や麻薬組織を扱ったドラマ「Smoke」などが注目を浴びました。またグルメや健康、旅行などをテーマにした10分程度のミニ番組「Eros Now Quickie」シリーズを開始し、幅を広げています。

「ボリウッド映画は中国、ロシア、東欧などでも人気が高まり始めています。ミレニアル世代以降の若い視聴者を対象にしたコンテンツに力を入れていきたい」とルーラCEOは今後の展開に大きな意欲を見せています。

すでに135か国以上で視聴者を獲得しているエロス・ナウですが、今後の3年間で有料会員数5000万人達成を目標として掲げています。

将来的にはAzureクラウドサービスを活用して、世界のあらゆる地域や言語をカバーする字幕オプションなどを実現し、あらゆる顧客に最適化したコンテンツを提供して世界的な配信サービスに成長することも目指しています。

まとめ

インドの動画配信会社エロス・ナウはマイクロソフトとの提携でMicrosoft Azureを使った動画配信システムを構築し、多言語国家のインドの実情に合わせた10言語字幕オプションなど快適な視聴環境を実現しています。向こう3年間の目標として有料会員数5000万人達成を挙げており、今後の動向が注目されます。

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