製造業

製造企業におけるIoTの進め方〜失敗せずに導入するには?

IoT製品は、ネットワークとローカル製品をつなぐ新しい技術です。大企業では盛んに導入が進んでおり、一般家庭にまで普及し始めています。しかし中小企業においては、導入に踏み切れない企業や導入に失敗している事例が散見されるのです。そこで本記事では、IoT導入におけるよくある失敗例や、失敗しないための導入方法について解説します。

企業(製造業)におけるIoTの進め方〜失敗せずに導入するには?

Factory of the Future

IoTの導入で狙うべき効果

IoT製品は多岐に渡るため、導入している業種もさまざまでしょう。ここではまず、IoTを活用する目的や得られる効果について解説します。さしあたって、企業がIoT製品に期待したい導入効果や目的としては、主に以下が挙げられます。

  • 自動化
  • 省力化
  • 効率化
  • データ計測
  • インシデント・ミス防止
  • エラー検知
  • エラー時のオンタイム対応
  • 品質の向上
  • 生産性の向上

IoT製品の導入は、人間ではできない部分をデジタルシステムに任せるということが主な目的です。中でも自動化・省力化・効率化・データ計測・エラー検知・オンタイム対応は、IoTの本分とも言えるでしょう。これは例えば、自動計算や設備の省力化、管理・生産の効率化、企業データにおける活動予測、エラーの自動検知などが挙げられます。

この部分では複雑な要素が絡まず、課題となっている部分に直接IoTを導入することで、期待効果を上げることも可能です。また、導入の仕方によっては、ミス防止商品の品質向上、生産性向上なども期待できます。

しかし、これらの効果は、従業員や現行システムとの兼ね合いが発生するため、適切な導入をしなければ効果が得られない可能性もあるのです。言い換えれば、期待できる効果の予測を立てて、適切なポイントへ導入することが、成功させる秘訣です。

IoT導入が進まない失敗事例

「IoTをどのように導入すればよいのかわからない」「IoTの活用方法がわからない」という企業担当者は少なくありません。また、そのほかさまざまな問題から導入に踏み切れないということもあるでしょう。

そこでここでは、IoT導入で代表的な失敗事例を紹介します。これらを避けるように方針を立てることで、導入を成功させましょう。

IoT化システムのコスト面

IoTを導入する際、多くの企業が直面する課題として、コストによる制限があります。特に導入するIoTの規模が大きくなってしまうと、コストが大きくなりすぎて、導入のハードルが高くなってしまうでしょう。

大企業では導入・運用・保守をベンダーに任せることがありますが、その場合は数億規模の費用がかかってしまうことも珍しくありません。しかし中小企業の場合、このような大金を負担することは非現実的です。なるべくならコストを抑えて、効果的に活用したいというのが本音でしょう。

ただ、コストを抑えてIoTを導入したところで、小規模になりすぎて満足いく効果が得られないことがあります。場合によっては導入コストだけかかってしまい、運用すらできないこともあるのです。こうなっては、もはや導入した意味がないだけでなく、コストと時間をいたずらに費やすだけで終わってしまいます。

このような問題を防ぐには、自社の規模に適合したIoT導入と、その運用を見越したシステム構築が必須です。また、毎年少しずつシステムを導入して、徐々に規模を大きくするといった方法もあります。

既存システムとの連携が困難

IoTの導入では、全く新しいシステムを導入するというより、既存システムと連携していくことのほうが多いでしょう。特に、徐々にIoTを導入する場合は、システムとの兼ね合いが重要となってきます。

しかし、IoTを既存システムと連携すると、業務内容自体が変わることもあります。例えば「計算の自動化」や「自動エラー検知」といったシステムでも、ほとんどは最終的に作業員が関わります。そのため、作業員が導入されたシステムをうまく使いこなせなかったり、新しい環境に馴染めなかったりすれば、IoT導入のメリットは薄れてしまうのです。

こうした事態を防ぐためには、従業員の教育が重要です。「新しいシステムをどのように扱うのか」「どのように業務が変わるのか」をしっかりと教育する必要があります。そして、「IoT導入でどのような効果を得たいのか」しっかりと説明し、現場改革に取り組む必要があるのです。経営層の期待したい効果を現場がしっかりと理解して、システムを上手く使いこなせる土壌があれば、スムーズな導入が可能となります。

短期的に効果を求めてしまう

IoTを導入して、すぐに効果を出したいという企業は多いでしょう。しかし、このような考え方は失敗のもとになります。一気に効果を出したいとなれば、IoTシステムを一気に導入することになります。

そうなると、前述したコストの問題がのしかかってくるでしょう。仮にこの点をクリアしても、今度は導入した現場の改革が必要になります。短期間での効果を求めても、従業員が急な変革についていけず、失敗してしまうこともあるのです。

実際、多くの企業ではIoTを一気に導入するのではなく、少しずつ導入しています。そして、徐々にシステムの範囲を広げて、期待効果を上げています。IoTを導入しても、システムを活かした運用や作業員との兼ね合いなど検討すべき項目はいくつもあるので、この部分をクリアしなくてはいけません。高いコストをかけて失敗しないためにも、長期的な戦略でIoT導入を進めていくことがマストと言えます。

企業におけるIoT導入検討の進め方

では、実際にIoT導入を成功させるためには、どのようにして導入すればよいのでしょうか。ここでは、成功させるためのプロセスを解説していきます。

IoT導入する目的を共有

先述したように、経営層と現場との相違は失敗を生み出します。せっかく導入しても、「使いづらくて余計に時間がかかる」「前のシステムのほうがよかった」といった声が現場から聞こえては元も子もありません。

IoTを導入して現場にスムーズに馴染ませ、期待した効果を上げるためには、従業員に期待する方向性を示さなくてはいけません。そのためには、「IoTを導入することでどうしたいのか」を現場と共有する必要があるでしょう。

そして、「期待効果を上げるためにどのように利用すべきか・どのように管理していくべきか」を教育する必要があります。教育は現場に負荷がかかる作業ではありますが、IoTは業務を改善するためにあるため、しっかりと目的を理解してくれれば業務改革が大きなメリットであると伝わるでしょう。

IoTを利用するのは現場です。そのため、経営層だけが納得するのではなく、企業全体で意識を共有することが重要と言えます。

現場における課題の整理

IoTの導入を進めて、企業全体で活用していくには、現場でどのような課題を抱えているのかを知らなければいけません。そのためには、現場責任者からヒアリングしてもよいでしょう。「この部分に多くの時間がかかっている」「ここが短縮されたら楽になる」など、現場で抱えている課題を1つずつ洗い出します。

その際、感覚だけに頼った判断をしないよう注意が必要です。聞き出した課題は必ず、客観的に見られるデータや事実として扱いましょう。そして、浮き彫りになった問題点をさらに深掘りしてください。「なぜ多くの時間がかかっているのか」「なぜこの部分に労力が必要なのか」など問題点を深掘りすることで、問題がより鮮明化します。

鮮明になった問題点は、詳細な課題の抜き出しが可能です。例えば「1つの作業で多大な時間がかかっているのは、余計な作業が多くあるから」ということがわかれば、この余計な作業を省くためにどうすればよいのかが見えてくるはずです。

また、見えてきた課題には優先順位を付けましょう。順位を付けることで優先的に解決すべき課題が見え、解決する必要のない問題に手を付ける必要もなくなります。

課題解決の施策を検討

課題の見える化ができたら、課題を解決するための施策を考えていきます。施策の検討は課題によって大きく異なるため、各課題に合わせたものを考えましょう。例えば「余計な作業があるせいで、1つの業務に時間がかかっている」場合には、以下のような手順が考えられます。

  • 問題とされる業務がどの部分の業務なのかを調査
  • 改善によってどうなるのかを検討
  • 改善によってメリットがある場合に施策を検討

このように、問題改善によってメリットが見込める場合に、施策を検討するとよいでしょう。また施策を検討したら、それぞれ優先順位を付けるのも重要です。優先順位をしっかりと付けることで、どの課題を実施すべきかがわかります。その際は、「どんな基準で優先順位を設けるのか」を決めておきましょう。

IoT化をスムーズに進めるためのポイント

ここまでのプロセスを追えば、あとは課題解決に向けてIoT導入を進めるだけです。では、導入をスムーズに進めるためには、どのようにしたらよいのでしょうか。企業にとってまず気になるのは、コスト面でしょう。

課題を多く挙げても、それらを解決するためのシステム構築に多くのコストがかかり、導入できないというケースもあるでしょう。そのため、完璧なシステム構築を求めすぎないことも重要です。100%を望まずに、現状に合わせてシステム移行していきます。

このとき、先述したように小規模でシステム移行していくのもよいでしょう。すぐにすべてを変えるのではなく、小規模からスタートさせて徐々に対象範囲を広げていきます。こうすることで、コスト回収とシステムの構築を並行させることが可能です。小規模な導入は小さな成功を積み重ねることができるため、作業員のモチベーション担保にもつながります。

また導入の際には、難しい用語を多く目にすることがあります。IT業界では難しい用語を多用することがあるため、技術を利用する際にも難しく考えてしまう節があります。しかし、IoT自体はそれほど難しいものではなく、結果だけを見れば至って単純です。あまり難しく考えずにシステム構築をすることで、スムーズな課題解決につながるでしょう。

まとめ

IoTの導入にあたっては、コストや既存システムとの連携などさまざまな問題があります。また、短期で効果を出そうとして、失敗するのもよくある例の1つでしょう。

企業がIoT導入で失敗しないためには、導入前に企業全体で導入目的を考えていくことが重要です。そのうえで、小規模から導入し、徐々にシステムを広げていくことをおすすめします。

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