そのように考えている人は多いのではないでしょうか。本記事ではペーパーレス化のメリット、デメリット、実現するためのポイントや実例について解説しています。ぜひお読みいただき、社内で具体的にペーパーレス化に取り組めるようになりましょう。
ペーパーレス化とは
ペーパーレス化とは、今まで使っていた紙の書類を電子化して利用したり保存したりすることを指します。紙(ペーパー)を減らす(レス化)という意味です。業務にパソコンを用いるようになってから数十年経過していますが、まだまだ紙の書類が残っている企業も多いのではないでしょうか。「顧客情報はエクセルでまとめているけど、請求書や誓約書は紙を使っている」など、一部の書類を紙で運用している企業がほとんどでしょう。
しかし、政府もペーパーレス化を進めるべく電子帳簿保存法などの法律整備を進めています。従って、企業側にとっても他人事ではなく、近いうちに導入していかなければならない施策の1つです。将来的に罰則の対象とならないためにも、ペーパーレス化の流れに対応する必要があります。
【ペーパーレス化】5つのメリット
ペーパーレス化には以下の5つのメリットがあります。
- 書類管理機能や検索機能による業務の効率化
- コストの削減
- 書類による手続きをWeb上で完結できるようになる
- 書類紛失リスクの軽減
- SDGs貢献によるイメージアップ
メリット1. 書類管理機能や検索機能による業務の効率化
ペーパーレス化を進めることで、業務を効率化できるメリットがあります。
例えば、電子ファイル(電子化された書類)であればパソコンで条件検索することで簡単に探せます。
紙の書類の場合は、どこに保管してあるのか、また該当する内容の書類はどれなのか、など管理や検索に苦労した経験があるのではないでしょうか。探すにも、山積みの書類の中から見つけなければならず時間がかかってしまった、といった経験もあるかもしれません。また、書類が引き出しやファイルに入りきらなくなってしまうこともあるでしょう。
ペーパーレスであれば、こうした無駄な時間やスペースを使う必要がありません。必要な書類を簡単に見つけ出すことができるため、業務の効率化につながります。
メリット2.コストの削減
ペーパーレス化によってコストを削減できる点もメリットの一つです。
紙の書類の場合、多くのコストが発生するでしょう。発生するコストとして、用紙代、印刷代、人件費やプリンターの電気代、さらには保管や破棄に必要な費用があります。ペーパーレスであれば、書類を電子ファイルとして、ストレージ領域に保存するのみのため、これらのコストはかかりません。新たにクラウドを契約する場合は、クラウド保存にも費用がかかりますが、ペーパーレス化によって多くの経費が削減できるようになるでしょう。
メリット3.書類の受け渡しをWeb上で完結できるようになる
ペーパーレスによって書類の受け渡しをWeb上で完結できるようになるメリットがあります。
紙の書類の場合は、印刷をして、担当者が記入や捺印をし、次の相手に持って行く、という具合に手続きに時間を要することになります。ペーパーレス化によって書類が電子化されていれば、担当者がパソコンで必要事項を記入しメールやワークフローシステムで相手に届けることが可能です。紙の書類に比べて、印刷や書類を届ける時間がかからないため、書類が必要な手続きにかかる時間が短くなることは明白でしょう。昨今は印鑑レスも推進され、電子署名などによるサインが可能となっていることも、ペーパーレス化を後押ししています。
メリット4.書類紛失リスクの軽減
書類の紛失リスクを軽減できるメリットがあります。
紙の書類の場合は、言わずもがな、紛失や消失のリスクが考えられます。オフィスで紙の書類を机の上に置いておいたらコーヒーをこぼしてダメにしてしまった、という事態もあるかもしれません。ペーパーレス化による電子ファイルであれば、保存領域に保存されている限り、紛失、消失することがありません。物理的にハードディスクが壊れてしまう、誤ってバックアップがないデータを削除してしまう、というリスクはあります。
メリット5.SDGs貢献によるイメージアップ
ペーパーレス化はSDGs貢献によるイメージアップにつながるメリットがあります。以下ではSDGsにどのように貢献できるのか、について解説していきます。
SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」とは
最近よく耳にするSDGsには全部で17個の目標があります。
そのうちの15番「陸の豊かさも守ろう」は「森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる」という内容です。紙を作るためには木が必要で、森林伐採を行う必要があります。したがって、一企業がペーパーレスに取り組むことで紙の利用量が減少するため、森林伐採の抑制に貢献できます。
ペーパーレス化がCO2削減に
ペーパーレスはCO2削減にも貢献できます。CO2は植物が吸収し、光合成によって酸素に作り替えられますが、森林伐採で木が減るとCO2を吸収する植物が減ってしまうためです。また紙の処分のための焼却でもCO2が排出されてしまいます。
日本製紙連合会「国民一人当たりの紙・板紙消費量」によると、2020年の日本の国民1人当たりの紙・板紙消費量は178.4㎏と世界で7番目に多い水準でした。一企業がペーパーレスに取り組み紙の利用量を減少させることで、結果としてCO2排出量の削減にも貢献できます。
【ペーパーレス化】3つのデメリット
企業にとっても環境にとってもメリットの多いペーパーレス化ですが、以下3点のデメリットもあります。
- システムの導入コストが発生する
- 紙での保管が義務付けられている書類がある
- システム障害による悪影響を受ける可能性がある
デメリット1.システムの導入コストが発生する
ペーパーレス化に伴い、システム導入によるコストが発生するデメリットがあります。
ペーパーレス化による紙や印刷のコスト削減は実現可能ですが、システムの導入や構築にかかる費用は避けられません。企業にとってはシステムの導入コストは大きな支出となりますが、初期投資として割り切るべきといえるでしょう。
ペーパーレス化の推進は、今後も国家レベルで進んでいくことが予想されるため、遅かれ早かれ導入が必要になることが予想されます。削減されるコストの何年分で投資分を取り返せるのか、を算出してみるとよいでしょう。また先述した書類紛失リスクの削減やSDGs貢献によるイメージアップにもつながるため、大きなデメリットと考える必要はありません。
デメリット2.紙での保管義務のある書類があるので注意
ペーパーレス化は、紙での保管が義務付けられている書類に対応できない点がデメリットです。
国内外でペーパーレス化が推進されていますが、電子ファイルでは紙での保管義務を果たせないものもあります。例として、行政の申請書類などです。特に日本では捺印や手書き署名が求められることから、ペーパーレス化が進みにくい背景もあります。
対策としては、徐々に推進することをおすすめします。社内でのみ使用する書類や議事録など、紙での保管義務がないものからペーパーレス化していくとよいでしょう。コスト削減をしつつ、紙での保管義務が撤廃された後に対応しやすくなるためです。
例として、2021年5月には賃貸契約書の紙での保管義務が撤廃されるなど、徐々にペーパーレス化が推進されているため、紙での保管が必要な書類は少なくなることが予想されます。
また近年は、後述する電子契約サービスの普及もペーパーレスを後押ししているため、紙の書類による契約の機会は徐々に減っていくと考えてよいでしょう。
デメリット3.システム障害による悪影響を受ける可能性がある
ペーパーレス化はシステム障害による悪影響を受ける可能性がデメリットとして挙げられます。
当然のことながら、印刷した書類がシステム障害の影響を受けることはありません。一方で電子ファイルの場合は、システムの障害時に資料の確認や手続きをできない可能性があります。セキュリティ障害が発生した場合は、社外秘情報や顧客情報の漏洩の可能性も考えられるでしょう。対策として、システム障害やセキュリティの対策を強化しておく必要があります。例として以下の対策が必要です。
- システムやデータ保存領域の冗長化
- データの分散
- 通信の暗号化
- アクセス制限など不正アクセス対策
ペーパーレス実現のための4つのポイント
社内でペーパーレスを実現するためには、以下の4つのポイントを意識する必要があります。
- 会社全体で進める
- 現状の課題を明確化する
- 段階を分けて目標を設定する
- 社内ルールを整備する
1.会社全体でペーパーレス化を進める
ペーパーレス化による成果を上げるためには、会社全体でペーパーレス化を推進することが重要です。一人1人の意識は大切ですが、個人単位での実施ではペーパーレス化の効果はそれほど見込めません。
また複数人が関係する手続きの中で、紙で進める社員と電子ファイルで進める社員がいると不都合が発生することも考えられるでしょう。最初は部署単位でも、将来的には会社全体でペーパーレス化を推進していくことで、コストや稼働の削減効果も大きくなります。
2.現状の課題を明確化する
ペーパーレス化を推進していくためには、現状の課題を明確にすることが重要です。
目的が「政府が推進しているから」「他社がやっているから」など、目的を明確にしないまま始めてしまうと効果を実感しにくくなってしまいます。課題を明確にしておくことで「どれほどコストを削減できているか」「目標をどの程度達成できているか」など効果を実感しやすくなります。
またペーパーレス化推進によるデメリットも確認しておくと「費用の増加などマイナス効果ばかりになっていないか」といった観点からも効果測定が可能となります。ペーパーレスは目的ではなく、コスト削減やSDGsへの貢献など別の目的を達成するための手段となることが望ましいです。
3.段階を分けて目標を設定する
ペーパーレスを推進するうえでは、段階を分けて目標を設定することが重要です。
いきなり全ての書類を電子化することは現実的ではありません。紙での保管が義務付けられている書類や、ペーパーレス化を推進していない取引先が考えられるためです。議事録や社内文書など、電子化しやすいところから進めていきましょう。徐々にペーパーレスに移行していくことで、社員も抵抗なく受け入れやすくなります。
最終的なゴールは全ての書類をペーパーレス化することでも問題はありませんが、まずは「紙の使用量を年間20%削減する」というように、短中期的な目標を設定していくとよいでしょう。
4.社内ルールを整備する
ペーパーレス化を推進していくためには社内ルールを整備しましょう。例として以下のようなルールがあります。
- どの書類を電子化してもOKか
- 電子化する手順
- アクセス権限をどうするか
- ファイルの命名規則
また社内外での利用を見据えてセキュリティ面のルールも整備しておく必要があります。
「社内の〇〇部限定」や「社外でも関連者のみ」などアクセス権限を設定しておきましょう。セキュリティ対策で大切なこととして「必要最低限のメンバーに最低限の権限を与えること」です。「閲覧は〇〇部の人なら誰でも可能だが、編集ができるのは管理職のみ」など、必要以上にアクセス権を与えないように権限を管理してください。
企業でのペーパーレス化の取り組み具体例
ペーパーレス化を導入している企業がどのような取り組みをしているのか、具体例を紹介します。
- 社内文書の電子化
- タブレットの導入
- 電子契約の活用
- Web会議ツールの活用
社内文書の電子化
ペーパーレス化の推進にあたっては、以下の導入により同時に業務の効率化を進めることができます。
- ワークフローシステム:決済など社内の手続きを電子化することで、ペーパーレス化や進捗の可視化ができる。
- オンラインストレージ(文書共有サービス):印刷をしなくてもオンラインで文書を共有できる。同時編集やアクセス権設定も可能となる。
- 勤怠管理システム:勤怠管理をオンラインで行うことで、タイムカードや記録表が不要となる。テレワークやフレックスにも対応しやすくなる。
- オンライン請求書発行サービス:パソコンで作成した請求書を印刷せず、PDF等に変換して相手にメールできるサービス。郵送のコストなども削減できる。
上記を導入し、社内で利用を開始すれば自ずとペーパーレス化を推進することになります。利用頻度が高いものから1つずつ導入してみてはいかがでしょうか。
タブレットの導入
タブレットはペーパーレス化と親和性の高いデバイスといえます。タブレットはスマートフォンよりも画面が大きく、従来の紙の書類に近いサイズでの操作が可能です。タブレット内のストレージはもちろん、オンラインストレージを利用することで大量の書類を簡単に持ち運ぶことが容易となります。
またペンや指のタッチにも対応できるため、書類への書き足しも可能であることから、紙の書類に近い使用感で利用できるでしょう。特に出張や営業先への訪問が多い担当者には、持ち歩く書類がタブレットのみになることで、大幅に軽量化されることも嬉しいポイントです。昨今は日頃からスマートフォンを利用して慣れている社員も多いため、スマートフォンと同じように利用できることもメリットといえるでしょう。
電子契約の活用
ペーパーレス化を進めるためには電子契約の活用も便利なサービスです。
これまでは、署名やサインによる本人証明が難しいことから契約書はペーパーレス化が難しい書類とされてきました。そこで登場したのがこのサービスです。電子契約は契約書のペーパーレス化のために登場したサービスといえるでしょう。
電子契約を利用することで、オンラインで契約を結ぶことが可能になります。仕組みとしては、署名を暗号化したデジタル署名が利用され、サービスプロバイダが本人確認を証明してくれるというものです。契約書に電子契約サービスで得た電子署名を記入することで、契約を締結できます。今後、印鑑レスの動きも進むと考えられるため、電子契約サービスはペーパーレス化を社会全体で進めていくために必要なサービスといえるでしょう。
Web会議ツールの利用
Web会議ツールの利用もペーパーレス化の推進に有効です。対面で行う会議では議事録やレジュメを参加者に配布する必要がありました。資料の枚数が多い場合は、資料を揃えてホチキスで留める、など会議前の準備にかなり時間がかかることもあるでしょう。他にも印刷後に間違いが発覚し資料を作り直して差し替える、という修正も大きな負担と紙の無駄になっていました。
Web会議であれば、資料を参加者の画面に共有できるため、印刷や整理をする必要がありません。間違いが発覚しても、自身のファイルを修正するのみですむため、修正による無駄な紙の利用もないでしょう。Web会議を前提とするだけで、ペーパーレス化の推進につながります。
まとめ
ペーパーレス化の推進によるメリット、デメリットやSDGsへの貢献、ペーパーレス化の進め方について解説しました。世界各国でペーパーレスに向けた取り組みを行っているため、多くの企業で遅かれ早かれ社内でペーパーレス化推進に参画することになるでしょう。
これから導入する企業は、課題を明確化し、影響が少ないところからペーパーレス化を進めていけることが望ましいです。紹介したツールの導入で、社員が意識せずともペーパーレス化を推進することにつながります。